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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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動くベンカジ

俺が考え事に没頭している間に、カレンとフェリシアさんが腕を振るって少し早めの夕ご飯を作ってくれた。メニューはおにぎりと卵焼きに味噌汁だ。事に当たる前の定番料理。それが、俺達が置かれている状況を物語っている。


「いつ…動くと思いますか?」

隣に座ったユリーシャが、遠慮がちに聞いてきた。


「おそらく夜が更けてからだろうな…」

ユリーシャはこくりと頷き、続きを促した。


「リセクの裏切りは、ベンカジの予定になかったことだ。重大事だが、そのために他の予定をキャンセルするとは思えない」

だからこそ、俺達は少し早めの夕ご飯をいただいているのだ。俺の隣で上品にお味噌汁を飲むユリーシャも、納得したように頷いた。


ベンカジの思惑はともかく、俺達は着々と準備を整えている。この事件が終局に近付いていることは間違いない。だが、捕らわれたリセクをどう救出するのか…そこに明確な策はない。臨機応変にやっていくしかないだろう。


再び俺は一か八かの勝負に挑もうとしている。不安がないと言えば嘘になる…いや、不安しかない。人質の救出なんてことは、これまでにしたことがないからな。それに近いことはアインラスクでやったが…今回の件とは状況が随分と違う。どうすりゃいいんだ?だから、そこは臨機応変で…思考の堂々巡り、嫌になるね。


「大丈夫ですよ」

ユリーシャが俺の腕に手を置き、勇気づけてくれた。


そこに根拠なんてない。でも、不思議と大丈夫だろうという気持ちになってしまう。俺は思わずこくりと頷いてしまった。幸いなことに、誰にも見られていなかったようだ。それは本当によかったぜ…。


少し早めの夕ご飯を済ませ、ヤツらが動き出すのを今か今かと待ちわびる。待ってる時間ってヤツは長く感じるものだ。人によりけりだが、俺はどうってことはない。他の面子もそうだ。これならベンカジがいつ動いても問題なく対処できるだろう。


こちらの思惑なんて知ったこっちゃないだろうが、動きがあったのはそろそろ21時に差し掛かる頃だった。


マルバイユ商会からベンカジが出てきたのだ。もちろん、ベンカジだけではない。いつも付き添っている強面の男、それからリセクもいる。更にはガタイはいいがガラは悪そうなヤツが数人、そして…ヴァルキュリアとウォーダン。随分と待たせてくれたもんだぜ。


どこへ行こうとしているのか…それは分からんが、そこにはネコたんがいるんでね。しっかりと追跡させてもらおう。


おそらくヴァルキュリアとウォーダンは、ネコたんに気が付いているはずだ…それでもその存在を無視しているのは、俺達を誘っているからだろう。思えばサクリファスの時もそうだった。ならば、今日こそ決着をつけてやる。


コテージから出てきた俺達に呼応するように、ディサイドとセブラーが『ピーノリブロ』の2階の窓から飛び降りてきた。今は誰もいないし、落下スピード制御の魔法を使っているから大丈夫なんだけどさ…そこまでしなくてもいいと思うぞ。


「ザヤスとカティルが『ピーノリブロ』で待機しています。万が一に備えて叔父にも連絡しておきました」

さすがはディサイド、抜かりがないな。


「そうか…なら、行くぞ」

ヤツらがどこに向かっているのかは分からないが、俺達は家々を飛び越え、直線的に迫っていく。どうも郊外へ向かっているようだ。十分に近付いたところで、俺達は街道へと下り立った。


「どうやらアカテナンゴ商会の邸宅に向かっているようですね…」

ディサイドの見立てにセブラーも頷いた。パルシファルのことを熟知している2人が言うなら、間違いないだろう。


「なるほどな…」

俺は思わず不敵に笑ってしまった。ベンカジの考えが何となく分かるからだ。


ヤツはリセクの裏切りをドグラスに報告し、弁解させるつもりなんだ。それだけリセクのことを買っているのだろう。だが、リセクは既に後戻りができないところまで来ている。本人にもその自覚はあるはずだ。話し合いは決裂する。間違いなくそうなる。そこに救出のチャンスがある…と思う。そう信じて行動することにしよう。

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