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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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やはりこの事件にも…

俺達が『ティート』に戻ると、すでにライフィス殺害の報はここにも届いていた。ユリーシャ達はもちろんのこと、この店の店員や常連客を装っているモカップさんにエミリア、それからカルネイロも沈痛な表情を浮かべている。いつもは軽い感じのマルケサも、ガックリと落ち込んでいる。


まるで通夜のような雰囲気の中、俺達は特に何を話すでもなく夕食をとり、『ティート』を後にした。ライフィスの一件は、おいそれと話せるようなことではない。コテージで話すべきことだろう。


だから、俺達はそこで待っているべきだ。重苦しい会合になりそうだが、避けては通れないことだからな…そして、迎えたいつもの刻限に、モカップさんはやって来た。


「今日のことは私の判断ミスでした。誠に申し訳ございません」

開口一番、モカップさんは平謝りである。


「あなたのせいではありませんよ。あれは…誰にもどうしようもできないことでした。ですから、顔を上げてください。今日は本当にご苦労様でした」

ユリーシャの言う通りだ…あの時、最も近くにいたのは俺達だった。にも拘らず、暗殺者が接近していることにすら、気が付かなかったんだからな。


「はい…」

顔を上げたモカップさんだが、それでもその表情は優れない。今日、仕掛ける…その判断をしたのがモカップさんであることに、変わりはないからだ。


「よく分からないでしねぇ…あんなことができるのなら、今日じゃなくてもよかったのに」

その疑問は当然の疑問であると同時に、モカップさんを気遣ってのものだ。今日じゃなくても結果は変わらなかった。それは間違いない。


「ショウはどう思いますか?」

ユリーシャ、それは無茶振り過ぎだぜ。


「…ライフィスを殺ったヤツが、ゼーリックにとっての切り札であることは間違いないだろう。だけど…何か理由があって、いつでも使える訳ではないのかもしれないな…」

それでも俺は何とか答えてやった。困った時の俺頼みにも困ったものである。


「確かなことはライフィスと偽者のゼーリックを殺した者は同一人物、ということでしょうね…2人は共に心臓を一突きにされていましたから。違いがあるとすれば凶器と思しき小剣が残されていたかどうかです」

そこはカレンが捕捉してくれた。ユリーシャもこくこくと頷いている。


「あの小剣、残していたらダスラーが必ず手に取ると分かってやってるわね」

アマユキは面白くなさそうに言った。暗殺者の接近に気が付かなかったことは、彼女にとって屈辱的なことなのだろう。


「ダスラーさんのことをよく分かってますね~」

フェリシアさんはいつものようにほんわかです。


「そうだな…ダスラーは偽ゼーリック殺害の時も遺留品を探していた。それがアイツのやり方なんだろう。だが、今回はそれを上手く利用されてしまったな…」

或いはグラウさんが残っていれば、もう少し慎重に対処してくれたのかもしれない。後の祭りだが…。


「しかし、その策が上手くいくにはあの場に最初に来るのがダスラーだと分かっていなければなりません」

ユリーシャの指摘はまさにその通り。これはアイツらにとって、おあつらえ向きの展開だ。あの暗殺者のことも含めて考えると、誰かさんが陰で糸を引いているのは疑いの余地がない。


「今回の一件、間違いなくあの人が関わっています」

一同にピリッとした緊張感が走った。


「あの人…というのは赤い髪の女のことですよね?」

モカップさんも、俺達がなぜここにいるのかは知っている。それでも確認せざるを得ない。赤い髪の女はレガルディアの魔法戦士なら誰もが追っているが、その情報は極めて少ないからな…。


「そうです」

「あの女には未来を予知する力があるのですか?」

簡潔に肯定したユリーシャに、モカップさんはさらに質問をした。


「それは私にもよく分かりません…ですが、私達は今回のような都合の良すぎる偶然をアインラスクでも経験しています」

未来を予知できるのか…或いは人の行動を何らかの方法で操れるのか…それは分からないが、事態は常にあの女の思い通りに進んでいく。


「そうなると、あの暗殺者はあの女が用意した切り札なのかもしれないな」

だとすれば、ゼーリックが好きな時に使えないのも納得だ。


「厄介なヤツを用意してくれたものね」

アマユキがうんざりしたように言った。まったくだ。


「油断のできない相手ではあるが、さしあたってはゼーリックだろう…ヤツはどう動くと思う?」

カレンの言うことはもっともだ。あの暗殺者はあくまでも刺身のつま。本命はゼーリックだ。


「裁判の結果次第で変わってくるでし!でも、ダスラー君はルゼットの後をウッキウキでつけてハァハァしてたからヤバいかもしれないでしね♪」

ティアリスのヤツめ、これ以上ない程の笑顔を浮かべていやがる。でも、それは事実なんだよな…アイツらもそれを掴んでいるはず。厄介なことになりやがったぜ。


「そうさせないために明後日の裁判でちゃんと証言しますよ~」

フェリシアさんはティアリスの頭をポンポンした。もっとバシバシ叩いてもいいと思う。


まあ、それはともかく…明後日の裁判が大きな山場になることは間違いない。ここでダスラー君に厳しい判決が出されると、一気に追い込まれることになるかもしれない。降って湧いたような天王山だが、ここは何とかして乗りきるしかないだろう。

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