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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第5章 カルルタリチェの悪魔

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老婆を捜せ

カラリスとザジニが協力して老婆を、その先にいる族を捜し出す決意を固めた横で、アルルが少し羨ましそうに2人を見ていた。毒殺されたモンテミウ商会の従業員だったカトリアとは、恋仲だったのかもしれない。アルルにも心に期するものがあるのだろう…。


「あの…絶対に捕まえてくださいね」

それでもアルルは自分の立場というものを重々承知している。だから託すのだ…そこにはいない俺達も、その思いは受け止めなければならない。


カラリスもザジニも、それが分からないような人間ではない。カラリスはアルルの肩に手を置き、力強く頷いた。


エルニド商会には謝礼を支払っているが、あまりアルルを連れ回すのは先方に失礼というもの。既に聞きたいことは聞けた。もう帰してあげるべきだろう。エルニドの近くまで来たところで、カラリスは足を止めた。


「今日は色々とありがとうよ…会長にはアルルの方からよろしく言っておいてくれ」

「はい、今日はご馳走様でした」

別れ際も元気よく礼を言い、アルルは商会に戻っていった。


踵を返したカラリスの手には、ザジニが描いた老婆の似顔絵がある。もちろん、同じものをザジニも持っている。とは言え、そこに描かれているのはこれと言った特徴のない老婆だ。これからどうするつもりなのか…そこは気になるところだな。


「俺は一先ず戻って、このことを上司に相談しようと思う」

カラリスの判断は賢明だ。上司はあのゼフィルスだからね。


「お前はどうする?」

もちろん、今後のザジニの動向を確認することも忘れはしない。


「少しばかり捜して…それから宿に戻ろうと思っています」

ザジニだけであの老婆を見つけることはかなり難しいだろう。それでも動かない訳にはいかない。


別れ際に、ザジニは自分の宿泊先をカラリスに教えた。『インシグネ』のすぐ近くだ。ここもレガルディアと何らかの関係があるのかもしれない。


「それで…私達はどうするのだ?」

いつものように話を振ってくるのはカレンである。自分から意見を言ってくれてもいいんだけどね。


「不特定多数の中からあの婆さんを見つけるのは骨が折れるだろうな…ここは俺達の出番だ」

正確には、不可視の錫杖の出番だ。


「この婆さんは繁華街にいる可能性が高いと思う…俺とアマユキ、フェリシアさんで北部から東部を捜す。ユリーシャ達は南部から西部を捜してくれ」

この組み合わせが最適なはずだ。とは言え、俺達はすぐに動いた訳ではなかった。


「どうしてこのお婆さんが繁華街にいる可能性が高いの?」

にやにやとしながら聞いてくる辺り、アマユキだって分かっているだろうに…別にいいけどさ。


「このサクラはただのサクラじゃあない。こんな話を持ち掛けられたら、誰だって裏を勘ぐるもんだ…それでも引き受けたってことは、この婆さんは堅気じゃない可能性が高い。そういうヤツは繁華街にいるもんさ」

多少の偏見はあるかもしれないが、家でじっとしていられるタイプだとは思えない。


「それに…この件にもあの女が関わっているんだ。そうなるとアルクニクスが実働部隊として動いているはずだ。ヤツらの組織力は侮れない」

決して目立つようなことはせず、それでも要所要所で上手く立ち回る…不愉快なヤツらだぜ。


「カルルタリチェの魔法戦士の中にもアルクニクスの手先がいるのかもしれないでしね…」

「そうなってくると、ゼフィルスが動かせる人員には限りがある」

ティアリスの見立て、それを受けた俺の予測…どちらも間違っていないように思える。だから、誰も何も言わなかった。決まりだな。


今後の方針に誰もが納得したところで、俺はアマユキとフェリシアさんと一緒にコテージを後にした。まずは北部の繁華街に行ってみることにしよう。


昼下がりを迎えた繁華街は閑散としている。あの婆さんも、今はここにいるとは思えない。適当なところで切り上げて東部に行ってみたが、こちらも似たようなもんだ。南部から西部を捜していたユリーシャ達も、収穫はなかったようだ。


繁華街が再び書き入れ時を迎える夜を狙いたいところだが、その時間はクドゥスと会合をすることになっている。今日のところは打ち切りだ。こういう事態になるなんて、想像もしていなかったからな…仕方がないだろう。


「ティルスからの報告によりますと、ジラニに関わる奇妙な事実が浮かび上がってきました」

夜の会合で、まず話を切り出したのはクドゥスである。チャラ男コンビは来ていないが、ちゃんと仕事をしているようだ。


「流罪の期間は終身が基本。もちろん刑が減免され、釈放されるケースは多々あります。ですが、ジラニのように特段の事情もなく1年で釈放というのは、異例なことです」

何らかの事情がなければ1年は短すぎるってことか…そりゃそうだわな。


「何者かが裏から手を回した可能性が高い…そういうことですね?」

クドゥスからの報告に、こくこくと頷きながらユリーシャが聞き返した。


「その通りです。ただ、それが何者なのかははっきりとは分からなかった…とのことです」

確証はないが、あの女から指示を受けたアルクニクス商会が関わっているのだろう。となると、そう簡単に尻尾を掴ませる訳がない。チャラ男コンビが何か見落としている可能性も、否定はできないけどね。

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