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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第4章 パルシファルの嫁と姑

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山羊飼いの1日

「アルジャンナの織物は確かに素晴らしいが、この村の魅力はそれだけじゃあないんだ…よければ、山羊飼いの1日を見学してみないか?」

それは、夕食をとろうとレストランへ下りた時のことだ。『ベルドゥラ』へ食べに来ていたキプルトとばったり出会い、立ち話の最中でそんなことを言われたのだ。


「面白そうだな…見学させてもらうよ」

どのみち急ぎの用がある訳ではない。もう少しアルジャンナにとどまることになっても問題はないだろう。


「それじゃあ、明日の朝5時過ぎに迎えに行くよ」

ごっ…5時過ぎ!


「随分と早いんだな…」

「これぐらいは普通さ。明日は寝坊しないでおくれよ」

キプルトはにこやかに念を押してきた。今更なかったことにはできそうにない。明日は頑張って早起きしよう。


一番下っ端の俺が安請負したおかげで、ティアリスにはブーブー言われることになった…すまんな。とは言え、ユリーシャが前向きなこともあり、みんなで山羊飼いの1日を見学することになった。


翌朝、夜が明ける少し前に起きて手早く準備をし、キプルトが来るのをを待ち受ける。約束通りの5時過ぎに、キプルトは『ベルドゥラ』にやってきた。


「やあ、早かったね」

俺はそうでもないが、ティアリスは眠そうだ。それに対してキプルトは朗らかです。


「気合で早起きしたからな」

人間やれば早起きぐらいできるものである。


「それじゃあ行こうか!」

張り切って歩き始めたキプルトに率いられ、半分寝ているティアリスを含めて俺達はついていく。ヤギたちは村はずれの丘の斜面にいるようだ。


「昨日のうちにヤギを丘の上に追っているからね。まずはそれを谷底に移動させるんだ」

そう言いながら、キプルトは鳥の鳴き声のような指笛を鳴らした。


「ハウッ!ハウッ!」

それから昨日とは違う叫び声をあげた。そこにどのような意味があるのかは分からないが、ヤギたちは斜面をゆっくりと下りていく。


カラカラ、カラカララン


ヤギの首には鈴が付けられている。だから、一斉に動くと多くの鈴が鳴る。まるでキプルトが指揮をする演奏会のようだ。牧歌的とはこのことだね。でも、灌木が生い茂る斜面は、ヤギたちにとってあちこちにご馳走があるようなもの。何頭かのヤギが足を止め、葉を食べている。


「ハイーーヤッ!」

もっともキプルトは早く谷底に下りてほしいようで、お構いなしにヤギを追っていく。


「谷底には何があるんだ?」

確か小屋があったはずだが…あれは何だろう?


「搾乳小屋だよ」

なるほどね。それは斜面に造るのは難しそうだもんな…納得だ。


もともとヤギは山岳地帯に棲息していたと言われている。その名残だろう…ヤギたちは苦も無く斜面を下りていく。だが、人は同じようには下りられない。どうするんだろう?と思っていたら、キプルトは腕に付けているブレスレットを操作した。どうやら落下スピード制御の魔法が使える魔法具のようだ。なるほどね…ならば俺達もキプルトに倣って斜面を下りることにしよう。


「全体を把握しながらヤギたちと一緒に丘を下りるんだ」

街道に下り立ったキプルトは、再び鳥の鳴き声のような指笛を鳴らした。街道は丘に沿って曲がりくねるように敷設されている。いったん立ち止まって確認するには丁度いいかもな。


キプルトの指示のもと、ヤギたちは確実に丘を下りている。それでも、すべてのヤギが丘を下りるのに2時間弱はかかっただろう。谷底の小屋に着いた頃には、すっかり日は昇っていた。小屋では搾乳の手伝いと、この小屋の管理をしているという初老の男が待っていた。


「今日は山羊飼いの1日を見学してもらっているんだ」

興味深そうに俺達を見ている男にキプルトが声を掛けると、男はにこやかな笑顔を浮かべ、頷いてくれた。無口ではあるが、いい人そうだな。


「搾乳はどうやってするんだ?」

まさかとは思うが…手でするのか?それだととんでもなく時間が掛かるぞ。


「搾乳はゴーレムがしてくれるんだよ。ゲートを開けるとヤギ達が奥から順番に位置について餌を食べるんだ」

キプルトの言う通りにヤギ達は動いている。


「とても利口だからね…間違えることなんてないよ。ヤギが餌を食べている間にお乳をいただくのさ」

このゴーレムは今まで見てきたゴーレムとはまるで違う。これまで見てきたゴーレムは人型だったり馬型だったが、これは搾乳機って感じのゴーレムだ。


「200頭のヤギから乳を搾るには必須だよ」

確かに。手でやっていたらいつまでたっても終わりそうにない。これはキプルトにとって、必要不可欠なゴーレムだな。


「空気圧を利用して乳を搾っているようですね」

ゴーレムも魔法具の一つ。そして、魔法具のことならユリーシャだ。


「なるほどな…」

簡易な作りだが、上手いこと作っているもんだ。


作業の合間に床にこぼれてしまったミルクは、ネコが頂戴しているようだ。キプルトはそれを慈しむように見守っている。


乳を搾り終えたヤギ達が小屋から出ていき、別のヤギ達が入ってきて餌を食べ始めた。キプルトと初老の男は、手分けして順番に搾乳機を取り付けていく。ヤギ達を追い、搾乳する…ここまでは一見するとのんびりした仕事に見えるが、動物が相手だからキプルトはほとんど休めない。山羊飼いの仕事は楽じゃないね。

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