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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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消された男

「その不愉快な男、いつまでここにいさせるつもりだ?」

ドグラスは虫けらでも見るような目でリセクを見ている。


「も、申し訳ありません…リセク、お前は戻っていなさい。後のことは私とドグラスさんで話をつけるから…」

「はい…」

退席するように求められ、リセクは奥の応接室を後にした。


部屋に戻ったリセクの顔は青ざめ、茫然自失の体である。あの一夜の過ちがとんでもない事態を招いたことに、悔やんでも悔やみきれない思いを抱えているに違いない。


自分のことで精一杯だったのだろう…部屋にレンナーがいないことにも気付いていないようだ。しばらくしてようやくそのことに気が付いたリセクは、怪訝そうに辺りを見回した。


「レンナー?」

不審に思って呼びかけるが、答える者はいない。


あの男のことだ。また向こう見ずなことをしているんだろう。それにしても、どこへ行きやがった?まさかな…。


リセクは仕事に取りかかろうとするが、いなくなってしまったレンナーのことが気がかりなのか…まったく手につかない。そこへ再び強面の男がやって来た。


「リセク…ちょっといいか」

「はい…」

またしても呼び出され、リセクはげんなりしている。一昨日の件はタリアに上手く嵌められた結果だが、身から出た錆でもある。仕方がないだろう。


2人は邸宅を出ると、離れにある倉庫へ向かった。倉庫の入り口で待ち受けていたのは…ウォーダン。ここで出てくるとはね。それだけではない。


2人と入れ替わるように倉庫から出てきたヴァルキュリアが、ネコたんを一瞥した。そして、ゆっくりとネコたんに近付いてくる。どうやら俺達に見られたくないようだな…。


姿が見えなくなったレンナー、倉庫に連れていかれたリセク…2人のことは気になるが、今は動く時ではない。撤退だ。


コテージに戻ってきたネコたんを、ユリーシャが労った。傍から見ると黒猫を可愛がる女の子だが、実際はゴーレムの整備をする魔法使いである。人は見かけによらないね。


どうやら異常はなかったようで、ユリーシャはネコたんから杖を取り出した。黒猫の背中から杖が出てくるというのは、なかなかの超常現象ですね…。


それだけではない。ネコたんはその姿を大きな風呂敷のように変え、ユリーシャに覆い被さった。アモルファスゴーレムとして、ユリーシャの着ているPMDと一体化したのだ…出てくる時も衝撃的だったが、戻る時も衝撃的だよな。


「少し早いが…昼にするか?」

それには誰も異を唱えなかった。


ヤツらの動きが分からない以上、ここで待っていても仕方がない。『ピーノリブロ』に行けば何かが分かるという訳でもないが、何が起きても大丈夫なように準備をしておくべきだろう。


いつものように『ピーノリブロ』で昼食をとり、その後は何をするでもなく時間を潰す。リセクとレンナー…2人のことは気がかりだが、俺以外の面子はそれを忘れているかのように、食後のデザートのことで盛り上がっている。確かにシフォンケーキもチョコレートタルトも美味しかったけどさ…ちょっと盛り上がりすぎじゃないか?


俺達と同じようにディサイドとザヤス、それからカティルも寛いでいる。こちらは新商品のアジのフライについて、激論を交わしているようだ。食後のデザートやアジのフライに興味がない訳ではないが…そこまで盛り上がれない俺は、何とはなしに壁際の棚を見ることにした。


どうやら展示されているクマの木彫り人形に、新作が加わったようだ。まるで人のように丸太に座り、両手でシャケを持って食べている。誰もがほっこりする愛嬌のある顔をしているね。


「そろそろ…ネコたんを邸宅に戻してもいいのではないでしょうか…?」

俺が棚に展示されているあれこれに見入られているので、遠慮がちにユリーシャが尋ねてきた。


「そうだな…」

確かにもう大丈夫だろう。再び姿を現したネコたんが、『ピーノリブロ』から出ていこうとした…その時だった。セブラーが血相を変えて、『ピーノリブロ』に飛び込んできたのだ。


「旦那!それからぁ、ショウさんも。たいへんなことが!」

「どうした?」

ディサイドが真剣極まる表情で答える。


疾走してここまでやって来たのだろう…息が切れているセブラーに、カティルが厨房から水を持ってきてくれた。セブラーはそれを一気に飲み干すと、衝撃的な事実を告げた。


「レンナーが…自殺しやした」

「なんだと!確かなのか?」

アジのフライについての激論の勢いそのままに、ディサイドがセブラーに詰め寄る。セブラーは激しく首肯した。


「すぐに向かうぞ!」

ついさっきまでアジのフライで盛り上がっていたとは思えないが…感心している場合じゃない。


「アマユキ、ティアリス…一緒に来てくれ」

ディサイド達だけで行かせる訳にはいかない。俺は2人の一位武官に声を掛けた。


マルバイユの邸宅には、ヴァルキュリアとウォーダンがいる。ヤツらがディサイド達を消す可能性も否定はできない。だが、アマユキとティアリスにおまけで俺までいれば、そんな選択はできないはずだ。


我ながらこの対応は完璧だぜ…密かにほくそ笑んでいると、思いもよらない事態が起こってしまった。


「私も行きます」

ユ、ユリーシャ君?いったい何を言っているんだい?


「いや、それは…」

突き詰めると俺達は部外者だ。そんなヤツらが大勢でマルバイユの邸宅へ行くのは、さすがに不自然だろう。それに…あそこにはレンナーの遺体がある。できればユリーシャには見せたくない。


この状況に助け舟を出してくれたのは、カレンだった。


「私達は離れた所で待機しておこう。それなら問題はないはずだ」

さすがはカレン。俺の思惑もユリーシャの希望も、きっちりと適う解決策を出してくれた。これで決まりだ。急いでマルバイユの邸宅へ向かおう。

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