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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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宴席の場で

こういう時、ベンカジのような立場の人間は個室を利用するものだ。そして、『モンヴェール』には、ベンカジの希望を満たす個室もちゃんとある。


そこは個室というよりかは大部屋だ。シンプルでありながらシックで落ち着いた空間は、センスの良さしか感じない。さすがですね。


この部屋には、小さいながらもステージがある。このステージで踊るのは、3人の楽団を引き連れた踊りおばさん…じゃなくて踊り子のカロリーナさんである。


よく言えば煌びやかな衣装、悪く言えば露出度の高い派手な衣装を身にまとったカロリーナさんが、セクシーな踊りを披露する。流れるようなメロディーに合わせて腰を細かく動かす踊りは、ベリーダンスのようだ。その露出度の高い派手な衣装が、躍りに華やかさを演出しているね。


みんながやんややんやの喝采を上げる中、リセクの表情は引きつっている。その気持ちは分からんでもない。職業に貴賤はないが、それはそれ、これはこれなのだ。


踊り終わったカロリーナさんには、惜しみない拍手が送られる。この場にはいない俺達も、コテージで拍手をしていた。それほどにカロリーナさんの踊りは素晴らしかったのだ。


「いやいやいや…さすがはカロリーナさんだ。躍らせたらパルシファルで一番じゃないのかい?」

ベンカジからカロリーナさんへ、最大級の賛辞が送られる。


「そんな…私はもう踊り子から半ば引退している身ですから」

こういう場合の常として、カロリーナさんは謙遜した。


「お前もそう思うだろう?」

ベンカジに話を振られ、リセクは硬い表情で頷いた。何というか…雰囲気が悪いですね。


「ああ…さあさあ、みんなのおもてなしを頼むよ」

ややもすると重い空気になりかけていたが、それを振り払うようにベンカジが接待を促した。『モンヴェール』の方々が接待を始める中、カロリーナさんはベンカジの隣にひざまずいた。


「旦那…リセクを今後とも、どうかよろしくお願いいたします」

リセクの硬い表情から何かを察したのだろうか…こちらの女の勘も鋭いな。


「ああ、任せておきなさい」

ベンカジは力強く請け負った。


「今、リセクには大事な仕事をやらせておりますから」

ちらりとリセクを見ながら、ベンカジは言い放った。


「はい…」

平静を装っている風ではあるが、リセクの顔は強張っている。


それでもベンカジの手前、あまり変な態度を取る訳にもいかない。リセクは他のヤツらと同じように酒を飲み、美味しそうな料理の数々に舌鼓を打った。そんなリセクを、カロリーナさんは心配げに見ている。


見ていると言えば、俺達もだ…もちろん、誰にも気付かれていないけどな。


「随分と無理をしているわね」

アマユキが苦笑しながらリセクを評した。まったくだ。


「ベンカジの策は失敗でしね」

ティアリスの言い分は分からんではないが、明らかに説明不足である。ユリーシャは小首を傾げてるよ。


「おそらくベンカジはリセクを懐柔するつもりだったんだろう。だが、それは失敗に終わったってことだな…」

これで納得できたようで、ユリーシャはこくこくと頷いた。


「でも、改めて脅すことはできましたよ~」

「そうだな…」

この場でわざわざ大事な仕事をやらせてる…なんて言ったのはそのためだろう。ほんわかしてても、ちゃんと見ているね。


「ですが…リセクの様子がおかしいというのがカロリーナさんにも伝わったのではないでしょうか…」

少し自信なさげではあるが、ユリーシャの言う通りだ。


「総合的に見ると、やはり失敗だな」

最後はカレンがきっちりとまとめてくれた。ありがとうございます。


俺達はリセクのことをよく知っている訳ではない。でも、見れば分かる…アイツは根っからの悪党じゃあない。リセクは今、良心の呵責に苛まれているのだろう。


だが、それは誰にも言えないことだ。それでも誰かに…もっと言えば身近な人に、気付いてほしかったのではないか…。だから、サビ残なんかしたんだ。だから、宴席の雰囲気を悪くするような真似をしたんだ。


それは計算してやっている訳ではないはずだ。それでもサーニャもカロリーナさんも気付いてしまった。気付いたからには必ず行動に移す。この綻びが膠着した事態を動かすかもしれないな…無理して楽しんでいるリセクを見ながら、俺はある種の手応えを感じていた。

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