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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第5章 カルルタリチェの悪魔

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もう一人の子供

丁度いい頃合いになるまで散歩を楽しみ、俺達は『まきばの食堂』で昼食をとることにした。


「いらっしゃい。散歩は楽しかった?」

俺達を出迎えてくれたのはダリシアさんだ。どうやら給仕を担当しているようだ。


「もちろんです。ここは素朴で抒情豊かなところですね。用がなければ、もう少し長居したいくらいです」

何の変哲もない風景も、散歩マニアのユリーシャには素晴らしい風景になるのだ。ダリシアさんは嬉しそうに頷いてくれた。


俺達がお昼にここに来ることは分かっていたので、ダリシアさんは席を取っておいてくれた。ありがたいことだね。


注目の昼食は、生ハムとルッコラを使った白雪のピザだ。ピザと言えばトマトソースを使うものが定番だが、この白雪のピザはトマトソースを使わないピザである。


その代わりに存在感を発揮しているのが、モッツァレラチーズをはじめとした3種類のブレンドチーズだ。ピザを持ち上げたら当たり前のようにチーズがビヨ~~~ンと伸びて、何だか嬉しくなるな。


期待に胸を膨らませながら食べてみると…う、旨い。旨すぎるぞ、オガンド!


3種のブレンドチーズを乗せたシンプルな生地と生ハムの旨味と塩気、さらにルッコラの爽やかな風味が最高によく合っている。これほどのピザを出してくれるとは…さすがすぎるぜ、オガンド!


美味しいピザを堪能した後はそれぞれの部屋に戻り、のんびりと過ごすことにした。もちろん、俺はバットの素振りである。こういう時のためにユリーシャに造ってもらった鏡界で、しっかりと振り込む。


それが一段落したら剣術の復習だ。特に彗星の一撃は入念にチェックする。今や完全に自分のものにしたが、そこに胡坐をかく訳にはいかない。この身体操作は応用が利くはずだ。その気になれば、あらゆる場面で使えるようにするべきだろう。


事件に首を突っ込んでいた時ですら、欠かしたことがなかった素振りと剣術の復習。今日のように何もない日には精が出まくりである。ずっと続けていられるが、そうは問屋が卸さない。


「オガちゃんが3時のおやつに誘ってくれているでし!」

オガちゃんってのは間違いなくオガンドのことだ。今日もティアリスはティアリスである。


「ああ、分かったよ」

水を差されるのはいつものこと。それに適度な休憩は必要なことだ。


再びみんなで『まきばの食堂』へ赴くと、そこでは一仕事を終えたオガンドが寛いでいた。今日のランチメニューはピザだけだったが、訪れた人は誰もが納得する味だったはずだ。それはオガンドも分かっているのだろう…満足げだね。


「この時間は営業してないからね…気兼ねすることなくゆっくりしてくれればいいよ」

俺達は勧められるままに席に着いた。でも、ゆっくりしたいのは俺達ではなくオガンドだと思うぞ。


寛いでいる俺達に、ダリシアさんが紅茶とプリンを持ってきてくれた。ぷるぷるの食感が堪らないプリンは、少し甘めだが卵の濃厚な味わいを楽しめる昔ながらのプリンだ。


もちろん、このプリンも牧場でとれた卵と牛乳で作られている。これは宿泊客にだけ提供されるプリンなんだそうな。


「ジウリーだっけ?弟の…いつ帰ってくるんだ?」

「再来年だね」

プリンの出来栄えに満足げに頷きながら、オガンドが答えてくれた。


「でも、月末には必ず学校の寮から戻ってきて、厨房を手伝ってくれるんだよ」

「お店のまかないを食べるのが楽しみで仕方がないのよ」

オガンドとダリシアさんは、今はいないジウリーのことを慈しむように話した。どうやらジウリー君は食いしん坊のようだ。何だか親近感が湧くね。


「ジウリーも牧場で飼っている動物のことは大好きだと思う。ただ、彼は美味しい料理を作って食べてもらうことの方に興味を持ったようだね」

「喜んでいるお客さんの笑顔を見ると、ますますやる気が湧いてくるみたいなの」

両親から見ても、ジウリーは料理人に向いているようだ。


「お二人ともいい息子さんですね」

家族の話になると、ぐいぐい来るのがユリーシャである。


「そうだね。でも、ジウリーには少し負けず嫌いなところがあってね…それが悪い方に作用することもあるんだよ」

「あの子、早く一人前になりたくて仕方がないのよ。だから、基本を疎かにするところがあるの。掃除のこととかね」

何事も基本は大事だ。ジウリー君も、いずれそれが分かるだろう。


「ジウリーには時折り声を掛け、必要なことを教えているんだけどさ。なかなかね…」

オガンドは苦笑しているが、それを楽しんでもいるようだ。


「何事も修行が肝心だからな…」

自分の経験からもそう思う。今は下働きで頑張る時だ。


「そう、そうなんだよ」

オガンドはジウリー君の頑張りをちゃんと見ている。それが伝わるといいな。


「ところで…子育てに必要なことは何だと思いますか?」

二人の子供を立派に育て上げたオガンドとダリシアさんだから、ユリーシャとしてもそれを聞かない訳にはいかないのだろう。


「自分が選んだ道を楽しく進んでいくこと…かしらね。人生なんて何が起こるか分からないものなんだから…もちろん、大変なこともあったけどね」

ダリシアさんは、穏やかな笑顔を浮かべながら答えてくれた。


サリールとジウリー。2人の子供の成長は、きっと親であるオガンドとダリシアさんの活力を養っているのだろう。それを実感しているんじゃないかな…。


サリールの後を追うように、ジウリーもこの牧場で働くことになっている。好きなことを仕事にできる。それどころか、両親と一緒に働くことができる。羨ましい限りだ。


でも、オガンドもダリシアさんも、2人の子供には自由に羽ばたいてほしいと思っているはずだ。先の長い人生には、思いがけない体験が待っているものだからね…俺のように異世界に飛んでいくのはどうかと思うけど。

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