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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 魔剣の使い手

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求められるスキル

一夜明け、俺はユリーシャとカレンに連れられ、レガルディア軍の施設の一つを見学しに行った。ライラリッジ近郊にあるその施設は、正規の魔法戦士の駐屯地と見習い魔法戦士の養成を兼ねている施設のようだ。


今、見ているのは直径約30cmのポールの上から別のポールの上へ跳び移るトレーニング。ポールの高さは50cmから1m、幅は1mから2mといったところか…。それが20本ある。


タン、タン…タンッ!


「下を見るな!前を向け!」

「は、はいっ!」

教官らしき厳ついおっさんの容赦のない怒声が響き、まだあどけなさが残る生徒がビクッとしながら答える。分かってはいるけど、見てしまうんだろうな…その気持ちはよく分かる。


「厳しいな…」

「あれは養成学校の教官と生徒だ。あれぐらいは当たり前だ」

カレンが事も無げに言った。


「そうか…」

俺はこれまで魔剣の助けを借りながら自主的にトレーニングをしてきた。だから、カレンやティアリス、リアルナさんからあまりうるさく言われたことはない。そういうもんだと思っていたが、どうやら違うようだ。


「レガルディアの魔法戦士の多くは、この学校の卒業生なのです」

なるほど。


「もちろん、ショウのように実績のある魔法戦士に師事して上を目指すという手もある。私もそうだった」

「カレンは誰に弟子入りしたんだ?」

「父と祖父だ」

「へぇ~」

「カレンのお父様はとても強いお方なのですよ」

「そんなに?」

「レガルディア最強の魔法戦士と言われている。ただし、母上には頭が上がらない」

「そ、そうなのか…」

「でも、恐妻家の方が夫婦は上手くいくと思います」

「まあ…そうかもしれないな…」

話に花が咲きまくっている俺達を教官は微笑ましく、生徒は羨ましそうに見ている。


「私達のことは気にせずに、トレーニングを続けてもらって構わないですよ」

ユリーシャがにこやかにトレーニングの継続を促しているが、この状況で気にせずにって言われても、それはさすがに無理だろう。カレンが折り目正しく一礼し、俺もそれに倣って一礼すると俺達はその場を後にした。


「思いがけず話が弾んでしまいましたね」

それでもユリーシャはちっとも悪びれることなく、ご機嫌だ。


「間違いなくショウのせいだな」

こちらも間違いなく楽しんでいるカレンが、俺のせいにしてきやがった。何でそうなる?


「それは置いといてだな…お前ら、今日ここに来た目的を忘れてないか?」

大事なことなので再確認してやると、会話がピタリと止まってしまった。何とも言えない沈黙が流れる。


「も、もちろん、忘れてなんかいませんよ」

「当然だな」

だが、2人の目は泳ぎまくっている。お前らな…まったく。


今日、ここに来たのは他でもない…視察である。魔法戦士に必要とされるスキルは、剣術だけではない。しかし、ユリーシャ邸の設備は別館のものを含めても、それらのスキルを身に付けるには不充分なのだ。


となると、少し遠いがここまで地道に通うしかないか…そう考えていたら、ユリーシャから思わぬ提案があった。それが鏡界の中に施設を造るというものである。


鏡界とは、主に置換の魔法を使う際に利用する平行世界だ。そこに施設を造るなんて、考えもしなかった。そんな使い方ができるとはな…何にせよ、造ってもらえるのであればありがたい。


とは言え、何を造ってもらえば良いのか…それがよく分からない。なので見学しに来た、という訳である。決して物見遊山でこんな所に来ている訳ではないのだ。


そうは言っても、ユリーシャはお出かけ気分で来ているっぽい。今日はいつもなら大学で講義をしているはずだが、休講にでもしたのだろう。それでこんな所で油を売っているんだもんな…サボり講師ですね。


でも、その気持ちは分からなくもない…この前、俺がアラミレウと一緒に街ブラすることになった時も、少し不機嫌だったもんな。


ポールを後にすると、少し離れた場所で何かしている集団がいる。丁度いい…こっそり混ぜてもらおう。


「どうやら着地や受け身のトレーニングをしているようだな…」

一目見て分かるとは…さすがカレン先輩、頼もしいですね。さっきのように邪魔になってはいけないので、何も喋らずに聞くことにしよう。


着地について、優男の教官が説明を始める。しれっとユリーシャがこの場にいるもんだから、その表情は少し硬い。スマン、教官。俺の隣のヤツのことは無視してやってくれ。


「魔法戦士に求められるのは単純な戦闘能力だけではない。あらゆる状況に対応して行動することが必要になる。それは壁や地形を活かして走る、跳ぶ、登る、などの移動動作を複合的に行うことだ。もう少し分かりやすく言うと、高低差のある場所を素早く移動することだ。当然、高い位置から着地をする時には衝撃を和らげなければならない。まずは衝撃を吸収する着地をマスターしてもらう」


言っていることは論理的なんだけどね…緊張のせいか、少し早口になっている。間違いなくユリーシャのせいだ。それはともかく、教官の説明する着地のやり方はちゃんと聞いておかないとな。足の着き方、膝と腰の曲げ方、手の使い方。なるほど…。


続いて受け身だ。


「『着地』だけでは衝撃を和らげられない場合は『回転受け身』を使う。着地の衝撃を体全体で受け流すことで衝撃を分散させるんだ」

硬い地面での受け身を考えると、着くのはどの部分も一瞬にするのがポイントのようだ。勉強になりますね。

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