王妃様の計画
「そういえばその話がメインだったわね。必要なことだと思って話したけど、随分と脱線したものねぇ…」
リアルナさんが真剣な眼差しの俺を見ながら、クスクスと笑った。
「とぼけるなよ。リアルナさんがユリーシャを説得したのは間違いないが、それはリアルナさんが考えたことじゃない。いや、もっと正確に言うと誰か他の人の計画に賛同したものだ…違うか?」
「勘がいいわねぇ…ほとんど正解。90点ってとこかしら?」
あと10点はなんだよ?いや、それはともかく…。
「で、誰なんだよ?」
肝心なのはそこだ。
「王妃様よ」
「王妃様…」
って誰だっけ?
「エレーナ様よ」
心を読まれた訳ではないのだろうが、リアルナさんが親切に教えてくれた。
「その…エレーナ様?とはどういう関係なんだ?」
「ユリーシャ様にお仕えする前はエレーナ様にお仕えしていたわ」
なるほど…。
「どうして配置換えに?」
「エレーナ様たってのお願いだったもの…断れる訳ないでしょ?」
確かに…これは断れないヤツだ。
「エレーナ様はね…心優しいお方なのよ。ああいう形でご両親と離ればなれになってしまったから、ユリーシャ様がここに来られたばかりの頃は精神的に不安定だったの」
そりゃそうだろう…。
「何かあったのか?周りに辛く当たったりとか…」
「そういう目に遭ったのはカレン以外にはいないわよ」
まあ…カレンなら仕方ないか。
「全体的にはごくごく普通に暮らしていたけど、それは無理して押し隠しているだけ。そんなこと、長く続けられる訳ないでしょ?」
そうだな。そんなことしてたら、いつか爆発しちまう。
「そんなユリーシャ様を気遣い、毎日お見舞いに来て下さったのがエレーナ様よ。似た者同士なところがあるからかしら…お二人はすぐに打ち解けられたわ」
「似た者同士って?」
エレーナさんに何があったのか…気になるところだ。
「エレーナ様もユリーシャ様と同じような家柄の貴族で、文官として勤めていたのよ。そんなエレーナ様に陛下が一目惚れしたの」
よくある話だな。そういう話は俺もドラマや映画で見たことがあるぜ。
「その頃のエレーナ様は芸術文化庁に勤めていたのだけど、毎日のように陛下が会いに行かれて…エレーナ様がお家へ帰ることも快く思われていなかったみたいね。当時の王室庁の文官は大変だったそうよ」
ストーカーかよ…国王のくせにちっちゃいヤツだな。
「もしかして…その話も?」
「漏れる訳ないでしょ。漏れてたら取引をするにしても大変なことになるわよ?」
そう言われると、漏れた時の対価というヤツを想像してみたくなるが…。
「エレーナ様のおかげでユリーシャ様も精神的な落ち着きを取り戻し、色々なことが上手くいくようになったのよ」
その当時のユリーシャが置かれていた状況を考えると、エレーナさんの存在がどれほど大きかったのか…それはよく分かる。
「ここのメイドがシルフィアとミリッサ、それからリシアの3人に決まったのも、エレーナ様がユリーシャ様とじっくり話し合ううちに出てきたアイデアだったの」
「何でそんなことに?」
あの3人にケチをつける訳ではないが、一応ね。
「あの3人が選ばれたのは優秀だったこともあるけれど、それほど経験豊富ではなくて歳が近かったからよ」
その方が気兼ねなく過ごせそう…ユリーシャはそう考えたのだろう。
「ユリーシャ様が生家にいた頃はね、基本的には自分のことは自分でするという教育方針で育てられてきたみたいなの。だから、ここでの生活でも色々と話し合いをしながらやりたいと思ったみたいね」
言われてみればその通りだな…ユリーシャは何から何まで身の回りの世話をしてくれる人とは、合いそうにない。
「3人はすぐにユリーシャ様のやり方に慣れてくれたわ。私達3人の役割も自然に決まってきたの。カレンはお姉ちゃんとしてユリーシャ様を支え、明るいティアリスはさしずめペットといったところかしら?ティアリスと一緒にいる時はユリーシャ様も楽しそうだったわね」
それぞれ適任過ぎるほどに適任ですね。
「私はエレーナ様の代役ね。色々なお話をされたわ。相談だったり愚痴だったり…色々ね。ユリーシャ様のお悩みを完全に解決した、なんて自惚れるつもりはないけど…少しばかりの助けにはなったと思うの」
初めは色々とあったみたいだが、その後は上手くいっていたんだな。
「それで…王妃様は何で今回の件を企てたんだ?」
色々なことが分かって為になった。でも、もういいだろう?
「あの娘の夢を叶えるためよ」
リアルナさんは柔らかな表情で、俺の質問に答えてくれた。




