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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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タリアの正体

今のような状況だと、下手に動くのは得策ではない…動きたいのは俺達ではなく、アイツらなんだからな。そして、坂道を転げ落ちるように、ミスは連鎖して起きるものだ。ヤツらが次のミスを犯したのは、それから3日後のことだった。


俺とアマユキは、いつものように花街で娼婦の物色をする。もちろん、それはただの振りだ。そういうことをしていても、誰も気にはしない。野郎共は娼婦に夢中だし、数少ない女性は足早に歩いているからね。


目立たないようにしながら、不可視の錫杖を飛ばしてタリアを探す…生きていれば、そろそろ出てきてもいい頃合いだ。そして、その読みは間違ってはいなかった。会員制の高級売春バーの一つ、『小料理屋サイサリス』からタリアが出てきたのだ。


「また来てくださいね」

タリアは恰幅のよさそうなおじさんに、適度なボディタッチをしながら見送っている。男の気を引くテクニックはさすがですね。おじさんは満更でもなさそうに帰っていった。


タリアにとって不運だったのは、彼女に気が付いたのが俺達だけではなかったということだ。その場をへべれけになったロアジスとパイロが通りかかり、物の見事に鉢合わせてしまったのだ。


「あぁー!どうなってんだお前?どこぞの従業員になったり娼婦になったり…忙しいじゃねえか」

上機嫌で、ヘラヘラと笑いながらパイロがタリアに突っ込んだ。


「どちら様ですか?人違いしないでくださいよ」

タリアとて、鉢合わせのリスクを考えていなかった訳ではない。


「いーーや間違いない!あん時の女だ」

だが、ロアジスに断定されてしまった。一瞬の接触だったはずだが…よく覚えていたな。


「お金があるようでしたら、お相手しますよ?」

タリアは艶かしい笑みとボディタッチで、パイロを誘惑しようとする。さすがは娼婦、窮地を切り抜ける手は一つではないのだ。


「そのお金がないの♪」

上機嫌極まるパイロは、両手をプラプラさせた。無い袖は振れないってね。


「じゃ、またね」

タリアはパイロを軽く突き飛ばし、この場を立ち去ってしまった。タリアにとっては不運な遭遇だったが、料金交渉が上手くいかなかったように見せかけたのはさすがだな。


「いや~、間違いないと思うんだけどな…なぁパイロ」

「うぅ、気持ちわる!」

ロアジスから同意を求められたものの、パイロは吐きそうになっている。どんだけ飲んだんだよ…。


「おぉ…勿体ない。こんな所で吐くな」

パイロはロアジスに肩を抱かれ、2人は人気の少ない方へふらふらと歩いていった。


タリアを追いかけるようなことはしなかったが、ロアジスは自分の見立てに自信があるようだった。事前にディサイドから何か聞いていたのかもしれない。まあ、あれだけ酔ってたら追いかけるなんて無理だろうが…。


一方のタリアは、この場から立ち去ったように見せかけて陰ながら2人の様子を窺っていた。


「うるさいハエだよ、まったく…」

憎々しげに吐き捨て、今度こそタリアはこの場を後にした。


ロアジスとパイロが悪目立ちしていたせいで、タリアは気が付かなかったようだ…この場にディサイドとセブラーがいたことにね。もちろん、2人はこのやり取りをしっかりと見ていた。ロアジスとパイロを上手く利用する…この策が上手く嵌ったな。


翌日、俺達は『ピーノリブロ』で今後の対応を練ることになった。シェリルさんが用意してくれた個室は、以前にも使ったことがある。温かみのある照明と、シンプルで落ち着いた雰囲気が特徴の部屋だ。


そこに俺とアマユキ、それからディサイドとセブラーが顔を合わせた。他の面子は、不可視の錫杖を使ってここの様子を見ている。便利なもんだ。


「このタイミングでタリアが姿を現したのは、ヤツらがほとぼりが冷めたと判断したからだろう。それで…どうする?」

こういう場合、俺はいつも聞かれてばかりだ。たまには聞いてやってもいいだろう。


「昨晩のことで、ヤツらが再び警戒するかもしれません。少しやり方を変えて情報収集をするつもりです」

ディサイドの言い分は納得できるものだ。少し戸惑っているけどね。


「タリアがヤツらのアンテナになっている可能性もあるからな…」

ここは再び油断させたいところだ。


「どうするの?」

「カティルに花街へ行ってもらいます」

アマユキの問いに、ディサイドから意外な答えが返ってきた。


「カティルに?大丈夫なのか?」

可愛いのは確かだが、それだけでは勤まらないぞ。


「厨房を取り仕切っているイメージが強いですが、彼女は花街で情報収集もしているので。大丈夫です」

これまでカティルは時々姿が見えないことがあった。そういう裏があったのなら納得である。若かりし頃のリアルナさんみたいなもんだな。


「そういえばぁ、ショウさんにも伝えておいてほしいとカティルから頼まれてました」

セブラーが、意味深な笑みを浮かべながら言った。


「なんだ?」

気になるじゃねえか。


「我慢できなくなったら言ってね!とのことで」

セブラーも、そしてディサイドも笑っている。アマユキからは白い目で見られてしまった。コテージにいるユリーシャ達も、ゴミを見るような目で俺を見ているに違いない。


こういうとばっちりを受けるのはいつものこと。だから、特に気にしてはいない。でも、俺が言ったんじゃあないぞ。そこは声を大にして言いたいところだ。

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