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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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分かったこと、分からないこと

今日も一日が終わり、俺達はコテージでカレンが淹れてくれた紅茶とレモンケーキを楽しみながら会合をすることにした。


レモンの味が濃く、果肉感もしっかりと感じられるレモンケーキは文句なしに美味しい。口の中いっぱいに広がる甘酸っぱさは、これからやってくる夏にぴったりなケーキだ。


「上手に淹れるものねぇ…もしもの時にはウチに来ればいいわ。大歓迎よ」

カレンの紅茶を初めて飲むモカップさんは感心し、引き抜きまでしようとしている。


「ありがとう」

それに対して、カレンはクールに礼を言った。


「和むのはそれぐらいにしてだな…何か分かったか?」

俺はモカップさんに報告を求めた。


「まずはギルマですが…従者とならず者達の元締めの、二股稼業をしています。色々と悪い噂のある男のようですね」

ここにはユリーシャがいるので、モカップさんは当然ユリーシャに対して報告をします。


「10年前のカサラギ商会の事件では、ギルマとその手下が現場に踏み込み、ルゼットの母親を亭主殺しの犯人として捕まえています」

「確か…その事件を裁いたのはバーンズでしたね…」

視線をあちこちに彷徨わせながら、ユリーシャが呟いた。


ゼーリックが起こした事件で、ギルマが無実の人に濡れ衣を着せ、バーンズが裁く。不愉快な話ではあるが、上手くできている。それは認めざるを得ない。


「はい。それから偽者のゼーリック殺しの時にも、ライフィス殺害の時にも、真っ先に現場に駆け付けたのはギルマとその手下、それからバーンズの指示で動いたサクリファスの魔法戦士です」

モカップさんが突き止めた事実が明白に示唆していることがある。


「どうやら見えてきたな…この事件の全容が」

俺は不敵な笑みを浮かべながら言い放った。これには誰もが頷いた。


10年前の事件とこの2週間少々の間に起きた2つの事件。すべての事件にあの3人が関わっている。細部の若干の違いは、バーンズの立場の違いとあの女が関わっていることによるものだろう。やはり原点に戻って正解だったぜ…首を洗って待ってろよ!


だが、完全に読み切れている訳でもない。それがまったく姿を見せないゼーリックだ。あの女の意向を受け、アルクニクス商会が匿っているのだろうか?その可能性はなくはないが…それにしたってこんなに完璧に隠せるものか?どこかでボロが出てもおかしくなさそうだが、今のところそんなミスはまったくない。ああ…それから、あの時感じた違和感。アレも気になるな…。


「話は変わるが…ルゼットはどうする?」

思考の沼にどっぷりはまっていた俺を、カレンの一言が現実に引き戻した。


「そう…だな…」

考え事をしている最中にそんなことを言われてもね…急に切り替えるのは難しいが、それでも分かっていることがある。この世界は、魔法なんてものがある世界なのに、神様なんていない。つまりリュスギナはルゼットを助けない…助けようがない。


「このままだとゼーリックの屋敷に行きかねないわね…」

アマユキの危惧は…まず間違いなく当たりだな。あの様子だと、屋敷のことを知れば必ず探りに行くだろう。


「呪いの儀式ぐらいで済ませてくれればいいのでしが…」

それぐらいだと何も問題はないが…そういう訳にはいきそうにない。


「もうしばらく様子を見るしかないのでしょうか?」

ユリーシャがおずおずと尋ねた。


「概ねそれで構わないが、やり方は変えたい。俺達は魔法樹の健康診断に戻る」

アマユキ、カレン、それからティアリスは俺の真意をすぐに読み取り、一つ頷いた。


「ゼーリックに、事件を調べている者はもういないと思わせるためですか?」

ユリーシャも勘がよくなってきたね。


「そうだ。ヤツらに事件のほとぼりが冷めたと思わせ、あの屋敷に集まるように仕向ける。そこを俺達が叩く」

俺は静かな口調の中にも熱い思いをたぎらせて宣言した。ここからだ…ここからが終わりの始まりだ。


「それで…ルゼットちゃんはどうしますか~?」

フェリシアさんは今日も変わらずほんわかです。


「お願いできますか?」

ユリーシャがモカップさんに頼んだ。


「お任せください。万全の体制で臨みます」

モカップさんにとっては汚名返上のチャンスだ。静かな熱を帯びているのが伝わってくる。


「それとは別に、ゼーリックの屋敷にも張り付かせておく必要がある。ヤツらに動きがあれば、すぐに分かるようにな」

俺はそれを敢えてユリーシャに対して言った。


モカップさんをはじめとしたサクリファスに潜伏している魔法戦士を信用していない訳ではない。だが、ゼーリックのもとには得体の知れないヤツがいる…こいつもまるで姿が見えない。そんなヤツに対抗するには、ユリーシャの魔法しかないだろう。


「私の杖を使うのが最適かと…」

ユリーシャの出した答えは、魔剣の兄弟とでも言うべき杖を使うというものだ。それが最適手だろうな…。


「その杖、誰に持たせる?」

杖はあくまでも道具だ。


「アモルファスゴーレムに持たせます」

アモルファス…何だそれは?怪訝に思う俺の目の前で、ユリーシャの着ているPMDから剥がれるようにアモルファスゴーレムが姿を現した。そいつは瞬く間にライトニングカレンへと姿を変える。


このライトニングカレンはアインラスクでも見たことがある。あの時はフィギュアのように小さくなっていたが、あれから色々と改良されたようだ。


ライトニングカレンを初めて見るモカップさんは、さすがに驚いている。俺もこんな登場の仕方をするとは思わなくて、ビックリしてしまった。それはともかく、言っておかなければならないことがある。


「ちょっと派手過ぎやしないか?」

実際、それはちょっとどころじゃない程に派手です。


「そうですね…ライトニングスパークは脱がせることにします」

ユリーシャはちょっと残念そうだ。ネタでやっていると信じたいが。


「これはカレン以外にはなれないのか?」

俺達6人がコテージに泊まっていることは、間違いなくバレているはずだ。


「もちろん、なれますよ。誰がいいですか?」

「そうだな…」

そう言われると困ってしまう。


「まあ、それは置いといてだ…ゴーレムって便利だな」

こんなに便利なら、わざわざレガルディアの魔法戦士が変装する必要はないんじゃないか?


「このゴーレムは魔剣の技術を応用して作られています。他のゴーレムには、そのような機能はないですよ」

どうやら俺が浅はかだったようだ。よくよく考えれば、ユリーシャ邸に配置されているゴーレムも人間とはかけ離れているもんな。

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