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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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花街の表と裏

もちろん、何も見つけることができなかった訳ではない。まずはいい感じに酔っぱらっているロアジスとパイロ。これはまあ予想通りである。この2人は売春バーが好みらしいので、俺にとっては好都合だ。中を不可視の錫杖で確認できるからね。もっともタリアを発見することはできなかったが…。


それからディサイドとセブラー。こちらは酔っ払いコンビと違って、あまり目立たないようにしている。タリアを探しているから当たり前か…。


これで役者が揃った訳だ。あとは本命のタリアを待つばかりだが…この夜、タリアが姿を現すことはなかった。ここまでだな。


「あんなことがあったばかりだから…警戒しているんでしょうね」

コテージへの帰り道、パッション溢れる花街とは打って変わって静けさに支配されたパルシファルの街を歩きながら、アマユキが今晩を振り返った。


「或いはしばらく姿を隠すように言われているのかもしれないな…」

どちらにせよ持久戦だ。


「明日からどうするの?」

「やることは変わらないさ…そのうちほとぼりが覚めたと思って出てくるはずだ」

アマユキはこくりと頷いた。


花街は男の欲望を満たす場所であると同時に、男の性質を熟知した女が悪事に加担する場所でもあるのだ。ここは表と裏が混ざり合う世界。光輝く世界だからこそ影も濃くなるってことなんだろう。だが、どんなに影が濃くても必ず見つけ出してやる…首を洗って待ってろよ!


翌日、予想通りに動きがあった。これまでとは違い、強面の男がリセクを指南しているのだ。


昨日、あんな衝撃的なことがあったばかりなのに、今日のマルバイユはいつもと変わらず通常運転だ。商会としての業務を止める訳にはいかないし、そもそもレンナーの葬儀にはマルバイユの関係者も出席している。それは分かっているが、そこにある種の冷たさを感じてしまうね。


それを感じているのかどうかは分からないが、今日のリセクは作業があまり捗ってはいないようだ。ただ単に勝手が違うからかもしれないが…それが分かるのは、フェリシアさんしかいない。


「リセクのやっていることは…やっぱり裏帳簿か?」

俺の問いに、フェリシアさんはこくこくと頷いた。


「これは間違いないですね~。ダラカニのヒノキのことも、バッチリ書かれてますよ~」

「そうか…」

お墨付きを得られると、そこからベンカジの思惑も見えてくる。


タリアとの過ちという弱味を握り、それを梃子にリセクに裏帳簿を書かせる。いざとなったら、ベンカジはすべての罪をリセクに着せるつもりなんだ。それが分からない訳でもないだろうに…リセク、お前はどうするつもりだ?


結局、リセクはすべての作業を終わらせることができなかった。


「今日の仕事は今日の内に済ませておかないと駄目だ」

強面の男は、渋い表情でリセクに注文をつけた。


「分かっています。これ以上、商会に迷惑をかけるつもりはありません。残りは帰ってから済ませます」

サビ残か…リセクの今の立場を考えると仕方がないかもしれんね。


リセクが家路につく頃、俺とアマユキは再び花街へ向かった。ネコたんは気付かれないようにリセクの後をつける。ユリーシャ達は花街の状況と、家に帰ったリセクの様子を、どちらも観察できる訳だ。もちろん、俺もね。ネコたんを改良しておいて正解だったな。


家に帰ったリセクは、いつも通りに過ごしている。俺達は今日もタリアを見つけることができずに撤収だ。そして、サーニャが寝静まるのを待って、リセクはやり残した仕事に取り掛かった。わざわざ待ったのは、サーニャに気を使っているんだろう…。


「これは大変だな…」

見ているだけでげんなりとしてしまうぜ。


「睡眠時間が削られまくりでし…」

まったくだ。ティアリスもこのやり方には苦笑している。


「サーニャに心配をかけないようにしているのでしょうが…ずっと気付かれずに済むとは思えません」

「そうだな…」

これはユリーシャの言う通りだ。


こんなことを続けていれば、リセクの心身は必ず不調に陥るだろう。上手く隠し通そうとしても、サーニャに気付かれるのは時間の問題だ。この読みは間違っていないはず…だから、ここはじっくりと待つことにしよう。

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