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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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老魔法使いの策

「何をやってる、追えっ!」

ギルマの一言で、ゴロツキ共は弾かれたように動き始めた。すでに蔵を後にした黒猫ゴーレムを追って、ゴロツキ共が蔵から飛び出してくる。だが、ヤツらの足はそこでピタリと止まってしまった。俺達がいたからだ。


「隠れて上手くやっていたようだがな…そうは問屋が卸さねえぞ!」

後ろめたいことがあるヤツらだけあって、俺の一喝で怯んでしまいやがった。なら、さらに畳み掛けてやるぜ。


「ハハッ副団長面したその裏には、とぉんだ入れ墨が隠されていたとはな!」

お前の命運は今日尽きる…俺達が尽きさせる!


「くそぉ…たたっ斬れ!」

バーンズさんよ…そんなに焦んなよ。


「静かにしろぃ!静かに!埃が立つんだよぉ…」

俺のターンは終わっちゃいねえ!天知る、地知る…俺が知るってヤツだぜ!


「善と悪との二股街道…悪行三昧し放題。悪事に走るテメェらを、見逃す訳にはいかねえぞ!」

決まった…やはり戦いの前はこうでなくては!


俺が悦に浸っているにも拘わらず、魔剣は何やら警告を発している。どうしたのかね?魔剣君。その答えを聞くよりも先に、俺の視界が暗転した。これは…あの老魔法使いの仕業か!何をやりやがった?


暗転は一瞬で収まった。こけおどしか?いや、違うな…さっきまで俺達は蔵の前に陣取っていた。だが、今は見知らぬ草原にいる。どういうことだ?


『ここは仮設鏡界です』

なるほどね…それだけで大体のことは理解できた。これはユリーシャ邸の白の部屋に設置されていたライラリッジと似たようなものだ。


違いがあるとすれば、白の部屋のライラリッジが複雑な造りなのに対して、この草原はどこまでも同じ草原が続く単調な造りってことだろう。魔剣がここを仮設鏡界と評したからには、ここはあの老魔法使いが一時的に造り上げた鏡界なのだ。


そして、変わったのは世界だけではない。老魔法使いとヴァルキュリア。2人の目…いや、虹彩が金色に輝いていやがる。どういう原理でそんなことになるのかは分からないが、本性を現したようだな。


「どうしますか?解除することもできますが…」

「いや、このままでいい」

ユリーシャが耳打ちしてきたが、俺はその必要がないことを伝えた。


少なくともここで戦う限りは、現実世界に影響はないはずだ。つまりサクリファスの街中でとんでもない事態が起こる可能性もないということだ。アイツの手の内で戦うことになるのは不利なことだが、それでもこの方がいい。解除するのはアイツら全員をぶちのめしてからだ。


「心配せずとも5分後には元の世界に戻る」

それはゴロツキ共に言ったのか…それとも俺達に言ったのか…それは分からないが、どちらにせよ丁度いい。


「手出しは無用で」

ヴァルキュリアは老魔法使いに釘を刺すや否や、ティアリスに鋭い視線を向けた。そして、横へ飛ぶようにサイドステップをした。その動きに呼応して、ティアリスもぶっ飛んだサイドステップを決めてみせる。異次元な存在同士のとんでもない戦いになりそうだな…。


ヴァルキュリアはティアリスに任せるとして、残りはどうするか?ここはダスラー君のために、俺達が露払いをするべきだろう。


「カレンは俺と一緒にあの巨体のヤツらを仕留める。ユリーシャとフェリシアさんはゴロツキ共を、アマユキは臨機応変に…やるぞ!」

言うなり俺は流水の動方・激流で一気に巨体のヤツらの1人に迫る。この期に及んでフードを深く被る必要などない。ヤツらは剥ぎ取るようにフードを払い、その顔を露わにした。


粗野な風貌と頭には2本の鋭いツノ、威嚇するように開いた口から覗くのは犬歯などという生易しいものではない。まごうことなき牙だ。季節外れの手袋を引き裂くように破り捨てた手には、鋭利な刃のような禍々しい爪。


なるほどね…動きがなってないのも納得だ。圧倒的なパワーと天性の武器があれば、大抵の問題は解決できるだろう。こいつらはおそらくオーガだな…魔剣もそれを肯定してくれた。


となれば、真っ直ぐ突っ込んでいくのは愚策でしかない。普通ならね。だが、俺の場合は勝機あっての突撃。流水の動方・激流を使い、とんでもない勢いで突っ込んでくる俺に対して、オーガの1人が手にした棍棒をフルスイングで薙ぎ払った。


ガツッ!


オーガの棍棒と俺の魔剣が激突し、俺はまるで逆再生でもしているかのように吹っ飛ばされた。


端から見ると、何やってんの?としか思われないだろう…だが、俺は激突よりも一瞬早く、逆方向に流水の動方・激流で飛んでいる。さらに激突の角度も調整済み。その結果として、見事なセンター返しが生まれたのだ。


意図して生じさせたこの状況で、俺はオーガとしっかり正対し、周囲にすべてのダンシングワンズを展開している。実戦で使うのは初めてだがな、おあつらえ向きの状況だろ!ダンシングワンズの一斉射撃、食らいやがれ!


ズドドドドドドッッッ!


12本のダンシングワンズと俺自身が放ったすべての光の矢がオーガに突き刺さり、糸が切れた人形のようにオーガはぶっ倒れた。それでもまだ息があるんだから、そのタフさはたいしたもんだ。


だが、ヤツはもう戦えまい…まずは1人!とは言え、こんな大味な戦い方が通じるのは最初だけだ。ここからは理に適った戦い方で倒していくことにしよう。


味方の1人がいきなりやられたにも拘わらず、オーガ共の戦意はまったく衰えていない。次のオーガが振り回す棍棒を躱し、受け流し、また躱す。


こういう相手の攻撃を受け止めることは悪手。上手くいなすことが重要だ。それは流水の動方を完全に使いこなしている俺にとっては、苦もないこと。ただただ力任せに振り回される棍棒は、何の脅威にもならない。


何度目かの攻撃を受け流した際に、流水の動方・急流でオーガの視界から一瞬だけ消えてやった。すぐにヤツは俺を見つけ、棍棒を振り上げる。


バヂッバヂッバズン!


だが、それが振り下ろされるよりも先に、俺が射出した3本のダンシングワンズから放たれた光の矢がオーガを撃った。


すべての光の矢をオーガの後頭部にぶつけるとは、魔剣もえぐいことをやるよな。そこはオーガと言えども急所なのか、ガックリと片膝をついてしまう。その隙を見逃してやるほど俺は甘くない。ヤツの背後に回り込むと、更なる一撃を後頭部に叩き込んでやった。


ガツンッ!


これでこいつも瀕死の重傷だ。さてと…別にノルマって訳ではないが、2人を倒したからな。最低限の仕事はできたはずだ。カレンはどうしてる?

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