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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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頭がキノコ

ファルネーゼ商会との面会は16時からだ。ひとまず『ピーノリブロ』に戻り、時間を潰すことにしよう。


「ショウさんはどう思いますか?」

紅茶セットをいただきながら、ディサイドが俺にヒナステラの印象を聞いてきた。


「断定はできないが…白だろうな」

「ですね」

ディサイドも納得しているようだ…見習いという立場ではあるが、ジルニトラの目として動いているらしき男だ。洞察力はさすがといったところか。


「ファルネーゼ商会もゼレケに脅迫されていると思いますか?」

「ほぼ間違いなくそうだろうな…」

あのメモに名があったということは、そういうことなんだろう。


ファルネーゼ商会も、ここからそう遠くない位置にある。俺達は16時前に着くように『ピーノリブロ』を発った。


ファルネーゼはキノコを扱っているが、その拠点ではキノコの販売はしていないようだ。そこはエスタンシア商会とは違うね。一見すると普通の邸宅にしか見えないが、邸宅の中にはこの商会がキノコを扱っていることがよく分かるものが飾られている。


例えば絵だ。キノコが生えている様子や断面がよく分かる絵、誰もが見入ってしまうような幻想的なキノコの絵…キノコを主題にした実に様々な絵が飾られている。


絵だけではない。柄の部分に顔が描かれ手足が付けられた可愛いキノコ、味のある木の枝に生えた美しいガラスのキノコ…キノコの置物も、キノコの絵に負けず劣らずびっしりと並べられている。キノコ愛に溢れているね。


1階にある応接室は、エスタンシア商会と同じようなデザインだ。もちろん、ここにもさりげなくキノコの置物が置かれている。さすがですね…ファルネーゼ商会の矜持を感じるぜ。もうキノコ大好き商会でいいんじゃないか?その応接室では、中肉中背の壮年の男が待ち受けていた。


「ファルネーゼ商会の当主サンガロです。本日は『キノコの館』に足を運んでいただき、ありがとうございます」

ここって…『キノコの館』なんだ。まあ…うん、いいんじゃないかな。


キノコ愛に溢れているところはともかく、サンガロの対応の仕方は物腰柔らかだ。パルシファルの魔法戦士と事を荒立てたくはないという思いの表れだろう。


「急な面会に快く応じてくれたことに感謝する。私は東部方面副団長ジルニトラの代理でやってきたディサイド。これは私の従者のセブラー。それから今回の事件に協力してくれることになったショウとアマユキだ」

ディサイドも、サンガロの頭がキノコなことまでは知らなかったようだ。苦笑しているね。


「今回の事件…とおっしゃいましたか?当方のキノコに何か問題があったのでしょうか?」

いいえ、キノコに問題はありません。


「いや、キノコの件で来た訳ではない。実は九番街で雑貨屋をやっているゼレケが殺されたのだ。何か心当たりは?」

ディサイドはサンガロを安心させつつ、極々簡単に事件の説明をした。


「ゼレケが…ですか?どうしてそんなことに?」

どうやらサンガロもゼレケのことを知っているようだ。そして、ゼレケの死はこの男にとっても思いもよらないことだったようだな…。


「それはまだ分かっていない。ゼレケとはどういう関係だったんだ?」

ディサイドがそれを追求すると、サンガロは言いにくそうに話してくれた。


「実は…若い頃に賭け事にはまっておりまして…。自分のカネだけで遊んでいればよかったのですが…それだけでは満足できなくなり、お店のお金にまで手をつけてしまったのです」

そいつはヤバいな…はまっていたという表現で収まるようなものじゃあねえぞ。


「当時は父が当主を勤めていた時代でしたから、私の悪事はすぐにバレてしまいました。父は私を勘当するつもりでしたが、母の執り成しで私はこの商会に残ることができたのです…それからは身を粉にして働き、給料のほとんどを返済に充てました。5年ほどで完済し、今は商会の当主と父から受け継いだこの『キノコの館』の整備に尽力しております」

どうやらサンガロのお父さんも頭がキノコだったようだ。


「もしかして…その件でゼレケから脅されていたのか?」

親子共々アレなのはこの際どうでもいい。大事なのはゼレケとの関係だ。


「はい…1年ほど前から従業員にバラすと脅されておりました。身から出た錆ではあるのですが…」

やはりサンガロもゼレケから脅されていたようだ…しかも1年程前とはね。それはヒナステラと同時期だ。


「どれぐらいの額を要求されていたんだ?」

もちろん、ディサイドはそこを確認する。


「月に…5万リガです」

ここでも月に5万。ヒナステラからせしめる分と合わせると、俺の見習い時代の給料よりちょっと少ないぐらいだ。


「たいした額ではなかったので…特に相談などはいたしませんでした」

すでに完済していることを考えると、その対応には疑問が残るが…サンガロの気持ちもよく分かる。それはともかく、確認しておかなければならないことがある。


「昨晩はどこで何をしていた?」

ディサイドは何でもないことのように聞いた。


「昨日の夜はギルドの会合に出席しておりました。アルクニクス商会の呼びかけで、定期的に行われている会合です。思いのほか盛り上がってしまい、しかも生憎の雨でしたから…アルクニクスさんのご厚意で邸宅に泊めてもらいました」

どうやらアリバイはあるようだ。


置かれている状況がヒナステラとほとんど変わらないことを考えると、サンガロも白だろう。急な面会の要請に快く応じてくれたサンガロに礼を言い、俺達はファルネーゼ商会を後にした。

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