表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

人生を豊かにする方法

作者: ゆぴ


※俺の冒険はこれからだぜ、という終わり方をしています。苦手な方はご注意下さい。





 昔から物語が好きだった。

 それがファンタジーならなお良し。


 王道の勇者の物語もいいし、悪いやつだと思ってたのに本当は良いやつな魔王の物語も悪くない。俺みたいに平凡なやつが転生だか異世界召喚だかされて異世界で活躍する物語も面白いよな。

 現実は退屈ってわけじゃないけど、物語のようにハラハラドキドキするような展開はない。変わらない日常に、平凡な自分。友達とばか騒ぎするのは楽しいし、隣の席の女子は可愛くてちょっと青春してるかもって気がする。まぁ、俺の片思いなんだけどね。


 それがなにをどうしたらこうなったのか、俺は地球ではない世界、つまりは異世界でドラゴンになっていた。

 うん、意味が分からないよな。

 俺も最初は夢だろうと思って好き勝手に暴れたりしたんだけど、この夢は3年経っても覚めないんだ。本当は3日目くらいで夢じゃないだろうなって気がついてたんだけど、受け入れがたいっていうか、いざ自分が本当に物語の主人公みたいな立場になるとなんかちょっと違うなって。だから俺はこの3年間、現実逃避をして夢だと自分に言い聞かせて生きてきた。


 ドラゴンの姿で山を降りたら人間に攻撃され、痛くはなかったけどイラっとしたからウガァって叫んだらなんかよくわかんないブレスっていうか、ビームっぽいのが口から出ちゃったんだよね。山にポッカリ穴が開いてて本当にビビった。足元の人間たちが無事で一安心。ま、怯えた人間がさらに攻撃してきたから間違って殺してしまわないようにそのあとすぐに逃げたんだけど。

 

 逃げたのは人気のない洞窟。ドラゴンに生まれ変わった俺っていわゆるチートってやつらしくて、生き物がいるいないとか意識しないでもわかるんだよね。あと異世界のものなんて何一つ分からないはずなのに見ればそれがなんなのかもわかるんだよ。頭ん中に辞書が入ってるみたいな?

 洞窟の中にしばらく隠れながら、俺はこの世界で目立たないように人間の姿になることにした。チートな俺も流石にこれにはちょっと苦労したな。人間の形にはなれるんだけど、鱗とか爪とか牙とかそういう細かいところを調整するのは難しくて1週間もかかってしまった。しかも人間の姿になれても気を抜くと一部だけ元に戻ったりしちゃってさ。完璧に人間の姿を維持出来るようになったのは1ヶ月過ぎたくらいかな。


 で、人間の姿になれた俺は近くの村か町に行ってみようって思ったわけ。ここまで自分以外の人と接してなかったから人が恋しくてさ。あ、俺に攻撃してきたやつらは別ね。あれは無かったことにしたから。ポッカリ穴が開いた山なんて忘れたし。……忘れたなんてウソウソ、ちゃんと反省してます。


 服とかは途中で見つけた旅人らしきやつから拝借した。代わりに俺の鱗を数枚置いたからたぶん大丈夫なはず。さすがに裸で歩いてたら変態だもんな。

 最初に見つけたのはそこそこ大きい町だった。町に入ろうとしたら門番? みたいなやつがいて身分証明書を見せろって言われたんだ。これには俺も困っちゃってさ。なんて言い訳しようかなって頭を悩ませてたら門番の人がじゃあお金はあるかって聞いてきたんだ。それに俺はまた困っちゃって。旅人からお金は拝借してないし、この鱗を売ったらお金になりますか? って門番さんに俺の鱗を見せたんだよ。

 そしたらもう大騒ぎ。俺の鱗ってかなり貴重みたいで、その日から俺は金に困らなくなった。売ったお金で町に入って、門番さんに勧められた通りに冒険者ギルドってところで身分証明書を作った。

 俺はもともとファンタジーな物語が好きで、こういう冒険者みたいなのに憧れもあったんだよ。だからこの日から俺は冒険者として毎日を楽しく過ごした。そりゃまぁ多少嫌なこととかもあったけど、それなりに人間関係も良好に俺は冒険者としてのランクを上げっていったんだ。


