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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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侵入

ゼーリックの屋敷の門は、何人をも拒むように固く閉ざされている。普通に考えれば侵入はかなり難しいだろう…だが、俺はそこに問題を感じていなかった。


最後に門をくぐったのは、あの老魔法使いだ。入った後にしっかりと閉められた門に、老魔法使いは魔法をかけていた。


「簡単には開けられんようにの」

そう言われると、施錠の魔法をかけてくれたと思うだろう。


「ありがとうございやす」

だから、あの腰巾着も礼を言った。だが、実際にかけた魔法は、条件を満たせば発動する解錠の魔法だ。しかも、静寂の魔法とセットでね…念には念を入れているな。


他のヤツらはともかく、あの2人は俺達に急襲してほしいのだろう。それがあの女の指示ということか…そこまでの利害が一致しているのなら、乗ってやるさ。


ルゼットゴーレムが門に近付くと、まるで迎え入れるかのように門はひとりでに開いた。易々と侵入したルゼットゴーレムは、物陰へと身を潜めた。それを見て、俺達は門のすぐ近くまで移動した。


ヤツらは今、屋敷の方ではなく離れにある蔵の方にいるようだ。内部にはほとんど物が置かれていない。あの腰巾着以外は全員が中に入っているな…腰巾着は外で見張りだ。こんな所で何をするんだ?と思っていたら、ゴロツキ共の一人が床にある隠し扉を開けた。


内部には金貨や銀貨を納めた木箱がぎっしりだ。カネ、カネ、カネ…どれぐらいあるのか想像できないほどの大金がそこにある。これは間違いなくゼーリックがアコギな商売で儲けた汚いカネだ。


「こりゃあ豪勢な宝の山だ…」

地下に降りていったゴロツキの一人がおどけてみせた。


「早いとこ掘り出すんだ」

上に残ったヤツが急かした。どうやらこのカネをどこかに運ぶようだな…。


「へい」

地下に降りていったヤツらも、上に残っているヤツらも、粛々と作業に取り掛かった。誰も無駄口を叩かない。次から次へと大金が運び出されていく。その内の一つをバーンズが開け、中の金貨を手に取り満足げに頷いた。


「いくら努力したところで平民の出では副団長までがせいぜいよ。それを思い知った時から、儂はカネに生きることにしたのさ」

バーンズも、何の理由もなく歪んでいった訳ではないようだ。だからと言って、擁護なんてできないが。


「善人面したアホウ共には一生かかっても稼げんだろうよ、フハハハハ!」

今だけ得意になっておけ、お前の命運は今日尽きる。


「そのアホウ共も、ゼーリックを刺し殺したのがヴァルキュリア殿とは…ねえ、バーンズ様」

「ああ、しかも偽物のゼーリックをな」

ここに来て、ギルマとバーンズが事件の種明かしをしてくれた。


「まったくですぜ」

「身代わりとも知らずに、フハハハハ!」

バーンズの野郎はこれ以上ないほどに上機嫌である。


やはりと言うべきか…手を下したのは槍女だった。それにしてもヴァルキュリアとはね。あまり詳しくはないが、それは北欧神話に出てくる戦乙女の名だったはずだ。どおりでヤバいはずだぜ…。


それはともかく、色んなことが分かった。そろそろあの2人以外のヤツらにも、気付いてもらっていいだろう。では、どうするか?ここは考えどころだが、ルゼットゴーレムがそれを上手く解決してくれた。


パキッ!


ルゼットゴーレムが枝を踏んづけたのだ。踏まれた枝は乾いた音を立てた。木箱を運び出すことに夢中になっている中のヤツらは、その音に気付いていない。


だが、外で見張りをしている腰巾着はしっかりとその音を聞きつけ、そちらに鋭い視線を送った。しばらくジッと音のした方を見ていた腰巾着だが、肩をすくめて視線を切った…と同時に音もなく腰巾着は持ち場を離れ、影から影へと素早く移動し、ルゼットゴーレムが隠れているオブジェへとたどり着いた。あの腰巾着、できるな!


立体を複雑に組み合わせた衝立のようなオブジェを挟んで、ルゼットゴーレムはさらに蔵に近付くタイミングを、腰巾着はルゼットゴーレムを捕らえるタイミングを計る。意を決したルゼットゴーレムが動き出そうとした、その時だった。


腰巾着が手にした小剣を、まったく無駄のない動きでルゼットゴーレムの首筋に押し当てた。驚きのあまり、ルゼットゴーレムは硬直してしまう。


「へへっ…来な」

下卑た笑みを浮かべた腰巾着が、ルゼットゴーレムを引きずるように連れ去っていった。


その様を不可視の錫杖で観察している俺は、思わずにんまりとしてしまった。ここまでは上手くいっている…出来すぎなぐらいだ。


「ルゼットゴーレムはヤツらの手に落ちたぞ」

俺はその事実を簡潔に伝えた。


「それなら私達も動きましょうか」

気が付くとアマユキは門をくぐり、敷地へ侵入していた。相変わらず気配を感じさせないが、今日はいつもより凄みを感じる。アマユキに続いて俺達も門をくぐった。ここからは鉢巻きを締めてかかるぜ…。

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