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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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運河の街

「このパルシファルは河口に造られた水上都市なのですよ」

パルシファルに上陸すると、早速ユリーシャがこの港湾都市のことを説明し始めた。


「同じように干拓して造った街なのに、アインラスクとはだいぶ違うな」

不可視の錫杖を使って空からこの街を眺めると、カレンの言っていたことがよく分かる。ここは街道の代わりに運河があるような街なのだ。


「パルシファルの運河はまるで環状の街道のように広がっていますから…それはアインラスクでは見られないものですね。空から見ると、この街は扇のように見えます。そして、扇の要にあたるのがパルシファルの始まりとなった古い港町です」

ユリーシャはこくこくと頷きながら言った。


確かにパルシファルの市街地は、外側へと同心円状に広がっているように見える。その市街地の間を運河が流れている。運河の街は伊達じゃないな。


「水路と水路の間に家が建っているように見えるぞ…」

これは決して誇張ではない。パルシファルの家々は運河に囲まれているのだ。


「そうですね。建物が林立する様はアインラスクと似ていますね。それはかつての港町が手狭になり、拡張した際に3本の運河が新しく掘られたことによるものです。運河を掘って出た大量の土を盛って土地を造成し、その上に家を築いたのですよ」

なるほどね…それなら納得だ。


「さらに外側に城壁の役割も果たす堤防と堀を巡らせ、その内側に造られた街が今のパルシファルなのです」

ここはアインラスクとよく似ているが、まったく違う考え方で造られた街と言ってもいいだろう。干拓して造った街にも色々あるのだ。


フェリシアさんの先導で、俺達はこのパルシファルで拠点とする宿泊施設へと向かった。その道中では、当たり前のように運河に沿う街道を通ることになる。


「これはアリレイナ運河。街を拡張する際に掘られた運河の一つです。この運河に架かる橋だけで14本もあるのですよ」

「この運河だけで?」

ちょっと多すぎやしませんか?思わず聞き返してしまったぜ…。


「そうです。正確な数字は分かりませんが、街全体では1300本ぐらいの橋が架かっていると言われています」

せんさんびゃくぅ?


多すぎだろ…とは思うものの、パルシファルでは中心部から円を描くように運河が何重にも張り巡らされている。総延長はどれぐらいあるんだろう…想像もできないな。そうなると橋が1300本ぐらいあっても妥当なのかもしれない。数えた人は大変だっただろうが。


それだけの橋があれば、実に色んな橋を目にすることになる。何の変哲もない桁橋もあれば、人力で巻き上げることができる木造の跳ね橋もある。それから、石を積み上げて造った眼鏡橋。運河沿いの街道は情緒に溢れているね。


「パルシファルの運河は、どこからでも荷揚げできるように造られています。各地から港湾広場に下ろされた様々な品物は、中型の荷物船に積まれて倉庫に運ばれますから…荷物船が停泊していても対面航行ができるように、十分な幅が取られているのですよ」

ユリーシャの説明を受け、俺は改めて運河に注目した。


運河の幅は25mはありそうだ。中型の荷物船の幅が6mぐらいだから、確かに十分だな。


これを見ると、アインラスクの運河とはまったく違う考え方で造られていることがよく分かる。アインラスクでは船の幅に合わせて運河を広くするのではなく、運河の幅に合わせて船を細長くしていた。この考え方の違いというヤツは面白いね。


様々な橋や行き交う荷物船、荷揚げする人夫。運河沿いの街道は興味深いことでいっぱいだ。


「お勉強もいいですけど、ちゃんとついてきてくださいね~」

思わず足を止めて見入ってしまいそうになる俺達を、フェリシアさんがほんわかと急かした。今日もにこやかなフェリシアさんだが、この笑顔は間違いなくブラックなヤツだ。見学は後に回すことにしよう。


パルシファルは運河だらけの街。建物が隙間なく林立するのは当たり前だ。そこら辺はアインラスクと似ているが、そんな中にもゆったりとした敷地を持つ建物はある。


アインラスクでも、ルアンザラーン商連合が入居している館などがそうだった。アレとは比べるまでもないが、フェリシアさんが案内してくれたのはそんな建物だった。


「ピーノリブロ…」

食堂と思しき建物の入り口にはおしゃれな木製看板が掲げられている。特に興味があった訳ではないが、俺は看板に書かれた名を読み上げた。


「そうです。今日からこの『ピーノリブロ』さんにお世話になりますよ~」

ほんわかさんが『ピーノリブロ』に入ると、中にはお客さんはもちろんのこと、お店の人すらいなかった。


「ごめんくださ~い」

ともすれば戸惑ってしまう状況だが、フェリシアさんはそれを気にも留めない。


「はいはい、いらっしゃい。あら…」

奥から出てきた人の好さそうな女将さんは、ユリーシャの顔を見てすべてを察したようだ。


「予約をしていたカレンですよ~」

本物のカレンが口を開くよりも先に、フェリシアさんがほんわかと用件を伝えた。カレンは苦笑してるね。


「お待ちしてましたよ。こちらへどうぞ」

女将さんの案内で、俺達は食堂のすぐ隣にあるコテージへ案内された。木をふんだんに使った、これぞコテージって感じの建物だ。


女将さんから鍵を受け取り、コテージの中に入ると、木のいい香りが俺達を出迎えてくれた。『ティート』の石造りのコテージも悪くなかったが、やはりコテージはこうじゃないとね。


まったりと寛ぎたいところだが、その前にやっておくことがある。ここに備えられているあれこれが、問題なく使えるかの確認だ。『ティート』の時と同じように、みんなで手分けして当たった。どうやら問題はないようだ。

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