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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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それぞれの心情

ずっと気になっていたライフィスの話は聞けた。今夜はこれで観察を終えてもいいと思うが、そうは問屋が卸さない。


ルゼットが、ライフィスの家の前で帰りを待っているのだ…もちろん、その後を追ってダスラー君とグラウさんもやって来ている。さらにユリーシャ達もこの場にいる。全員集合だな。


「俺達もそろそろ出るか…」

どのみち今日の観察は、あと少しで終わりになるはずだ。多少のフライングは構わないだろう。


「そうね。聞きたいことは聞けたし…それでいいと思うわ」

アマユキのお墨付きを得て、俺達はアパートを後にした。夜の涼やかな空気を堪能しながら少しばかり歩くと、そこにはダスラー君とグラウさんがいる。


「とりあえず…あの2人を観察しとくか?」

ユリーシャ達はダスラー君を避けてルゼットに近付いているので、俺達とはライフィスの家を挟んで正反対の位置にいる。ちょうどいいはずだ。


アマユキもそれが分かっているのだろう…こくこくと頷いた。もちろん、フェリシアさんもこくこくと頷く。こっちは絶対に分かっていないと思うけど、別にいいだろう。


「旦那…もうそろそろ帰りましょうよ」

さすがにもう終わりにした方がいいと思っているのか…グラウさんはダスラー君を説得しにかかった。


「いくら思いを募らせたって、所詮は叶わぬ恋なんだからさ…」

ストレートな物言いですね。


「…うるさい」

ダスラー君、返す言葉はそれしかありません。


「しょうがねぇなぁ…」

グラウさんもまだ付き合ってやるみたいだ。ご苦労様です。


「ルゼットちゃん…っていう名前だったよな。ルゼットちゃん、ルゼットちゃ~ん♪いい名前だな~」

その気持ちは分からんでもないが、本格的にキモいぞ…グラウさんですら引いちゃってるし。


そして、このタイミングで帰ってくるんだよな…ライフィスが。居酒屋からここまで…そんなに離れている訳ではないが、飲み過ぎと咳の発作で随分とかかったようだ。


本人は気が付いていないと思うが、さすがに放っておけないのだろう…エミリアとカルネイロが後をつけている。こちらもご苦労様である。


「ほら、旦那…やっぱり色男の登場だ」

帰ってきたライフィスを顎で指したグラウさんは、にんまりとほくそ笑んだ。ふらつきながら帰ってきたライフィスを見やるダスラー君は…さすがにショックを隠しきれないでいる。


「旦那…お先に」

これでダスラー君も諦めがつくだろう…そう判断したグラウさんは、ダスラー君を残し、帰っていった。一人残されたダスラー君は、それでも踏ん切りがつかないのか…2人の様子を窺うようだ。


「今度はあんたか…」

自分の帰りを待っていたルゼットに、ライフィスはうんざりしたように言った。


「勝手に…待たせてもらいました。あの…これを」

ルゼットはせめて薬だけでも手渡そうとする。


「どけっ!」

ライフィスはその好意を邪険に払いのけ、家に入ろうとした。だが、またしても咳の発作に襲われてしまう。


ゴホッゴホッ…ゴホーォッ!


このまま死んでしまうのではないかと心配になるような酷い咳をし、ライフィスはその場で膝を折ってしまった。口元に当てたハンカチには血が滲んでいる。マジで病院に行った方がいいと思うぞ。


「大丈夫ですか?しっかりしてください!大丈夫ですか…」

ルゼットは必死に声をかけた。この娘にできることはそれしかない。何とか立ち上がったライフィスだが、まともに歩くことも難しいようだ。ルゼットが肩を貸し、2人はふらつきながら家の中に入っていった。


一部始終を見守ったダスラー君は、何とも言えない表情をしている。ティアリスがまた大喜びしそうだ。人の嗜好をとやかく言うつもりはないが、それはさすがにどうかと思うぜ。


中に入ったライフィスは、早く横になりたかったのだろう…2階には上がらずに、入ってすぐの所にある入れ墨を彫る部屋の簡易なベッドに横たわった。たぶん深酒した時には面倒だからここで寝ているのだろう…ルゼットが部屋にあった布団を掛けてやる。


「体、大事にしてください。これ…咳によく効く薬なんです。少しだけど、手に入ったものだから」

ルゼットがサイドテーブルに薬を置いた。


「少し前に…ショウっていう人に言われたんです。自分を大切にしろって」

あの時のことはいい思い出なのか、ルゼットははにかんでいるね。


「昔、色々あって…それからは人なんか信じるもんか、何にも信じるもんかって思ってたけど…ちょっとばかし胸に応えちゃって」

いい話だなぁ…俺もグッときちゃったよ。


「それで俺にも親切のおすそ分けって訳か…うんざりだ。帰ってくれ」

ライフィスは獣が唸るように言い放った。まったく響かなかったようですね…。


「帰ってくれよっ」

逡巡しているルゼットに、ライフィスは苛立ちを露にした。これは爆発する前触れですよ…。


「帰れーー!!」

ライフィスは、それでも帰ろうとしないルゼットを起き上がりざまに怒鳴りつけた。ほらね。


ルゼットは頭を下げて家を出ていった。瞳からは今にも涙が零れそうだ…。ライフィスの過去に何があったのかは知らないが、これはどうかと思う。それでもルゼットはこんな恩知らずなヤツにも頭を下げるんだからな…よくできた人間だぜ。怒鳴られたショックが大きかったのか、引き戸を閉め忘れて帰っちゃったけど。


このままルゼットを1人で帰らせて、何かトラブルに巻き込まれると踏んだり蹴ったりだ。ここはユリーシャ達につけてもらうことにしよう。これで今日のところはお開きにしてほしいところだが、泣いて帰るルゼットをダスラー君も目撃している。これはもうひと悶着ありそうだな…。

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