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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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計画通りに…

その日も朝から雨だった。いつものようにネコたんをマルバイユの邸宅に行かせたが…タリアの姿が見えない。いよいよ動くつもりか?


だが、肝心のリセクは今日も邸宅でいつも通りに仕事をこなしている。タリアがいないことを訝しく思っているようだが、そのことを誰かに聞くようなことはしない。リセクにはサーニャがいるからね…タリアの存在なんぞ、所詮はその程度でしかないのだ。


結局タリアが邸宅に姿を現すことはなく、今日も特に何事もなく一日の業務が終わってしまった。タリアが何を企んでいるにせよ、それは上手くいっていないように見える…今のところはな。


夕暮れ時には雨は止み、リセクは家路についた。でも、今は帰らない方がいいと思うぜ…俺がその場にいれば、間違いなくそうアドバイスをしただろう。カロリーナさんが来ているからだ。


家まであと少しの所で、リセクもそのことに気が付いた。足を止めたリセクの表情が暗くなる。すぐには帰ろうとしない…その気持ちはよく分かる。仕方なく、リセクは物陰から2人の様子を窺うことになった。


カロリーナさんは新品の傘を持ってきていた。もちろん、ただの傘ではない。傘の持ち手は普通の傘のように曲がってはいないし、そこにはライオンのような動物が彫られている。傘の生地も無地ではなく、白と黒のストライプだ。


使い手を選ぶ傘だな…こう言っては何だが、リセクには似合いそうにない。しかし、カロリーナさんはこの白黒ストライプ傘を自信満々にサーニャに見せびらかしながら言った。


「どうだい?この傘は」

サーニャは何とも言えない表情をしている。そりゃそうなるでしょうね…。


「何もさ、破れかかった傘なんか使う必要はないじゃないか…リセクはねえ、あのマルバイユ商会の3位支配人なんだよ」

相変わらず見栄っ張りだな、カロリーナさんは。傘なんて少々破れていても問題なく使えるぞ。


「他の人よりも、給料をたくさん貰っていることだしさ。ねぇ…あんまり貧相なことをさせないでおくれよ」

百歩譲ってその気持ちは分からんでもないが、せめて普通の傘にしてくれ。


「いい稼ぎだからこそ、ちゃんと蓄えてそのうち家を買おうって…2人で思案してるんです」

ちゃんと考えているね、サーニャは。あんなに嫌み全開で言われると、話を聞こうという気にはなれんだろうが。


「お義母さんみたいに宵越しの銭を持たないようなやり方じゃあ、末は野垂れ死にですよ?」

嫌みには嫌みを。それぐらいはできないと、リセクの嫁なんてやってられない。


「の、野垂れ死にとは…何てこと言うんだい!お前は」

痛いところを突かれたカロリーナさん、言葉が出てこないようだ。ざまあみろ。


「だって本当のことじゃないですか」

まったくその通りです。


「本当…よくそんなこと言えるね。お前さんはねえ、リセクが大事じゃないのかい!」

「大事です!」

もちろん、2人は気付いていない…一連のやり取りをリセクが覗いていたことを。リセクは大きなため息をつき、踵を返してこの場を後にした。


だが、そのリセクも気付いていないようだ。自分が邸宅を出てからずっとタリアにつけられていることにはな。リセクがどこに行こうとしているのかは分からないが、タリアにとってはおあつらえ向きの展開だ。


しばらく当てもなくさ迷っていたリセクは、やがて一軒の居酒屋へと入っていった。運河沿いの、風流でありながら庶民的な居酒屋だ。どうやら一杯ひっかけて気晴らしをするようだな。


ホクホクのジャーマンポテトをおつまみにして、ビールをちびちび飲む。いいですね~。俺も一緒に飲みたいぜ。そう思っているのは俺だけではない…タリアもだ。もっともアイツの場合は、目的があってのことだが…。


「おじさん!あたしにもビールちょうだい」

「はいよ!」

注文の仕方が手慣れているな…行きつけのお店なのかもしれんね。


「一緒に飲みましょ、リセクさん」

誰にも、何の違和感も感じさせずに、タリアは相席してしまった。


「タリア…どうしてここに?」

当然の疑問。リセクはまだ酔ってはいないようだ。


「いいじゃないですか、そんなこと…」

適当にはぐらかしながらタリアはお酌をする。嫁と姑の不愉快な諍いを見てきた後だからな…お酌を受けるリセクもどこか嬉しそうだ。


「私のこと…嫌いですか?」

何度かお酌をした後で、タリアは不安げに聞いた。


「そんなことは…ないよ」

リセクは少しろれつが回らなくなってきている。それはビールのせいだけではない。


「マルバイユ商会のような大きな商会には、たくさんの従業員がいるけど…あたし、ずっとリセクさんのことが気になっていたんです」

「それは…嬉しいけど、私には…」

まだ理性があるようだが、それは時間の問題だ。


「分かってます…だから、飲んでください」

タリアはさらにビールを勧める。それはただのビールではない…睡眠薬を盛ってあるビールだ。居酒屋のオヤジにかなりの額を払い、共謀して事に当たっているのだ。上手いことやりやがるぜ。


当然、リセクはそんな裏があることに気が付かない。アイツは素人だからな…仕方がない。何度もお酌をしてもらっているうちに、リセクは前後不覚になってしまった。


「さあ、行きましょう」

リセクは気だるげに頷き、タリアに促されるままに席を立った。妖艶な笑みを浮かべるタリアは、計画の成功を確信しているようだ。タリアが会計を済ませ、2人は居酒屋から出ていった。向かった先は…一見すると普通の民家のようなホテルだ。


ここまでだな…他人の情事を覗き見する趣味はない。ティアリスはブーブー言っていたが、俺は観察を打ち切った。狙い通り、タリアはリセクの弱みを握った。今後の展開に要注目だ。

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