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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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裏の顔

いったん『ピーノリブロ』に戻ったものの、今の段階で俺達にできることは何もない。あんなことがあった後ということもあり、待っている間は特に何も話をしなかった。


話し合いたいことはあるが、ここでするのもね…ディサイドが戻ってくるまで適当に時間を潰すしかないだろう。待ち人がやって来たのは、お昼を過ぎた頃だった。


「エスタンシア商会とファルネーゼ商会については、今日にでも面会をしたいとのことでした。なのでエスタンシア商会は14時に、ファルネーゼ商会は16時に面会することにしました」

内密の話は1階ではできない。だから、俺達は2階の個室に移って会合をしている。


温かみのある照明と、シンプルで落ち着いた雰囲気が特徴の個室だ。シェリルさんは申し訳なさそうにしていたが、いい部屋だと思うぞ。それにしても、だ。


「随分と早いんだな…てっきり明日になると思っていたよ」

ちょっとばかし忙しくなりそうだ。


「私もそう思っていました。何かあるのかもしれませんね」

ディサイドの読みは正解だろう。


「マルバイユは明日か?」

「そうです。明日の昼過ぎになりました」

ここは予想通りのようだ。


ここからだとエスタンシア商会もファルネーゼ商会もそれほど離れてはいない。先方は詳しい事情を知らないから、みんなで行くのは悪手だろう。


「全員で行くと迷惑になるかもしれないな…俺とアマユキが同行するよ。ユリーシャ達はコテージで待機していてくれ」

「分かりました」

どうやらユリーシャも理解してくれたようだ。


そうなると、セブラーと合流してから出発だ。たいして待つこともなく、セブラーはやって来た。それでは行きますかね。


エスタンシア商会は、『ピーノリブロ』から歩いて5分といったところだ。商会の拠点は家具の販売もしているので、1階には様々な家具が所狭しと陳列されている。こういう時でなければ、じっくりと見てみたいところだね。


ディサイドが用件を告げると、俺達は2階にある応接室へ通された。重厚感がありながらシャープな印象の家具、座り心地が良さそうなソファ。家具を扱っているだけあって、応接室のレイアウトはさすがである。そこでは初老の男性が待ち受けていた。


「エスタンシア商会の会長ヒナステラです。どうぞお見知りおきください」

さすがは商会を率いている男だな…柔らかで丁寧な物言いはまったく不快感を感じさせない。


「東部方面副団長ジルニトラの代理でやってきたディサイドだ。これは私の従者のセブラー。それから今回の事件に協力してくれることになったショウとアマユキだ」

これに対して、ディサイドの物言いは丁寧な中にもある種の横柄さがある。なめられる訳にはいかないからね。


「今回の事件…と言われましたか?何かあったのですか?」

ヒナステラは明らかに動揺している。何か身に覚えがありそうな感じにしか見えないが、この状況で動揺しないヤツなんてそうはいないだろう。どちらなのか…そこはきっちりと見極めなくてはならない。


「九番街で雑貨屋をやっているゼレケが殺された。何か心当たりは?」

ディサイドが今回の事件について、極々簡単な説明をした。


「ゼレケが…ですか?いったいなぜ?」

ヒナステラは口を滑らせたな…本人にそのつもりはなかったのかもしれないが、その返答はゼレケと何らかの関わり合いがあったと認めているようなものだ。もちろん、ディサイドもそれを見逃さない。


「ゼレケとはどういう関係だったんだ?」

ディサイドの追求にヒナステラは口ごもってしまう。だが、俺達はそこを曖昧なまま済ませるつもりはない。ヒナステラにもそれが分かっているのだろう…ぽつりぽつりと話し始めた。


「実は…若い頃に居酒屋でいざこざを起こしたことがありまして。その際に…人を傷つけてしまったのです。それで…色々と取り調べを受けまして…。罪は償ったのですが、その件をバラすとゼレケから脅されていたのです」

「今になってか?」

これには口を挟まずにはいられなかった。


「はい…折しも娘に結婚話が持ち上がっていた時でしたから…私どもといたしましても、事を荒立てたくはないという思いがありまして」

なるほどね。納得である。


「どれぐらいの額を、いつから要求されていたんだ?」

ディサイドがそこを確認する。


「1年ほど前から…月に5万リガです」

ヒナステラの返答に、俺達は顔を見合わせてしまった。


「たったのそれだけ?」

複雑な表情のディサイドは、おそらく俺と同じことに思い至ったのかもしれない。この5万リガという額…それは子供の小遣いに毛が生えたようなものだ。だが、問題はそこじゃない。


「はい…それだけです。たいした額ではなかったので、特に相談などはいたしませんでした」

娘さんにとって大事な時期であることを考えると、ヒナステラの対応は妥当なものだろう。それでも確認しておかなければならないことがある。


「昨夜はどこで何をしていた?」

「昨日の夜は…私どもの家族、それからお相手のご家族と一緒に晩餐会を開いておりました。『アドーニス』というレストランです。思いのほか話が弾んでしまったので…そのまま宿泊いたしました」

どうやら嘘はついてなさそうだ。


アリバイがあるといっても、誰かを雇って殺させたという可能性はある。だが、そこまでのリスクを負う必要があるとは思えない。急な面会の要請に快く応じてくれたヒナステラに礼を言い、俺達はエスタンシア商会を後にした。

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