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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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金庫と穴

ナターリアさんの案内のもと、部屋の外で待機していた3人と合流して俺達は3階へ上がった。案内された部屋は、寝室のようだ。暖かみがあり落ち着いた雰囲気の寝室は、心が休まりよく眠れそうだ。


「ここは主人と私の寝室でした。金庫は主人が使っていたベッドの脇にあります」

と言うことは、ここは半年前にソルタスが毒グモに咬まれて死亡した部屋でもあるんだな。ナターリアさんがぎこちない手つきでダイヤルを回し、苦労しながら金庫を開けた。


「こちらが、資料になります」

安堵の表情を浮かべながらナターリアさんが金庫の中から取り出した資料は、ちょっとした辞書くらいの厚みがある。いやはや…。


「この資料ですが…少しの間、貸していただけませんか?」

ユリーシャ、それに目を通すつもりか?すごいな…俺には無理だ。


「もちろん、差し支えありませんが…」

ナターリアさんは申し訳なさそうだが、気にすることはないと思いますよ。資料はユリーシャに任せるとしてだ…俺は改めて金庫に目をやった。


ナターリアさんが解錠する様子を見ていて分かったが、この金庫は00から99までの数字を4つ揃えることで開く金庫のようだ。元の世界で金庫の鍵明け動画を見たことはあるが、そんなに簡単に開けられるものではない。4枚の溝を揃えたうえで鍵開けをするとなると…かなり高度な技術が必要だ。


「鍵師は…解錠するのに苦労してましたか?」

敬語は苦手だ。それでも、なるべく丁寧な言葉遣いでナターリアさんに聞いてみた。


「そうですね。専門の工具を利用して開けていましたが…それでも1時間くらいはかかっていたと思います」

1時間か…いくら熟睡していても、そんなに時間をかけていたら目を覚ますリスクは高くなる。普通の方法で開けていたとは考えにくい。ならば普通ではない方法で開けたと考えるべきだ。


(魔法で解錠することはできるか?)

この世界は魔法の世界。困った時の魔法頼みで魔剣に聞いてみることにしよう。


『金庫のような複雑な仕組みを解錠することは出来ません』

さいですか…。


(なら…静寂の魔法で音漏れを防いで解錠するってのはどうだ?)

時間はかかるが、これなら気付かれないはずだ。


『金庫の周囲には解呪の魔法が発動しています。静寂の魔法をかけることは困難です』

それでもですよ!


(困難ってことは不可能じゃないよな?)

『数式魔法の高度な知識があれば可能です』

それは厳しいですね…これはとりあえず棚上げだ。


他には何かないかな?部屋を見回すと、アマユキとティアリスが天井を見上げていた。


「あそこ、穴が空いていますが…いつから空いていたのでしょうか?」

アマユキが指し示す方を見ると、確かに天井には穴が空いていた。天井裏から継ぎを当てて目立たないようにしているから、パッと見には分からない。よく気が付いたね。


「主人から聞いた話だと、ルアンザラーン商連合がこの館に引っ越した時にはすでに空いていたそうです。天井の張り替えも考えたようですが、費用が高額になるとのことで継ぎを当てることにしたみたいです」

ソルタスの判断は妥当なものだろう。肝心の穴の大きさは、指2本分といったところか…。


「屋根裏を見せてもらっても構いませんか?」

「ええ、構いませんよ」

どうやらアマユキとティアリスが見に行くようだ。


「ほら、行くわよ」

俺には関係ないと思っていたら、当たり前のようにそう言われてしまった。


もしかして…俺に入れってことか?屋根裏になんか入りたくないんだが、女の子に入らせるというのは俺の沽券に関わる。ここは行かざるを得ないだろう…。


「仕方がねえな…」

決して乗り気ではないからな!そんな俺達をティアリスがにやにやしながら見ている。だが、ここで突っ込んだら藪蛇だからな…スルーするぜ。俺も学習してるんですよ、ティアリスさん。


メイドさんの案内で、俺達は一先ず寝室から廊下に出た。その廊下の突き当りに屋根裏へ続く入口はあった。屋根裏へは階段で上がれるようだ。普段は上がらないので、そこには木彫りの人形が陳列してある。


木彫りの人形と言えばクマが鮭を咥えているアレが定番だ。でも、残念ながらここにはない。メイドさんが陳列してある人形をどかせてくれて…さあ、屋根裏へ上がりますか!気が乗らないけど…。


てっきり埃まみれだと思っていた屋根裏は、思っていた以上に綺麗だった。ほどよく掃除しているようだ。綺麗なことが分かると、アマユキとティアリスも上がってきた。


そうは言ってもここは屋根裏。天井高は低い。頭を打たないように屈んで寝室から見た穴までたどり着くと、そこには見逃すことができない奇妙な点があった。


「継ぎが重ねて貼ってあるでし!」

よく見ないと分からないが、確かに継ぎの上に継ぎが貼られている。


「これはいつからですか?」

「わ、分かりません。こんなことになっていたなんて…」

アマユキが一緒に上がってきたメイドさんに尋ねるが、どうやらメイドさんも知らなかったらしく、酷く動揺している。


それは仕方がないだろう。俺達は赤いクモのことを知っているから、あの穴からクモを放ったのではないかと疑った。だから、継ぎを見に屋根裏へ上がってきたのだ。


でも、それを知らなければ気にも留めないはずだ。そして、関心がなければ…明り取りの窓しかない薄暗い屋根裏で、しかも非常に上手く重ねて貼った継ぎには気付かないだろう。つくづく狡猾なヤツだぜ。

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