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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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一石二鳥

いつものように俺達は『ティート』で夕食を済ませ、その際にカレン経由でモカップさんに連絡を取ってからコテージへ戻った。これまでは必要な時だけ来てもらっていたが、これからは毎日来てもらう方がいいかもしれない。やはり『ティート』の営業が終わってからコテージにやって来たモカップさんに、ルゼットから聞いた10年前の事件のことを話した。


「そんな裏があったなんて…街の噂なんて当てにならないものね」

まったくだ。


「改めて調べてもらえるか?」

「まかせといて」

俺の要請を、モカップさんは快諾した。頼りにしてるぜ。


「それから…ライフィスがギルマの手下に張り付かれた。不測の事態に備えて、誰か出してもらえないかな?」

未だに姿を見せないゼーリックに対抗するため、俺達もなるべく姿を隠す必要がある。ここはモカップさんに頼む方がいいだろう。


「それなら、カルネイロを行かせるわ」

あの学者風のおじさんか…他ならぬモカップさんの指命なら、大丈夫なはずだ。


「これまでと違って状況が動いてきた。できれば明日から毎日ここに来てもらいたいんだが…」

「問題ないわ」

モカップさんは何もかも引き受けてくれる。助かるね。


今日のところはこれでお開きだが、俺は気になっていることがあって、ユリーシャの部屋を訪ねることにした。


「どうか…されましたか?」

こんな時間に俺が部屋を訪ねてきたもんだから、仄かに顔が赤らんでいる。相変わらず想像力豊かだね。


「今日のことなんだが…」

あの時の一部始終は、ユリーシャ達も不可視の錫杖で観察済みである。いちいち説明をしなくてもいいのは便利なんだが、アレを見たユリーシャが何も気にしていない訳がない。


「もちろん、気にしてます…でも、理解もしています。だから…ショウが来てくれて嬉しいです」

どうやら訪ねたのは正解だったようだ。


「おかげで…カレンに当たらなくても済みそうです」

ユリーシャは少しバツの悪そうな顔で告白した。その手を使わせることなく済ますことができて良かったよ。


しばらくの間、俺とユリーシャは他愛もない話を楽しんだ。ライラリッジにいた頃は、『ラナンエルシェル』での夕食で毎日のようにしていたことだ。この旅が始まってからは、その習慣はなくなっていた。ユリーシャが不満を口にすることはなかったが、内心はどうだろう?そこはちゃんと考えてやらないと駄目だよな…十分すぎる程に他愛もない話をしてから、俺は席を立った。


「今日は…来てくれてありがとうございます」

ユリーシャは名残惜しそうではあるが、さすがに引き留めるようなことはしない。おやすみの挨拶を交わし、俺は自室へ戻った。


ユリーシャの心の安定と、カレンに降りかかるところだった危機を未然に防ぐ…まさに一石二鳥である。思わずほくそ笑んでも、誰が見ている訳でもなく誰からも突っ込まれることもない。今日の締め括りは最高だ。明日もこの調子でいくぜ。


翌日もこれまでと同様に、二手に別れてライフィスとルゼットの観察だ。ルゼットから話を聞けたようにライフィスからも話を聞けるといいんだけどな。性格的に難しいかもしれないが、それがこの事件の突破口になるかもしれない。


その役目はカルネイロが担うことになるだろう。そうなると、どのようにあの居酒屋に出入りするのか…見ものだね。


日が暮れて居酒屋が営業を始めると、まもなくカルネイロがやって来た。いつもの学者風のおじさんではなく、どこにでもいそうなお人好しっぽい感じのおっさんである。


そんな風だから、カルネイロはすぐにお店の人とも打ち解けた。さすがだな。そんな風でも、このおっさんは抜け目がない。カルネイロが座っている席はライフィスがいつも座る席の近く…観察と警護、どちらも行えるいい場所だ。たいしたもんだぜ。


「もう…カルネイロさんったら、お上手なんだからぁ」

「ハッハッハッ!でも、事実ですから」

すっかり楽しんでいるね。この調子でライフィスとも上手くやれればいいのだが…どうだろうな。


いつもの時間にやって来たライフィスは、いつもと違う賑やかさに戸惑ったものの、いつも通りに飲み始めた。ギルマの手下もやって来たが、やはりカルネイロの存在に困惑している。これなら大丈夫だろう…ヤツラがすぐに危害を加えることはないはずだ。

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