表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

88/359

やはり来ていた

とは言え、俺達は美容の話を聞きたい訳でもなければ、アリューシャを口説き落としたい訳でもない。もう少し深い話を聞きたいところだ。そのためには自分から深い話をした方がいい。アマユキはそう考えたのだろう…ちょっとした身の上話をし始めた。


「私のお母さんってフォンラディアの出身なんだけどさ、私が子供の頃に森に置き去りにして帰っちゃったんだよ。酷くない?」

これ、フォンラディアにはマジでそういう風習があるんだよね…ヤバすぎだろ。


「ははっ。なかなか豪快なお母様なんだな」

それを豪快と評してしまうカレンの感性もかなりヤバい…ついていけんわ。


「私は母上を早くに亡くしてしまったので、そういうのはないな。その代わりと言ってはなんだが…父の教育のせいで話し方が男のようになってしまったのだ。ハッハッハ」

笑うところなのかどうかはよく分からんが、あえて笑い飛ばすことで、しんみりするのを防いでいるのだろう。そんなことより、カレンの母親って亡くなってたっけ?


『ご存命です』

まあ…この場では仕方あるまい。見逃してやる。


「いろいろありますよね~。私のお母さんも予言者みたいな人の言うことをすっかり信じちゃって…この冬の最中に蚊帳を使ってるの。お母さんに言われて、私も仕方なく使ってるんだけどね」

この流れで、アリューシャは母親絡みの笑い話にできそうな奇行を話したつもりなのだろう…でも、それは笑えないな。


「予言者なんて…いるんだね。ねぇ、どんな人だった?」

アマユキは朗らかな笑顔で聞いているが、目つきがほんの少し鋭くなった。


「私が出かけてる時だったから…見てはいないの。後でお母さんに聞いたら、赤い髪が印象的なすっごく綺麗な女性だったって」

これは…あの女と見て間違いないだろう。


「その予言者が来たのはいつだい?」

誰もが気にしていることを、カレンは単刀直入に聞きやがった。アリューシャに怪しまれなければいいが…。


「確か…去年の8月ぐらいだったかな。気になりますか?」

カレンに惚れかけのアリューシャは興味津々だ。どうやら杞憂に終わったようだな。


「オカルトなことには目がないんだよ。ハッハッハ」

上手く誤魔化したのかどうかは分からないが、疑念を抱かれてはいないようだ。ここはアリューシャがカレンに惚れかけなのが、良い方に作用したな。その後は訳の分からないオカルト話で盛り上がってしまい、特に収穫はなしだ。


そうこうしているうちにお昼時を迎え、アリューシャがそわそわし始めた。どうしたんだい?アマユキとカレンも気にはしているが、理由が分からないのでどうしようもない。そんな中、意を決したようにアリューシャが切り出した。


「あ、あの…ここでお昼にしませんか?」

どうやら一緒にお昼を食べたかったようだ。あんなにそわそわしてたのは、間違いなくカレンのせいだな。


「そうだな…そうしよう」

「この鍋、すごく美味しそう!」

カレンもアマユキも、そのお誘いに乗るようだ。時間が時間だし、アリューシャの心証を悪くするような手は打てないからね。


アリューシャがアマユキとカレンを誘ったのは、『心の味リオサカセ』だ。アマユキも言っていたが、ここは鍋料理が売りのお食事処である。シックな店内はアリューシャにとって分不相応にも感じるが、まったく気にせずに入っていく。


アマユキとカレンは顔を見合わせたものの、肩をすくめてアリューシャについて行った。今はアマユキが背負っているアリューシャの大切な商売道具があるので、三人は個室へ案内された。


さて、俺達はどうするか?こういう場合は外でパパッと済ませるのが常道で、俺達もその例に漏れず外で昼食を取ることになってしまった。ここにはユリーシャがいるというのに…。一方で『リオサカセ』の三人は、大海老フライとじ鍋に舌鼓を打っております。


「プリッとしたエビの食感がすごくいいね!」

アマユキのヤツめ、まるで俺に見せつけるように大海老フライを食べやがった。


「甘辛くてしっかりとした味のタレだな。このトロトロの卵は…ご飯の上に乗せて食べると最高だ!」

その食べ方はマジで最高なヤツだ!さすがはカレン…よく分かってやがるぜ。


「タレの味が染みて、とってもジューシーですよね。今日、二人と知り合えて…本当によかったです」

アリューシャは…とても満ち足りた表情をしている。エステルマギの埋蔵金のことなど関係なく出会うことができればよかったんだけどな…。少し罪悪感を感じるが、これはもう仕方がない。割り切るしかないだろう。


その頃、俺達はフェリシアさんが買ってきてくれたサンドイッチを、『リオサカセ』の裏手にある中庭でいただいていた。このような中庭は公共の場なので、誰が利用しても問題はないようだ。と言うことは、拠点にしている民家も中庭には面していないけど、使っていいんだな…勉強になるね。


ここも隙間なく家々が建っているので、慣れないうちはどうやったら中庭へ入れるのかは分かりにくい。どうやら標識が描かれている建物に、中庭へ抜ける通路が設けられているようだ。


適度に樹木が配置された中庭は、夏であれは緑が生い茂っているのだろう。でも、冬の今はすべての葉が落ち、物悲しさを感じる。日当たりのよさそうな長椅子を選んで座り、ユリーシャが不可視の盾でみんなを覆うと、ぽかぽかと暖まってきた。まるで温室のようで気持ちがいいね。


これならいくらでも待てそうだ。待っている間に寝落ちしないように気を付けないとね…。すでにユリーシャは寝落ちして俺に寄り掛かっている。だから、なおさら寝落ちする訳にはいかないのだ。


苦闘している俺をよそに、ティアリスもぐっすりと眠っている。自由人なティアリスは、フェリシアさんの太腿を膝枕にしているようだ。「みきゅう!」という謎の寝言が聞こえてくるが、どんな夢を見ているんでしょうね?


膝枕を提供しているフェリシアさんは、もちろんニコニコと見守っています。時折おかしくなることもあるが、全体的にはまともな人なのだ。


お喋りに花が咲きまくっていた三人だが、どうやら出てくるようだ。三人分の支払いは、カレンが店を出る前に済ませてしまったようで、アリューシャは恐縮しまくっている。思いのほか安かったので、気にすることはないとカレンは言っているが、そういうところが年下女子を虜にするんだろうな。


さてと…それでは俺達もほんわかとした時間を終わりにして、再び尾行することにしよう。ユリーシャとティアリスを起こし、俺達は再び冬の冷たい空気に身をさらした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