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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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救出

「ちょいと!ベンカジの旦那!どういう顔ぶれなんだい…これは」

こちらの思惑なんぞどこ吹く風、カロリーナさんがベンカジに啖呵を切りやがった。しばらくは成り行きを見守るしかないだろう…。


「あなた!」

囚われのリセクを見つけたサーニャが、悲鳴じみた声を上げる。


「サーニャ…それに母さんも。こんな所に来ちゃあいけない、逃げるんだ!」

この展開はリセクにとっても予想外のことだったようだ。2人に逃げるように迫るが、カロリーナさんにせよサーニャにせよ、リセクを置いて逃げるという選択肢はない。そもそもヤツらが逃がす訳がない。


「よくも…娼婦を使って、リセクをたぶらかせてくれたもんだね!」

カロリーナさんがベンカジを激しく罵った。


「やっぱり…罠だったんだな」

薄々気が付いていたのだろう…誰に言うでもなくリセクが呟く。


「卑怯な真似はこれっきりだ!リセクはね、あたし達に返してもらいますからね!」

そりゃ無理な話だ。ドグラスがどのような決断を下すのか…それは火を見るよりも明らかだ。信頼していたベンカジに裏切られ、頭に血が上っているようだな。


「この2人は何も知らないんだ…助けてやってくれ!」

リセクは母親と比べると冷静だ。だが、ドグラスにせよベンカジにせよ、そんな虫のいい話を飲む訳がない。


「今さら何をほざく。3人とも始末しろ!」

不快感が絶頂に達したのだろう…ドグラスは怒鳴りつけた。


「部屋が汚れる…放り出せ」

毒を食らわば皿まで。ベンカジは覚悟を決めたようだ。


「へいっ」

「おら、立てっ!」

主の指示を受け、連れてきたガタイのいいヤツらがリセクを立たせた。そうして庭に突き飛ばす。


それを見たドグラスの用心棒、あのガチムチ男がメイスを持って庭に出てきた。にやにやとした下卑た笑みを浮かべていやがる。人を殺すということを何とも思っていない顔だ。


「リセク、サーニャ…し、死ぬときはね、3人一緒だよ」

ここに来て、ようやく置かれている状況を理解したのだろう…カロリーナさんの声は震えている。それでもリセクは、ベンカジをキッと睨み付けている。サーニャは目に涙を浮かべているが、気丈に振る舞っている。


今だ!誰もがそう感じたこのタイミングで、もっとも早く動いたのはユリーシャだった。


「中に入れろ!」

「何だおめえらは…何しに来やがった!」

再び表の方が騒がしくなる。何やら押し問答をしているような…そんな雰囲気だ。庭にいるヤツらのぎろりとした殺気だった視線が、そちらに集まった。


一方で、俺達は誰も注目していない。原因が分かっているからだ。これはユリーシャがかけた幻聴の魔法。ご丁寧にも、みんなが見ている映像の端に『幻聴の魔法、準備完了』って表示してあるからね…誰もがそれを予測済みなんだ。


この絶好のチャンスを逃すようなヤツはいない。


ティアリスは一気に塀の上まで飛び上がった。それをシックスセンスで捉えていた俺も、ほとんど同時に飛び上がる。シンクロしているかのように合わせてきた俺に、ティアリスが嬉しそうな笑みを浮かべている。まだまだ余裕たっぷりですな。


塀の上まで一足飛びで上がると、俺達は塀を足場に流水の動方激流で一気に距離を詰める!


ダダンッ!


爆音のような激しい音を立て、俺とティアリスは3人を挟み込むように着地した。表の騒動に気を取られていた連中が、俺達の突然の出現に気が付く。あっ!という声が聞こえてきそうな驚きの表情を浮かべていやがる。いいね、その表情。


だが、もう手遅れだぜ…俺は既に人質3人をアモルファスで覆っているからな。この状況の激変には、カロリーナさんですら言葉を失っているね。


そこで大人しくしていろ。すべてが片付けば出してやるからよ…ていうかカロリーナさんもサーニャも大概にしてほしい。


俺が内心でそんな小言をしている間にも事態は動いている。3人を覆ったアモルファスには無数のクズのつるが巻き付き、アモルファスは塀の方に吹っ飛んでいった。


よく見ると、アモルファスからは動物の足のようなものが生えている。それで移動をアシストしているようだ。ちゃんと止まれるのか心配になるような吹っ飛び方だったが、そこはユリーシャが作ったアモルファス。塀の前できっちりと着地してくれた。それに合わせて俺達も一先ず引く…そして、ここからが見せ場だ。


「おいおいっ!揃いやがったな、悪党ども!」

俺に一喝されてビビっているヤツもいれば、そうでもないヤツもいる。それはこなしてきた場数の違いだろう。


「何だお前は!」

怒気を孕んだ声で、ベンカジがこちらの素性を問うてきた。


「通りすがりの魔法戦士だよっ」

まともに答えるわきゃねえだろ。


「やれ…やってしまえ!」

小馬鹿にするような俺の答えに、ベンカジは堪忍袋の緒が切れたようだ。気が早いヤツだな。


「静かにしろい!静かによぉ…」

俺のターンは終わっちゃいねえ!天知る、地知る…俺が知るってヤツだぜ!ベンカジの命令で一斉に動き出しかけたヤツらも、動きが止まってしまった。


「お前らの悪行三昧も、どうやら年貢の納め時だなぁ…」

そこで俺はちらりと空を見やった。今宵も月が綺麗だ。


「空見りゃ折よく真如の月。背なに背負うた夜桜は、お前らにとっちゃあ…冥土の土産よ!」

決まった…やはり戦いの前はこうでなくては!

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