 と、ここまでは順調。

 問題が起きたのは俺がドラゴンになって1年と少しを過ぎたぐらいの頃。


 まず、俺は冒険者として最高ランクであるSランクにまで上り詰めた。異例の早さだったらしいけど、それはまぁ、悪いことではないし問題ない。

 問題だったのは俺がバカで天狗になってたことだ。


 まず俺の仲間は8人いたんだがそのうち2人が脱退した。2人の抜ける理由は俺の実力についていけず申し訳ないからというものだった。良いやつらだったから脱退は寂しかったけど、引き留めにくい雰囲気があったから俺はその申し出を受け入れた。

 俺は残りの6人とこれまで通りに冒険を続けた。2人減ったことによる違和感があったのは1ヶ月くらいで、それ以降は問題なくやっていけてた。


「リュードラのおかげで楽に稼げてラッキーだな」


「ほんと、リュードラがバカで良かった」


 リュードラってのは俺の名前な。竜とドラゴンを合わせてリュードラ。けっこう気に入ってる。

 で、こんな会話をしてたのが俺の仲間。驚くことに2人だけじゃなくて6人ともいた。会話の内容は俺がいかにバカで扱いやすいか。そしてこんなことやめた方がいいと言っていた2人が抜けてくれて良かったというようなものだ。

 ショックは思ってたよりも受けなかった。そりゃまぁ、おかしいよな。俺が1人でダンジョンに潜ってるのに分け前はパーティーで均等に割り振るし、あいつらぜんぜん強くないのにAランクになってるし。

 俺は冒険者が楽しくて他のことにあんま興味なかったけど、こんなの聞いて仲間で居続けるなんて無理だったからこいつらからの反対を押し切りパーティーを抜けた。


 1人になった俺は何が悪かったのか考えた。

 まず俺が規格外に強すぎることが問題だったと思う。仲間がいる必要性がなかった。

 それから俺の求めた仲間の条件が話の合うやつだったということも問題だったのかもしれない。実力はなくても一緒にばか騒ぎできる友達のような存在が欲しかったから仲間を募集したけど、そんな募集条件だったから集まったやつらは寄生するようになったんだろう。


 俺は反省した。

 それと同時にこうも思った。


 1人で生きていけるのになぜ人間関係に悩まなければならないのか、と。

 この時の俺は中二病が末期だったんだと思う。孤高の存在、なにそれカッコいい。みたいな。


 そして俺はソロで活動するようになった。1人で世界中を旅していろんな冒険をした。たまーに仲間になりたいと言うやつもいたけど、孤高の存在である俺は仲間を作らなかった。


「つまらない」


 その結果がこれだ。

 俺はドラゴンに生まれ変わったのが夢ではないと受け入れ、そして気がつけば1人ぼっち。

 ソロで世界中を旅したが、それもだんだん飽きてくる。自分が強すぎて冒険しても盛り上がりに欠けるのだ。初めて見るものや景色にはテンションが上がるがそれだけ。語り合う仲間や友達がいないから寂しさが際立つ。


「はぁ、これからどうしようかな」


 カフェで1人お茶を飲みながら通りを歩く人々を観察する。みんな楽しそうだ。しかもぼっちではない。

 羨ましいと思う。そして地球の家族と友達の存在を思い出す。


「欲しいな」


 家族が。

 友達が。

 物語は物語だからこそ面白いのだと実感する。今が満たされているから物語というエッセンスが引き立つのだ。


「……そうだ」


 俺はドラゴンに生まれ変わったが、地球のことを覚えている。家族や友達の存在も覚えているが、名前や顔などという細かい記憶はない。

 だからこそそこまで現状に絶望はしていないが、それでも知っているということはその幸せを求めてしまうということだ。


 俺は考えた。

 考えて考えて、そして思い付く。


 強すぎるなら縛りを作れば良いと。


 縛りというのはゲームを回復アイテムは使わないとか、死んだ仲間は生き返らせないとか、そういった独自のルールを作ってやることだ。何の縛りもない俺は、この世界で生きるには少しつまらない。だから面白く生きるためになにか縛りを作ろう。そうすればレベルマックスの俺もレベル20とか30ぐらいの一般人になれるはず。


