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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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遂に…

翌日もやること自体は変わらない。探せる所はあらかた探したような感じだが、探すしかないだろう。そんな訳で、今日は寝室で探し物中だ。ここはシャーラレイが殺害された現場。すでにシーツやマットは処分され、本体だけになったベットがそこにある。どことなくがらんとした印象を受けるね…。


「普通に探して見つからないってことは、普通じゃない所にあるってことだよな…」

ここにはアマユキもいるが、俺は独り言のように呟いてしまう。


「まあ、そうなんでしょうね…」

アマユキも律儀に言葉を返してくれるが、さすがに諦めムードが漂っている。だからといって、もうないだろう…とは言いたくない。


「ちょっと休憩するか?」

行き詰まった時には気分転換だ。


「そうね」

アマユキもすんなりと乗ってくれた。


別の部屋で探し物をしているユリーシャとティアリス、フェリシアさんにも声を掛け、気分をリフレッシュさせよう。客観的に見ると、成果のまったく上がらないことを延々と続けている訳だからな。このままだと頭が爆発しちまうぜ。いつものようにフェリシアさんが淹れてくれた紅茶を楽しみながら、みんなで休憩だ。


「リビングの方は大体片付いていましたよ~」

フェリシアさんは紅茶道具一式を取りに行った際に、リビングを覗いてきたみたいだ。


すでに葬儀式は終わり、カレンはアリューシャに付き添って火葬場に行っている。そして、ゲオルク達は葬儀屋の人と協力して、後片付けをしているようだ。終わったらまたこの近辺を巡回してもらうか…。


「やはり、ないのでしょうか…」

ユリーシャがポツリと呟いた。


それはこれまで誰もが言わなかったことだ…いや、認めたくなかったことなのかもしれない。だが、事ここに至っては仕方がないように思える。そもそも盗賊団の連中ですら見つけられなかったものなのだ。ここまでか…諦めて次の手を考えよう、そう言おうとした時だった。


コト…


小さな音が微かに聞こえた。気のせいか?いや、みんなその音を聞いたようだ。だが、どこからその音が聞こえたのか…それは分からない。そんなことが分かるとしたら…俺はアマユキの方を見やった。


アマユキは鋭い目付きで洋風の仏壇のようなものを見ている。桜の花びらの蒔絵が施されたそれは、まるでインテリア家具のようだ。


寒い冬を乗り越え、春に鮮やかな花を咲かせる桜に、どんなに辛いことがあってもきっと乗り越えられるという思いを込めたのだろう…だが、その洋風仏壇だってもう十分すぎるほどに調べている。疑う訳ではないが…本当にそこから音が聞こえたのか?


アマユキがゆっくりと立ち上がり、どんな些細な変化も見逃すまいとするかのように仏壇を凝視した。人間レーダーフル稼働である。誰も声を掛けない…固唾を呑んで見守っている。やがてアマユキは洋風の位牌のようなものを手に取った。


「たぶん…これよ」

アマユキから位牌的なものを手渡されたが…こんなもん渡されたって、どうすりゃいいのか分からん。


「俺の勘だと…音がしたのはこれだ」

ここは右から左作戦で、ユリーシャに手渡すことにしよう。


「御神体は分解できるのですよ」

ユリーシャはクスクスと笑いながら為になることを教えてくれるが、肝心の御神体は隣のティアリスに手渡してしまった。


「ティアリスには無理でし!」

ティアリスは無邪気に、更に隣のフェリシアさんに手渡した。


「仕方がないですねぇ…」

最後に御神体を受け取ったフェリシアさんは、穏やかな表情で短い祈りを捧げると、御神体を分解した。


誰もが身を乗り出して見守る中、札板の裏側から出てきた物は…お守りだ!こんな所にあったのか…そりゃ見つけられんわな。


アイツらもそんな所までは調べなかったのだろう。お祈りを捧げる人がいなかったのかもしれない。だが、俺達は誰もお守りの実物を見たことがない。間違いないとは思うが、ここは専門家の意見を聞きたいところだ。


「これが…例のお守りなのか?」

俺はユリーシャに問いかけた。フェリシアさんの話によると、このお守りは無病息災を願ったものだったはずだ。何らかの魔法がかけられた魔法具である可能性は高いだろう。


「限定的に幸運を強化する魔法がかけられていますね…このお守りを持っていると、病気などの災いを防ぐ効果が多少はあると思います」

フェリシアさんから手渡されたお守りを調べていたユリーシャが、お墨付きを与えてくれた。これで間違いない。


「それから…何か別の魔法が隠されていますね。条件を満たすと発動する魔法のようです。もしかしたら、それがエステルマギの埋蔵金に関わっているのかもしれません」

あの話は都市伝説の類ではなく、本当の話という可能性もあるってことか…。


とにもかくにも俺達はお守りを見つけた。これは大きな一歩だ。これを上手く使えば、ヤツらを釣り出すことも難しくはないだろう。


「ホントに普通じゃない所にあったわね…」

アマユキが何とも言えない顔をしている。俺もまさかこんな所にあるとは思わなかったぜ。


「こ、これが…ザカリヤさんの、お守り…」

再びお守りを手にしたフェリシアさんが、アインラスクに来てから何度目かの発作を発症してしまった。


結局、こうなるんだよな。せっかく汚名を雪いだというのに…だが、この変態女がいなければ、御神体をばらすのに苦労していたのは間違いない。今だけは見て見ぬ振りをしてやる。好きなだけハスハスしてろ…俺は許す。アマユキは犯罪者を見るような目でフェリシアさんを見ているけどね。

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