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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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未熟なコンビ

すべての戦闘が俺達にとって有利に進んでいる訳でもない。上空ではこの草原を押しつぶそうとする濃青色の光と、それを押しとどめようとする新緑色の光が激しくせめぎ合っていた。


これはユリーシャとあの老魔法使いの戦いだろう…ユリーシャの頭上には複雑な魔方陣が次々に生まれ上空へと消えていくが、どれほどの効果が上がっているのかはよく分からない。ユリーシャの表情を見る限りは、芳しいものではないような気がする。


この状況を打開すべくアマユキが老魔法使いに矢を放つが、それは老魔法使いに届く前に燃え尽きてしまった。これにはアマユキも渋い顔だ。だが、老魔法使いにも現状が厳しいことはよく分かっている。


「今夜はお主らの勝ちじゃの」

敗北を認めた老魔法使いの姿が、黒い霧のようなものに包まれた。


魔剣によると、それはタコの墨のようなもので害はないらしい。煙幕を張ったって訳か…霧が晴れた時、そこに老魔法使いの姿はなかった。どうやら撤退したようだな。バーンズ達と運命を共にするつもりはないってことか…確証はないが、老魔法使いはあの女の手下の可能性が高い。それは当然の判断だろう。


老魔法使いは撤退したものの、ヴァルキュリアはまだティアリスと激しくやり合っている。このまま手ぶらで帰るって訳にはいかないよな…丁度いい。こいつだけでも倒してやるぜ!


俺は流水の動方・激流で草原を疾走し、ヴァルキュリアの背後に回り込んだ。お前は1対1のつもりなんだろうがな…甘いぜ。昔の偉い人が言っていたように、戦いは数なんだよ!クックック…食らいやがれ!


ズドドドドドドッッッ!


俺は周囲に展開したダンシングワンズから光の矢をヴァルキュリアに乱れ撃った。ヴァルキュリアの強烈な突きをバックステップで躱したティアリスは、すでに射線上にはいない。決まった!そう思った次の瞬間だった。ヴァルキュリアは華麗な足捌きですべての光の矢を躱してみせた。


はっ?予想だにしなかった結果に、俺は唖然としてしまった。後ろに目ん玉でもついてんのかよ!


だが、ヴァルキュリアも自分が置かれている状況が分からない程に愚かではない。あの老魔法使いと同じような黒い霧をまとい、この場から撤退しようとする。


逃がすかっ!再び俺はダンシングワンズの一斉射撃で、そしてユリーシャもすべてのワンズを射出して光の矢でヴァルキュリアを撃つ!だが…駄目だな。手応えがない。ヴァルキュリアも老魔法使いと同様に、この場から姿を消したようだ。


これ以上、あの2人を追うのはやめておいた方がいいだろう。ヤツらがどこに行ったにせよ、この仮初めの世界はあの老魔法使いが創ったもの。ここで戦うのは得策ではないし、元の世界で戦うのは論外だ。


となると、事後処理だな…すでにフェリシアさんはクズのつるで数人のゴロツキ共を縛り上げている。他のみんなもそれぞれの方法で、ぶっ倒れているゴロツキ共の捕縛にかかった。オーガの捕縛はユリーシャが束縛の魔法で対処しているようだ。


そんな中、ティアリスがにやにやとした笑みを浮かべながら俺に近付いてきた。目がちっとも笑ってないね…怖いですよ、ティアリスさん。


「さっきの攻撃は悪くなかった」

予想通りの裏ティアリスである。


「そ、そりゃそうよ。俺だって腕を上げているからな」

ついうっかりどもってしまったが、それでも俺は自画自賛した。


「なんで、タイミングを遅らせた?」

「それは…アレよアレ」

ティアリスの問いに対して、俺の返しはまったく答えになっておりません。


「余計な気を使うんじゃねえよ。お前の放ったちんけな光の矢なんぞ、すべて叩き落してやるからさ」

それだけ言い残すと、ティアリスはフェリシアさんのもとに駆け寄っていった。いつものように「でし!でし!」言いながら邪魔するつもりなんだろう。


みんなの作業を見つめながら、俺はティアリスに言われたことを反芻した。


カレンとアマユキがやっていたことを参考にした即興のコンビ攻撃。だが、あの2人のようには上手くできなかった。タイミングを僅かに遅らせたのは…結果としては失敗だったな。ティアリスを射線上から逃すためだったが、それはヴァルキュリアにも対応する時間を与えてしまったのだ。


だから、余裕で躱された…しかもこちらを見もせずにね。そんなとんでもないヤツと互角にやり合うんだから、ティアリスの強さがよく分かるってもんだぜ。


かつて俺はティアリスと戦い、引き分けたことがあった。半年ほど前の最終試験でのことだ。もちろん、それはティアリスが手加減してくれていたからだ。それでもその強さを肌で感じることができたのは収穫だった。


俺は間違いなくあの時よりも強くなった。日々の鍛錬、アインラスクでの経験…それらが大きな自信に繋がっている。だが、強くなればなる程、ティアリスの存在を遠くに感じてしまう…。


「もうじき元の世界に戻れますよ」

一通りの作業を終えたユリーシャが、気を利かせて話しかけてくれた。


「ん…分かった」

こんなことで落ち込んでなんかいられない…見てろよ!すぐに追いついてやるからな。


「ショウちゃんはサボっていたでし!」

「みんな疲れているのに…あれはないよね」

俺の密かな決意を知ってか知らずか…ティアリスとアマユキは、無慈悲なツッコミを入れてくる。お前ら、本当にしっかりと観察しているよな。


「は、早いとこ戻ろうぜ。モカップさんも心配しているだろうからな」

やはり今回も最後は決まらなかった…俺らしくていいけどさ。

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