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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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エポカローザ平原

「ところで…今回は随分と趣が違うよな」

前回はどこまでも同じような草原が続く、単調な造りだった。それと比べると今回は、かなり作り込んだ鏡界になっている。


「ここはエポカローザ平原をもとに造られた鏡界のようですね」

俺の疑問に答えてくれたのはユリーシャだった。やはり頼りになるね。


「エポカローザ平原?」

それでも初めて聞く地名なんでね…オウム返しで聞き返してしまう。


「はい。中央平原の一角に、このような場所があるそうです。エポカローザとは現地の言葉で石の壺…あのような石の壺が数千個もあるそうですよ」

「そうなのか…」

つまり石の壺がある平原ってことだ。意味が分かると納得できるね。


「現地の人々の伝承によると、あの石の壺は巨人が祝杯を上げるために作った杯だと云われています」

「マジで?」

そりゃすげえな!


「その後の調査で、さすがにそれは否定されていますけど…」

「でしょうね」

ユリーシャは俺の反応を楽しむように、クスクスと笑った。


「エポカローザ平原は周囲を山に囲まれた盆地で、石壺が密集している場所がいくつもあります。あちらの森の中は、その内の一つのはずですよ」

「そうか…」

さて、どうしたものか…はっきりとは言わなかったものの、ユリーシャは色々と調査したいと思っているようだ。


俺達がこの鏡界にやって来てから、既に5分は過ぎている。にも拘らず、まだ元の世界に戻っていない。ウォーダンの作為なのかミスなのか…それは分からないが、これをいい機会としよう。


「少し調べてみるか?」

ヤツらの手の内が何か分かるかもしれない。


「そうですね!」

ユリーシャは嬉しそうに同意し、カレンもティアリスも異議を挟まなかった。


結界の中で待っているアマユキ達に事情を説明し、俺達は少し離れた所にある森に向かうことにした。草原から見た森は鬱蒼と茂っていたが、回り込んでみると意外と拓けている。明らかに人の手が入っているね。


もっとも罠がある可能性は否定できないからな…ここからは不可視の錫杖で観察することにしよう。ユリーシャが言っていた通り、森の中にはたくさんの石壺があった。


「草原とは大違いだな…」

「そうですね…でも、ここは忠実に再現されているようです」

引っかかるものを感じたが、確認は後ですることにしよう。


ここにある石壺は、高さが1m程のものが多いようだ。だが、中には2m以上もある石壺もある。ここの石壺も長きにわたり放置されてきたのだろう…その表面は黒ずみ、苔むしている。水が溜まっているものもあるようだ。


「時の流れを感じるな…」

嘆息しながら俺は呟いた。


「こちらの石壺はもっと凄いことになっていますよ」

ユリーシャが見せてくれたのは、木の根元に転がる割れた石壺の破片だった。


「これは石壺の中に落ちた種が芽を出し、成長した結果なのです」

ユリーシャの説明はもっともだ。それでも石壺を割った木の根が、その破片を包み込んでいる様を見ると…自然の持つ圧倒的な力というものを感じずにはいられない。


「地面に転がっている丸い石…形状からすると、石壺に被せる蓋か?」

「でしょうね。そのように考えていいと思います」

俺のありきたりな疑問にも、ユリーシャはちゃんと答えてくれる。さすがですね。


エポカローザ平原のことに詳しいユリーシャの提案で、周囲を見下ろすような小高い丘に向かうことになった。一目見て分かる違いは、丘の上にある石壺の大きさだ。


「こっちの石壺はでかいのが多いな…」

そこには2m以上の石壺がそこかしこにあった。


「ショウが中に入ってもすっぽり隠れちゃいますね」

確かに。楽し気なユリーシャを見ると、入ってやってもいいような気もするね…入らないけどさ。


「一番大きな石壺は…3mはありそうだな」

ティアリス2人分の大きさである。ここまででかいと、壺と呼ぶには巨大すぎるよな。そして、この巨大な壺と他の壺の違いは、大きさだけではなかった。


「ここ…分かりますか?」

ユリーシャが指し示した所を、俺はじっと見つめてみた。


「何か…人の形のようなものが見えるね」

魔剣によると、それは人の形の浮き彫りだそうな。


「石壺には文字が記されていません。ですから、これが何なのか?はっきりとは分かっていませんが、お墓のようなものではないかと考えられています」

お墓か…納得はできるが、疑問がある。


「これだけで分かるもんじゃあないだろう」

どうだね?ユリーシャ君。


「ほとんどの石壺には、中に何も入っていないように見えました…長い年月の間に盗掘されたと考えられています。ですが、何も入っていなかった訳ではないのです」

そこまで言われると、何となく分かるもんだ。ユリーシャと俺、まるで先生と生徒のようだな。


「人骨…か?」

ユリーシャに促され、俺は答えてやった。


「そうです。近くの山にある洞窟で、焼かれた人骨の一部が発見されました。おそらく洞窟を火葬場として利用していたのでしょう…そして、石壺の中にも焼かれた人骨がありました。このことから、石壺は骨壺でありお墓であると考えられています」

なるほど…納得はできるね。


「それなら石壺が密集していることにも説明はつくな」

森の中も丘の上も、この石壺を作った人々にとっては墓地だったのだ。


「ですが…謎も残っているのです」

そうなの?


「石壺の中には焼かれていない骨も見つかっています。それらは陶器の壺に入れられていました」

つまり陶器の壺が骨壺、石の壺が墓…ということか。この埋葬方法の違いが何を意味しているのか?それは分かっていないようだ。

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