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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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予想外の事態

ヤツらを急襲する前にやることがある。サクリファスの魔法戦士、ダスラー君との合流だ。手筈通りにダスラー君の家に向かうと、そこはまったく明かりが灯っていないように真っ暗だった。まるで寝静まっているかのようだ。


だが、そうではないことは不可視の錫杖を使えばすぐに分かる。そこがダスラー君のお気に入りの場所なのだろう…今日も裏庭の見える部屋で、俺達が来るのを待っている。こんな時間だから、部屋の明かりもかなり暗くしているようだ。もちろん、ダスラー君もグラウさんも準備をしっかりと整えている。


「待たせたな…」

勝手知ったるなんとやらで裏庭から入り、俺は2人に声を掛けた。


「大丈夫です。すぐに向かいましょう」

こんな時間にも拘わらず、ダスラー君は意気軒昂である。さすがだな。この期に及んで余計な確認は必要ないだろう…それでも必要な情報は共有しておくべきだ。


「来たのはギルマとバーンズだけじゃない…全身を黒衣で被っている巨体のヤツが4人と槍使いの女と老魔法使いも一緒だ。槍使いはそこのティアリスが相手をする。こう見えて俺達の中では一番強いからな」

その上で誰が誰をやるのか…そこをはっきりさせておく必要がある。


「頼もしいですね」

チラリとティアリスを見たダスラー君は、妙に嬉しそうだ。ティアリスは黙っていれば可愛いからね。でも、節操がなくないか?


「お前はどうする?」

聞かずとも分かっているが、それでも聞いておかなければならない。


「バーンズは私に任せてください」

でしょうね。


「分かった…任せたぞ」

バーンズも相当な使い手のように見える。でも、ここはダスラー君を信じるしかないだろう。


アインラスクの時でもそうだったが、こういう時は家々を飛び越え、一直線に現場に向かうもの。ダスラー君の家からゼーリックの屋敷まで、ほんの数分で到着だ。ここで俺達は、ユリーシャが呼び寄せていたミリッサゴーレムとも合流した。


「気にするな。これは只のゴーレムだ」

ミリッサゴーレムに不審げな眼差しを向けるダスラー君とグラウさんに、俺は簡潔に説明してやった。


「これが、ゴーレム…」

ダスラー君もグラウさんも、目を見張っている。その気持ちはよく分かる。


この間、ギルマはゴロツキ共の労をねぎらい、バーンズはあの老魔法使いと何やら話し込んでいた。そういえば、未だにゼーリックの姿が見えないな。ここに至ってもなお姿を現さないとなると…バラバラになっていたパズルが一気に組み上がるように、俺はある仮説に思い至った。それは矛盾がなく、真実であるように思える。あとは証拠だな…身ぐるみ剥いででも、確かめる必要があるだろう。


それはともかく、急襲のタイミングはどうしたものか?ヤツらが何かに注目せざるを得ない時を狙いたいところだが…そんな都合がいい状況が簡単に訪れる訳がない。さて、どうしたもんかね…俺達はゼーリックの屋敷から少し離れた物陰から様子を窺う。そんな俺達の前に予想外の人物が姿を現した…ルゼットだ。


「は?」

この事態をまったく予想していなかった俺は、力の抜けるような間抜けな声を出してしまった。


「ショウ、行くわよ!」

それでもいち早く対応したのはアマユキだ。さすがは一位武官…などと感心している場合じゃねえ!


まったく音を立てずにルゼットに近付くアマユキと、なるべく音を立てずに忍び寄る俺。ルゼットはこっそりと観察しているつもりなのだろう…でも、それは俺の目から見てもバレバレである。


集中して屋敷を探っているルゼットは、俺達の接近にまったく気が付いていない。これでは驚かせてしまい、その際にほぼ間違いなく声を上げられることになる…そうならなかったとしても、ここでああだこうだと言い合うことは悪手。速やかに排除する必要がある。どうする?


この難題に、俺はすぐさま策を思いついた。アインラスクでアリューシャを連れ去ったあの偽ゲオルク、あいつのやり方だ。


俺が背後に立つ瞬間まで、ルゼットは俺達に気が付かなかった。くるりとこちらを振り向くのと、俺が眠りの魔法をかけたのはまったくの同時。目の前で倒れそうになるルゼットの倒れ方を読み、その体をそっと抱き留めた。


すぐさまアマユキが猿ぐつわを噛ませ、俺はルゼットをお姫様抱っこしてみんなの所に戻った。やれやれ…ほっと一安心だぜ。


「何でお姫様抱っこなの?」

みんなの所に戻ると、開口一番でアマユキに突っ込まれてしまった。ユリーシャもジト目である。


「成り行き上だ」

あの場では仕方がないだろう…。


「まあ、それは置いといてだ。なぜここにいるのか?それを聞いてみよう」

話が脱線しそうになるのを、カレンが防いでくれた。それにはみんなが頷いた。


「う…」

アマユキがルゼットを揺さぶると、微かな呻き声を上げてルゼットは目を覚ました。


彼女の目に飛び込んできたのは、顔見知りの俺と見知らぬ女の子達。ダスラー君とグラウさんは彼女を刺激しかねないという判断からか、少し離れた所から様子を見ている。ルゼットはキョトンとしているね。


「大声は出さないでくれ…場所が場所だからな」

唯一の顔見知りの俺にそう言われ、ルゼットはこくこくと頷いた。これなら大丈夫だろう…アマユキもそう判断し、ルゼットの猿ぐつわを外してやった。

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