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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 魔剣の使い手

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頂は遥か遠く

児童公園にある遊具のようなものからサ○ケに出てきそうなトンデモ障害物まで、ここには実に様々な設備がある。今日は見学に来てホントに良かったぜ!


「最終的に何を目指すのか、そのイメージは持っておいたほうが良いだろう。ついて来い」

一通り見て回った後にカレンに言われ、俺達は体育館のような建物に入った。


入ってすぐの所にある階段から2階へ上がると、そこは壁際に通路があるだけで1階を見下ろせるようになっていた。1階はユリーシャ邸のあの白の部屋に似ている。窓がなく、壁や床は真っ白だ。違いがあるとすれば、2階があるかどうかだけだな。


そして、その1階には巨大なジオラマのようなものが見える。どこかの街のようだ。よくできているね…完成度の高さは相当なもんだ。


「下に見えているのはライラリッジを再現した鏡界ですよ。一般人はゴーレムで再現しています。そうでないのは、訓練をしている魔法戦士ですね」

あれはライラリッジなのか…どうりで見たことがあるような気がしたはずだぜ。それにしても奇妙だな。


「妙に小さく見えるが…」

俺の目が悪くなった訳ではないはずだ。目の錯覚か?


「鏡界というのは平行世界、異世界のことです。あの鏡界はこの世界からそれほど離れた場所にある訳ではありませんが、そんなに近くにある訳でもありません。それを観察できるようにすると、あのように小さく見えるのです」

そういう事情があるとはね…勉強になります。


ユリーシャの説明を受け、その気になってじっくり観察してみるが…パッと見はすべて一般人、つまりゴーレムのように見える。色々なゴーレムがいるところに、作者のこだわりを感じるね。


だが、そうではない者もいる。屋根から屋根へ跳び移っている赤い服を着たアレ、あいつはゴーレムじゃない。何かを追っているように見えるが…そいつの追う先には青い服を着たヤツがいる!


追われている青服は、高い所から大ジャンプを決め、空中で不自然に挙動を変えながら降りていった。赤服を惑わせるためだろうが…妙な動きをしていたな。


「今のは何だ?」

「あれは不可視の盾を足場代わりに使っているんだ。魔法戦士には必須のスキルだな」

俺の疑問に、カレンが分かりやすく解説してくれた。


不可視の盾の応用か…こんな使い方ができるとは思わなかったな。自分の足のサイズよりも小さな足場をほんの一瞬だけ展開し、それを空中での姿勢制御に利用しているようだ。理屈は分かるが…そんなのありか?


そんなことを思いながら見ていると、追っ手の赤服が光の矢を放った。だが、青服は屋根の上で側宙をきって矢を躱し、その勢いを利用して屋根の上から道路に逃れた。何で撃ってきたのが分かったんだ?あいつは超人だな…。呆気に取られつつも、2人の攻防から目が離せない。


おそらく赤服は接近戦に持ち込みたいのだろう…何とかして距離を詰めようとするが、青服は簡単にはその距離を詰めさせない。両者は中距離で光の矢を撃ち合うような展開になる。


お互いの攻撃はなかなか相手を捉えられない。直線的な動きと曲線的な動きを組み合わせた独特な動きを狙い撃つのはかなり難しい。チャンスがあるとすれば着地の瞬間だが…そんなことは2人とも百も承知だ。その瞬間は必ず建物の陰などでやりすごす。


それでもこの中距離での差し合いでは、青服の方に一日の長があるようだ。赤服の放つ光の矢を余裕をもって躱し、魔法盾で防ぐ。そして、赤服を不利なポジションを取らざるを得ないように誘導している。上手いな!


遂に赤服は、一軒の民家に転がり込むように逃げ込んだ。だが、青服は容赦なくその家に炎の豪球を打ち込む!


ドッガアアーーン!


あ、青服さん?さすがにそれはやりすぎではないでしょうか…。赤服はどうなったんだ?まさか…黒焦げ?固唾を呑んで見守っていると、瓦礫の中から赤服が這い出てきた。さすがに続行不能だ。


「す、凄かったですね…」

ユリーシャは俺と同じように魅入られていたようだ。


「ふむ…なかなかいいものが見れたな」

カレンはクールにこの模擬戦を評した。


「そうだな」

俺は素っ気なく返事をした。


だが、その態度とは裏腹にアツいものが沸々と湧き上がってくるのを感じていた。あれが極致、あれが目指すべき高み…すごい、すごすぎるぜ!でも、俺だってその裾野には立っている。後は上っていくだけだ!


自分の決意を大声で叫びたい衝動に襲われるが、俺はそれをグッと堪えた。別に体裁を気にするとか、そんなんじゃない。そういう想いは溜めるんだ。溜めて溜めてひたすら溜めるんだ。その想いが俺の力になるはずだ。


俺には魔剣がある。そして、ユリーシャもいる。やってやるさ!なあ、魔剣。俺は手に持った魔剣を強く握りしめた。


『頂へ到達することは十分可能です』

そんな俺の決意に、魔剣は律儀に答えてくれた。気のせいか…いつも事務的な魔剣の中に、俺は少しだけアツいものを感じていた。

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