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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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ダスラーとルゼット

翌日、俺達は簡易な地図を頼りにモカップさんが借りてくれた部屋を探し当てた。そこは小さなキッチンと部屋が1つだけのアパートだった。あまり快適な物件とは言えないが、別にここに住む訳ではないからな…これで十分だろう。


「キッチンがあると嬉しくなりますね~」

フェリシアさんは鼻歌を歌いながら上水タンクから水を出したり、炎の魔昌石に火を付けたりしている。


昨日は水筒に入れた水だったが、今日は美味しい紅茶が飲めそうだ。それだけでもありがたいね。これなら夜まで苦もなくライフィスの観察ができそうだ。


そして、この観察に不可欠なのが魔剣である。これまでは不可視の錫杖で俺やユリーシャが見たものは、ユリーシャの杖を使ってみんなで共有していた。それだと今回のように別行動をとると、不都合が生じる。


そこでユリーシャが魔剣に新たな機能を追加してくれた。それはユリーシャの杖と同じように魔剣から光を投影し、プロジェクターのように映し出す機能だ。これがあれば俺がサボれる…じゃなくて、俺の負担が減ることになる。やったぜ!


肝心のライフィスだが…日中は昨日と変わらずだ。決して多くはないが、お客さんはやって来る。ただ、気難しいタイプのようで、話が弾むということはない。当然、事件のことが話題に上ることもない。


収穫…と言っていいのかどうかは分からないが、新たに分かったことがある。夜の過ごし方だ。近所に行きつけの居酒屋があり、そこで軽く引っかけているようだ。


「これがきっかけになるかしらねぇ…」

一般的に、お酒が入ると性格にある程度の変化が生じるものだ。中には人格が変わる人もいる。アマユキはそこに期待しているのだろう。


「何とも言えないな」

どう変わるのか?それは人それぞれだ。気難しいライフィスがさらに気難しくなる…そういう可能性だってあるのだ。


「骨が折れますね~」

あまり困難を感じさせないフェリシアさんの物言いはいつものこと。それでも何とかしないとな…。


それから1週間、ルゼットにもライフィスにも特に変わったことは起きなかった。むしろ変わったことがあったのは俺達の方だ。


「いつも同じメンバーだとつまらないでし!」

そんなことをティアリスが言い出したのだ。


つまるとかつまらないとか…そういう問題ではないと思うのだが、こんなところで不協和音を生じさせる訳にはいかない。ここは素直に交代に応じることにしよう。という訳で、今日は俺とティアリス、それからフェリシアさんの3人でルゼットの観察である。


ルゼットの様子は、ユリーシャから逐一聞かされている。矢場に勤め、暇さえあればバルトリの坂に赴き、リュスギナの石像に祈りを捧げているようだ。


何でバルトリの坂なんだろうな…ルゼットの家の近くにもリュスギナの石像はある。だが、そこを訪れたことはただの一度もない。何が彼女をここに導いているんだろう?そこも気になるところだ。


今日もルゼットはバルトリの坂のリュスギナ像のもとにいる。ここには隠れる場所が無数にあるから、尾行はやりやすい。


「別人だったかもしれないなんて…」

複雑な胸中を吐露したルゼットは、俺達の尾行に気が付いていない。さて、どうしたものかね。


「あれから1週間か…ここまで何も起きなかったが、それならこちらから動いた方がいいかもな」

観察はもう十分なはずだ。どうですか?先輩方。


「そうでしね…でも、もう少し待っても良さそうでしよ」

ティアリスの言っている意味はすぐに分かった。この場にダスラー君が現れたのだ。


あの雨の夜にルゼットと出会い、一目惚れしてからバルトリの坂を何度も訪れていたのかもしれない。むしろ今日まで2人が出会わなかったのが不思議なくらいだ。


物思いにふけるルゼットは、ダスラー君に気が付いていない。坂の下から上がってきたダスラー君の表情が、恋い焦がれていた人を見つけ、パアッと明るくなった。


「これは声を掛けちゃいそうでしね!どうなるのか…楽しみでしねぇ♪」

2人の行く末が楽しみで楽しみで仕方がないご様子でしね。気持ちは分からなくはないが…ティアリスの予想通り、ダスラー君はルゼットに声を掛けた。


「あっ、あなたは…」

最初の一歩を踏み出したダスラー君、えらいぞ。


「何か?」

ルゼットにしてみれば、ダスラー君は見知らぬ男性だ。明らかに警戒している。


「ずっと…ずっとあなたのことを想っていたんだ。こないだの雨の晩、幽霊と間違えちゃったけど…泣いてただろ?」

ルゼットの表情がさらに厳しくなる。これは…ダメかもしれんね。


「私、力になりたいんだ。あなたの力にさ」

それでもダスラー君は構わずに話を続ける。それに対して、ルゼットはもう聞きたくないと言わんばかりに顔を背け、逃げるように走り出してしまった。


「あっ、ねぇ…何で逃げるんだ?」

もちろん、ダスラー君は追いかける。俺達も十分な距離を取って、2人を追いかけることにした。


「おい…」

呼びかけられても、ルゼットは止まらない。


「おい、待てよ…待てったら!」

それでもダスラー君は魔法戦士だ。ただの一般人であるルゼットに追いつくことなど造作もないこと。しかし、追いつかれたルゼットは、ダスラー君に厳しい言葉を投げつけた。


「ほっといてください!私…私、お役人なんて大嫌いなんです!」

ダスラー君、ショックのあまり一瞬固まってしまったね…。


「いや、そんな…」

それでも諦めないダスラー君を、ルゼットは激しく非難した。


「殺されたのが別人だってことにも気が付かないで!」

「別人…」

それは死因の特定に立ち会っていたダスラー君にも心当たりのあることだ。


「殺されたグレイゴーストのゼーリックは別人だって言ってる人もいるわ!なのに…なのに、どうして…」

最後は涙声になりダスラー君の胸を叩いたルゼットは、小走りで立ち去ってしまった。ダスラー君は呆然とルゼットを見送った。今のアイツにはそれしかできなかった。

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