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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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ベンカジの視点

「ところで…リセクとレンナーでは随分と対応の仕方が違ったな」

ベンカジが2人のことをどう見ていたのか…そこは押さえておくべきだろう。


「それは当然だ。レンナーは会計庁と通じて談合を調べていたのだからな。看過できないことだった」

やはりバレていたのだ…そりゃそうよな。


「だが、リセクが談合に気が付いたのは偶然だ。レンナーのように会計庁に通じてもいなかった。私としては丁度いい機会だと思っていた」

ベンカジさん、気になることを言い出したね。


「丁度いい機会って?」

もちろん、アマユキもそれを見逃さない。


「あれを後継者にしようと思っていたのだ」

そうきましたか…。


「カロリーナからの紹介で採用したが、正直に言うとそれほど期待していた訳ではなかった。だが、その見立てが間違いであることをリセクはすぐに示してみせた」

リセクのことを語るベンカジは、どこか誇らしげでもある。


「だからこそあの歳で3位支配人に登用したのだ。それには誰も文句を言わなかった。だが、その先を任せるにあたっては、知っておかねばならないことがあった」

ベンカジの言い分には、一理あるように思える。


それはベンカジの立場から見ると、事件がまるで違うものに見えてくるからだ。リセクが偶然知ってしまった談合の一端。あれはベンカジにとっては願ってもない機会でもあったのだ。


「リセクは裏の事情というものを知らなさすぎた。そういう意味では信用できる人間ではなかった」

この業界に古くから存在する悪しき慣習…それを知らずして会長にする訳にはいかない。ベンカジの気持ちはよく分かる。


「だからタリアを近付けたのか?」

こうなってくると、タリアという女の持つ意味もだいぶ違ってくる。


「そうだ。リセクの弱味を握ることで、レンナーのように下手な動きをするのを防ぐ。同時にこれを教訓としてほしかった…女絡みのトラブルは、避けねばならない」

敢えて言わなかったが、これはリセクを守るためでもあったのだろう。正義感に駆られて行動を起こしていたら、擁護できなくなる…最終的にはそうなってしまった訳だが。


「それで…リセクは後継者としてどうなの?」

今後のマルバイユには、茨の道が待ち受けている。談合とそれに伴う殺人。それに関わっていた会長のベンカジ、筆頭支配人、それから2位支配人の3人は、間違いなく処分される。となると、リセクが会長になる可能性は十分にある。


「まだまだだな…」

マルバイユの行く末を案じたアマユキに、ベンカジは頭を振って答えた。


これ以上、悪事に手を染めたくはない…他ならぬリセクの言葉だ。ベンカジの思惑はどうあれ、今のリセクにそれを受け入れるつもりはないだろう。だが、パルシファルの材木業界の今後がベンカジの予想通りになれば、リセクは壁にぶち当たることになる。その時、どうするのか…それは誰にも分からない。


確かなことは、リセクの決断如何によっては多くの人が影響を受けるということだ。清濁併せ呑むことができればいいんだけどな…そんなことを思いつつ俺達は、ベンカジの尋問を終えることにした。


ドグラスの尋問に関しては、ディサイド達に任せておけばいいだろう。談合の全容解明には、長い時間がかかるはずだ。会計庁の協力も必要になる。それは当地の魔法戦士に任せた方がいい。


「それで…どうしますか?」

ゼレケとレンナー。2人の殺人事件の真相を解明し、拠点を後にしたところでユリーシャが尋ねてきた。


「ジルニトラの邸宅へ行く…カロリーナさんに聞きたいことがあるからな」

それには誰も異論を挟まなかった。


ジルニトラの邸宅は、割肌のライムストーンを壁面にあしらった重厚感のある外観が目を引く。強面の主にピッタリな邸宅だ。


ユリーシャがいるので、俺達は顔パスで中に入れてもらえた。こういう時はユリーシャの身分に感謝だな。応接室へ通されると、たいして待つこともなくカロリーナさんが連れてこられた。


「元気そうで安心したよ」

まるで昨日の出来事などなかったかのようだ。


「良くしてもらっているからさ。ありがたいことさね」

それは良かった。ならば洗いざらい話してくれるだろう。


「昨晩のことだが…どうしてリセクがアカテナンゴ商会にいると分かったんだ?」

策士カロリーナのばら撒き策で様々な情報が集まっていたが、その中にアカテナンゴ商会につながる情報はなかったはずだ。


「昨日はリセクの帰りを待っていたんだけどさ…いつまで待っても帰ってこないから、マルバイユ商会に様子を見に行こうと思ってたのよ。そしたら人が訪ねてきた」

「どんな人?」

会うのは初めてだが、アマユキは気さくだね。


「燃え盛る炎のような赤い髪が印象的な女だよ」

まさかまさかだな…俺達はずっとネコたんで2人を観察していた。それをやめたのは、アカテナンゴ商会の邸宅へ向かう少し前。そのタイミングで動きやがったのだ。やってくれるぜ…。


「そいつはアルクニクス商会の使いでやってきたと言ってたね。それから、リセクはベンカジと一緒にアカテナンゴ商会へ向かっているってね」

余計なことをしやがって…迷惑この上ないぞ。


「何でアカテナンゴ商会に?って聞いたら、行けば分かるってさ」

「怪しいとは思わなかったのか?」

策士カロリーナにしては軽率だ。


「アカテナンゴ商会には悪い噂があったからね…見過ごせないよ」

ドグラス以前にも、アカテナンゴは談合の元締めとして暗躍していたのだろう。さもありなんだな。


このパルシファルで、あの女はこれまで以上の存在感を見せてきた。何か理由があるのか…それとも、たまたまなのか…それは分からない。


次だな。次に事件が起きるのはカルルタリチェのはずだ。あそこもイレブン・スターズの一角。だが、そこに向かう前にやるべきことがある。それを済ませるために、俺達はコテージに戻ることにした。

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