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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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様々な繋がり

「それにしても、こんな所で同郷の人と会うなんてね」

コテージに戻り、カレンが淹れてくれた紅茶で一息つくと、アマユキが少し嬉しそうに話し始めた。その気持ちはよく分かる。


「あの伝説の男の話は、さすがに眉唾物なんだろ?」

作り話にしても、もう少しまともな話にすればいいのに。


「どこまでが本当の話なのかは分からないけど…伝説の男が実在していたのは確かよ」

さいですか…とんでもない男の逸話に、色々と尾ひれがついたんだろうな。


「それはともかく、フェティアとサディキ…ゼレケのことをよく知る2人から話を聞けたことで、それなりに収穫はあったな」

コテージに戻れば、いつものカレンの口調だ。さっきまでがアレだったから、少し戸惑ってしまうね。


「でも、ベンカジを追い詰めることができるような決定的な証言は得られなかったでし」

そうなんだよな…マルバイユ商会の秘密、それが分からないことには先に進めない。


「この件にもあの人が関わっていることは間違いないですが…私達はこのまま突き進んでも良いのでしょうか?」

ユリーシャは言葉を濁したが、その念頭に置かれているのはサディキの忠告だろう。


「今更後には引けない」

俺は自分に言い聞かせるように答えた。それには誰も何も言わなかった。


「きっとディサイドさん達もお土産を持って帰ってきてくれますよ~」

重苦しい雰囲気を振り払うようなフェリシアさんのほんわかぶりは、こういう時にはありがたい。みんなウンウンと頷いているし。


そのディサイド達がコテージを訪ねてくるのに、そんなに時間は掛からなかった。


「会計庁にマルバイユ商会のことを問い合わせたところ、内密に調査をしていることを認めました。どうやら従業員の中に情報提供者がいるようですね…」

リビングに通されるとすぐに、ディサイドは話を始めた。


せっかくフェリシアさんが紅茶を淹れてくれたんだから、少しはそれを味わえばいいのに…フェリシアさんはニコニコしているが、その笑顔は間違いなくブラックなヤツだ。


「この男がその情報提供者、レンナーです」

ディサイドから手渡された写実画には、少し気の弱そうな男が描かれている。


「それから、ベンカジがよく訪れる『モンヴェール』という高級レストランがあるのですが…そこの1番人気の踊り子がカロリーナさんです」

「そうか…」

俺は紅茶を一口飲んでから答えた。


そこの繋がりは納得できるものだ。カロリーナさんの息子リセクは有能な男なのだろうが、それだけで3位支配人にまで上がれるとは思えない。


ディサイドのお土産は以上のようだ。ならば、こちらからもお土産を…俺はフェティアとサディキから聞いた話を簡潔に伝えた。もっともサディキの忠告は敢えて伏せた。それは…伝えなくてもいいことだ。


「あの女が関わっているとなると…何としても解決しなくてはなりませんね」

ピリッとした緊張感がディサイド達の間にも流れた。この事件の先にあの女がいるかもしれない…その可能性がある以上、事件の解決は必須だ。でも、あの女のことだ。今回も姿を現さずに終わりそうだが。


「ディサイド達は情報提供者のレンナーをあたってくれ。俺達はカロリーナさんから話を聞いてみる」

これが最適手のはずだ。


「分かりましたっ、失礼します」

クールな中にもアツい思いを隠せないディサイドは、紅茶をくいっと飲んでしまった。右に倣ってセブラーとザヤスも紅茶を一気に飲み干してしまう。そうして3人はコテージを出ていった。


後に残された俺達は、ゆっくりと紅茶を堪能することにした。そうでもしなければ、フェリシアさんが爆発しちまうぜ…。


もちろん、黙々と紅茶を飲む訳ではない。昨日今日と色んなことがあった。話題は必然的にそのことになってしまう。


「エスタンシア商会のヒナステラにもファルネーゼ商会のサンガロにもアリバイはありましたが…それを隠れ蓑にして犯罪を行った、という可能性もあるのではないですか?」

なかなか鋭いですな、ユリーシャ君。


「どう思う?」

こういう時、カレンは必ず俺にパスをする。


「その考えはアリと言えばアリだ。だが、違うだろうな」

これには確信がある。もちろん、マルバイユ商会にヴァルキュリアがいるから…ではない。


「ヴァルキュリアがいるから…ですか?」

浅はかだね、ユリーシャ君。


「マルバイユ商会の秘密、それはベンカジにとっては絶対に知られてはならない秘密だったんだろう。もし、誰かにそれを知られたら、そいつを生かしておく訳にはいかない…そんな秘密なんだ。ならばそんなことが起こった時には誰かに任せてそれで終わり、とはしないはずだ」

俺は自信を持ってそう答えた。


殺したという報告だけして、実は生かしていました…などということになったら、話が余計にややこしくなる。そういうことだよ、ユリーシャ君。


「つまり…ベンカジはゼレケの殺害現場にいた、ということですか?」

察しがいいね、ユリーシャ君。


「ああ…そういうことならアイツにアリバイがなくても納得できる」

ユリーシャはこくこくと頷いた。


「でもさ…対応の仕方にあんなに差が出るとは思わなかったけどね」

「そうだな…」

アマユキの指摘に、俺は苦笑してしまった。


ヒナステラもサンガロも、共に捜査に協力的だった。隠し事などしていないと考えていいだろう。ゼレケにゆすられた際の対応の仕方はどうかと思うが…。


「ベンカジのあの自信、情報が漏れているのかもしれないでしねぇ…」

もしリークされているのなら、厄介だな…。


「虚勢を張っているだけなのかもしれませんよ~」

内心はびくびくしているのかもしれないね。内通者などいないと信じたいが、今の段階ではどちらとも言えない。そのことを念頭に置きつつ、やっていくしかないだろう。

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