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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 魔剣の使い手

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アマユキ

苦労して頭を動かし、声の主の方に顔を向けると…そこには淡藤色の髪の女の子が、俺を見下ろすように立っていた。ショートカットがよく似合うね。


「…誰だ?」

口を動かすのも億劫なのだが、聞かない訳にはいかない。


「私?」

お前以外にいないだろう。


「私はアマユキ。アマユキ・アルトリュートよ。ずっと見学してたんだけど、すごく熱心にやってたから…声かけそびれちゃった」

アマユキと名乗った女の子は、悪気の欠片もなく覗き見していたことを告白した。無様で生産性のない挑戦をずっと観察されていたことは、ちょっと恥ずかしい。


「で、あなたは?」

「うん?あぁ…俺は…ショウだ。ショウ・ナルカミだ」

こういう状況なので、俺は簡潔に自己紹介をした。


「ふ~ん…いい名前だね」

「そうか?」

自分の名前がいいとか悪いとか…そんなことは考えたこともなかったな。


「そんなことよりさ…さっきまでの俺、どこが悪かったのかな?」

こんな所にいるのだから、アマユキはきっと軍の魔法戦士だろう。助言がもらえるならもらっておきたいところだ。


「う~ん…割と全部かなぁ…」

そ、そうなんですか…そいつは割とショックだぜ。


「なんなら私が教えてあげてもいいわよ?」

「よろしく頼むよ」

これは願ったり叶ったりの展開だ。なので、俺は素直に頼むことにした。


「じゃあ…明日の朝9時にここに来てね」

「ん、分かった」

言いながら起き上がろうとするが…できなかった。体力も魔力も限界まで使いきっているのだ。指一本、動かせそうにない。


「どうしたの?動けないの?」

「うむ、ピクリとも動けん」

心配して尋ねてきたアマユキに、俺は正直に答えた。


「しょうがないなぁ…もう」

柵を軽やかに越え、アマユキは俺の横に降り立った。足音がほとんどしない。ぶっ倒れている俺の横に腰を下ろしたアマユキが、俺の体に手をかざした。体がじんわりと暑くなってくる。アマユキが傷を癒してくれているのだ。


「これでどう?」

「ああ、十分だよ」

数分間のアマユキの治療で、怪我はほぼ治った。今は魔力不足で機能不全に陥っているが、そのうち魔剣も仕事をしてくれるだろう。明日までには完治しているはずだ。


「ところで…今日はもう終わりでしょ?」

「そうだな…」

教えてくれる先生ができたのだから、この続きは明日でも構わない。


「じゃあさ、これからちょっと付き合ってよ」

「ああ、いいよ」

この娘は今日初めて会った俺の傷を癒してくれた。さらにこれから色々とお世話になる女の子なのだ。その言うことはある程度、聞いておかないとね…明日からのことに支障が出てしまう。


俺はアマユキに連れられて巡回馬車に乗り込み、軍の施設を後にした。どうも中央市場に向かうようだ…ライラリッジは嫌というほど駆け抜けたからな。それぐらいは分かるぜ。


馬車の停留所を下り、少し歩いた所にあるレストランにアマユキは入っていった。なかなか趣のある店構えだ。『ザヴトラ』という名も響きがいい。


「あのさ…ハンバーグ定食を食べたいんだけど…シェアしない?」

席に着くなり、アマユキからそんなことを言われた。


「ああ、別にいいよ」

夕食には少し早い時間だが、俺は基本的に1日4食だ。シェアしてあまりにも少なくなるのはどうかと思うが、その場合はユリーシャ邸に帰ってからどうにかすればいいだろう。しばらく待っていると、ハンバーグ定食が運ばれてきた。それを見た俺は、目が飛び出しそうになってしまった。


なんじゃこりゃあ!ハンバーグが…ハンバーグがぼっけぇな!まるで岩のようだぜ!エアーズロックかよ!


「凄いよね…ここのハンバーグ。1人じゃあ絶対に無理だからさ、一緒に食べよ!」

巨岩のようなハンバーグを前に、アマユキのテンションも高めだ。


「そ、そうだな…」

まさかこんなとんでもハンバーグが出てくるとは思ってもいなかったので、俺は少し引きぎみだ。


ルンルンなアマユキがナイフとフォークを手に取り、サックリとナイフを入れると…肉汁がジュワリと染み出してくる。


う、旨そうだ。


このハンバーグ、分厚いにも関わらず中までしっかりと火が入っている。一口分のハンバーグを口の中に入れると…外はしっかりと焼かれてカリッとした食感、中はしっとりとした感じでジューシー。肉の原型が分かる程の粗挽きは、肉々しい食感を思う存分に楽しめるね。しいたけやしめじがたっぷり入ったデミグラスソースも、甘味とコクがあってすこぶる美味しい。


「そんなに遠慮しなくてもいいのに…もしかして、小食なの?」

いつもならガツガツと食べ進めているところなのだが、今回はアマユキとシェアしているからな…ペースを考えながら食べていると、アマユキに咎められてしまった。


「そういう訳じゃあないよ」

知り合ったばかりの女の子に、しかも明日から俺の先生になってくれる女の子に、粗相があってはならないと変に気を使ってしまったようだ。ここからはいつも通り、ガツガツいくぜ!


旨い、旨い、旨すぎる!小山のようなハンバーグも、二人がかりで挑めば何とでもなるもんだ。無事に完食である。


「すっごく美味しかったね!」

「ああ、ぼっけえ旨かった!」

アマユキも俺も、大満足である。


「それじゃあ…明日ね」

「おう、よろしくな」

来たときとは別方向の馬車に乗り、俺はユリーシャ邸へ帰った。もちろん、『ラナンエルシェル』での夕食も美味しくいただきました。

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