「流石に家族は無理だとしてまずは友達が欲しいな」


 一緒に冒険出来る友達、もしくは仲間が欲しい。

 世界中を冒険して、世界遺産も目じゃないくらいの絶景を見てはしゃぎたいし、なんかとてつもない敵と出くわして命からがら逃げ延びたりもしてみたい。満点の星空を眺めて女友達だったけどコイツちょっと可愛いかも、なんてドキドキしたりもしたい。

 女の子の仲間が温泉に入ってるのを男たちで覗き見しに行ってみたいし、それがバレて女の子たちに怒られるっていうのも楽しそうだ。


「となるとパーティーメンバーをまた募集するべきか……」


 しかし残念なことに俺の冒険としてのランクはSだ。これではキャッキャウフフな冒険が出来る仲間を見つけるのは難しいかもしれない。


「ランクの高過ぎる冒険者はガチなやつが多いからな……」


 冒険者というのは命懸けだ。俺は強いから危険な目に遭うなんてことはないが、普通の冒険者ならそういった修羅場を何度かくぐり抜けることになる。そのためリア充みたいな集まりのパーティーなんてのかあればそいつらはすぐに全滅する。全滅=死だ。ゲームみたいに生き返る魔法や薬は存在しないので、死んだらおしまいゲームオーバー。

 というわけで、俺の理想のパーティーは理想のまま終わるというわけだ。キャッキャウフフなんてしてたら魔物に見つかって囲まれる。


「冒険自体はガチでやりつつリア充もガチで目指せばいいのか?」


 うーむ、難しい。

 だが俺はつまらない現状をなんとかしたい。


「いっそ冒険者から離れるか……?」


 いや、それはそれでつまらないではないだろうか。

 せっかくの異世界、魔法も使えて戦えるのにそれを捨てるのか?


「やっぱり異世界としてのアイデンティティーは大事だよな」


 それに俺はドラゴンだ。しばらく戦わないでいると体がムズムズしてしまうという性質がある。本能には逆らえないし、戦わずに大人しくし続けていれば本能が爆発し町を破壊してしまうかもしれない。たらればなので確証はないが、実験するのも危ないのでやはり定期的に戦う必要性があるだろう。


「戦えてリア充にもなれる……そんな方法があるのか?」


 お茶で喉を潤しため息を吐いた。リア充になるのはなんと難しいのか。


「ん、いやまてよ」


 その時、1つのアイデアが俺の脳裏を過った。


「そうだ、奴隷になろう」


 なんて天才的なアイディアなのだろうか。

 自画自賛。

 奴隷なら主人ガチャという自分の力じゃどうにも出来ない運ゲーがある。犯罪者のようなクズ主人なら考えものだが、それ以外ならまぁ、多少我慢しよう。

 自分の力だけでどうにか出来るこの状況がつまらないのだ。

 運ゲー要素と、何個かの縛りを設ければ楽しい思い出を作れるかもしれない。


「ドラゴンの寿命は長いからな……飽きるまでは奴隷生活して縛りの調整とかしてみるか」


 奴隷生活の中でマブダチのような存在が出来たらラッキー。

 出来なくても今までとは違う生活が出来る。


「奴隷は主人に逆らえないっていう縛りがあるからな。自分の縛りだけだと結局つまらなくなりそうだし丁度良い」


 と、ここまで考えてある問題が浮上する。


「奴隷って、どうやったらなれるんだ?」




もし続きをかけたら、


1、冒険者ギルドへ行き、どうやったら奴隷になれるかを聞くが常識人なギルドマスターに奴隷じゃなくて騎士や執事などの主に仕える職業になったらどうかと諭される。

→どこかの貴族の家で子供に魔法や剣を教えたり執事紛いのことをやってみる。案外楽しいと感じ、子供が大きくなったらまた次の家へと放浪する。(そのままその家に仕えるのも可)


2、奴隷商人の元へ行き、奴隷になりたいと直訴。良いカモが来たと目先の欲に眩んだ奴隷商人が主人公を奴隷に。

→最初の主人は裏で犯罪組織のボスをやっていて、主人公が何かの弾みでキレて組織を潰す。そしてまた奴隷商人の元へ戻る。以後何度か繰り返す。


という2つの選択肢がありました。

いつか書けたら楽しそうですよね……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