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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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アインラスクでの功罪

「やっとその時がやってきたね!」

待ちに待った時がやって来て、アマユキは嬉しそうだ。ここからのザカリヤは評価が分かれるからな…一方のフェリシアさんは、ちょっとジト目である。


「…ザカリヤさんがアインラスクの市長になった頃、アインラスクでは自由な商売が奨励されていました。それによって新しく商売を始める人がいました。ビックリするような技術やアイデア、新しい価値観…そういったものが生まれることもありました」

どの世界のどの時代でも、イノベーションは求められるものだ。


「一方でスリや盗品の売買が横行し、治安の悪化が問題になっていました。それから、売られている物の値段が急に高くなったりして、お客さん泣かせなところがありました…」

「いいことばかりじゃないんだな」

昔の人の苦労が偲ばれるね。


「難しいところですよね。それに対してザカリヤさんは証書を発行し、これを持っている人達だけが商売をできるように制限をかけました」

商売を許可制にしたって訳か…。


「それから、証書を持っている人達にギルドを組織することを求めました。ギルドのメンバーが情報を共有することでスリの摘発をし、時にはお互いに監視することで盗品売買の取り締まりに役立てたのです」

治安の悪化には歯止めがかかりそうだな。


「ギルドによる統制で、商品は安定して供給されるようになりました。そのおかげで、物の値段もそんなに変わらなくなったのですよ」

「アインラスクの市長としても上手くやっていたんだな…」

カルケーストの町長として指導力を発揮していたから、当たり前と言えば当たり前か。


「でも、反発も大きかったんだよ」

「そうなんです。証書は誰もが発行してもらえるものではなかったので、これまでのように自由な商売ができなくなった人達は不満を募らせました。抗議のデモがかなり起きたみたいですね」

アマユキとフェリシアさん、よく息が合っているね。


「しかし、ザカリヤさんはカルケーストでの功績が認められ、時の国王イブファレスから支持されていました。すぐに軍の魔法戦士が派遣され、デモは速やかに解散させられました」

アインラスクでは、カルケーストのように一筋縄ではいかなかったようだ。


「これ以降、ザカリヤさんは証書による商売の規制とギルドへの加入を奨励…」

「ほとんど強制だったんだよ」

「…奨励しました。どうしても証書が欲しい人はザカリヤさんに賄賂を渡していたみたいですね」

「ついに本性を現したって感じだよね」

この掛け合い、最高だな!


「た、確かにこの頃からザカリヤさんが賄賂を貰っていたのは間違いないです…」

「たくさん貰ってたんだよ!」

もう、笑うしかないね…。


「でもですね、アインラスクの更なる発展に大きく貢献しているのですよ!」

フェリシアさんは必死だ。頑張れ、フェリシアさん!


「どんなことをしたんだ?」

俺も適度にフォローするからさ。


「レガルディアではあまり食べられていなかったアワビやナマコの輸出です。これらの食材はアルカザーマ地方では高級食材でしたから、干しアワビや干しナマコに加工して輸出したのです」

「でも、その販売はエステルマギ商会にしか許されていなかったんだよ!」

清々しい程の身びいきですね。ザカリヤ…お前、どうしちまったんだよ?


「そ、それ以外にも様々な食材を燻製にしてからオイル漬けにした、瓶詰めを作りました」

保存食の開発か…これはカルケーストでもやっていたザカリヤの十八番だ。


「この瓶詰めは軍から高く評価され、正式に採用されることになりました」

こういうのは軍の必需品だ。でも、気になることがある。


「瓶詰めって…重くて割れやすいんじゃないの?」

「ショウ君は浅はかですねぇ~、フフフ…」

もっともな俺の疑問に、フェリシアさんはまたしても浅はか認定をしてきた。


「そもそも瓶詰めは置換して鏡界に収納しちゃいますから、重さは考えなくても大丈夫です。それから、瓶詰めに使う瓶はその表面に不可視の盾が発動しているので、割るのはかなり難しいと思いますよ」

魔法の世界ならではの解決策だな。


「これも輸出していたのか?」

「もちろんです。ただ、輸出する瓶詰めは置換なんかしませんけどね」

でしょうね。軍で採用される瓶詰めと輸出される瓶詰めでは、求められる性能が違うのだ。


「この瓶詰めもアインラスクの発展に大きく貢献したのですよ!」

「でも、それを取り扱っていたのは賄賂をいっぱい払った貴族が関わっている商会だけなんだよ」

得意気に胸を張るフェリシアさんに、アマユキが痛いところを突いてくる。この様式美、さすがですね。


「こ、交易にばかり力を入れていた訳ではないですよ。この頃にはアインラスクの港は手狭になっていたので、港の拡張を行いました。その際の資金は、これまでの交易でたくさん儲けていた商会に出してもらいました。おかげで、アインラスクの負担はごく僅かで済んだのです」

なるほど…それを受けてアマユキの番だ。


「でも、そのおかげで商会はさらに儲けられるようになって、ザカリヤへの賄賂ももっと多くなったんだよ」

でしょうね。アインラスクの市長としてのザカリヤ・エステルマギも、斬新な改革を行い有能だったことは間違いないのだろう。その一方で莫大な賄賂を受け取り、私腹を肥やしたとんでもない野郎だということも確かだな。

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