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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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闇夜の幽霊

『ティート』でお薦めのランチを堪能したら、再び魔法樹の健康診断だ。やること自体は午前中と変わらないし、ユリーシャも慣れてきたので、作業はサクサクと進んだ。おかげで予定していたよりも多くの魔法樹を診ることができたようだ。


「この分だと明日は時間が余りそうでしね」

「そうだな」

その分、エレンシア劇場をゆっくり見学できそうだ。


「明日は劇場を見学した後に、ショウちゃんが大好きなエッチな劇も見れそうでしね!」

「見ねえって言ってんだろ…」

街中でそんな話をするんじゃねーよ。


俺のノリがいまいちだからか、ティアリスもそれ以上はエッチな劇について語ることはしなかった。本当は自分が見たいだけなのかもしれないね。


夕暮れを迎えたサクリファスの街並みは、薄暗くなる世界に抗うように黄金色に輝いている。ライラリッジではこんなことはなかったな…リュスギナストーンで造られた街だからこその光景だ。夜の闇に呑まれる前のこの輝きが、今日一日の疲れを癒してくれているようだ。明日も頑張ろう!って気になるね。


ちょうど夕食時なので、『ティート』は繁盛している。もっともカレンが昼と同じように席を予約してくれていたので、すぐに夕食にありつけた。空腹の身にはありがたいね。美味しい夕げを心ゆくまで堪能すると、嫌でも気になる現実に注目することにしよう。そう、あのだらしない表情の魔法戦士である。


どうやら立ち直った訳ではなかったようだ。こうもアレだと、さすがに気になってくるね。それは俺だけではないようで、今は店の常連らしき若い衆と普段は厨房にいる女の子に励まされている。


「大丈夫ですかね?」

若い衆はあまり心配している感じではない。よくあることなのかもしれないな。


「病気みたい…」

女の子は心遣いのできるいい娘のようだ。


「そうなんだよ…昨日の夜以来ずっとあの調子よ」

従者のおじさんはもうお手上げという感じだ。その気持ちはよく分かる。


「アレは…どうしたんだ?」

さすがに気になるから、俺は近くにいたモカップさんに聞いてみた。


「なんでも惚れちゃったらしいのよ…幽霊に」

「幽霊に?」

そいつは物騒な話だな…この世界では普通にいるそうだし。モカップさんの話に耳を傾けていたユリーシャ達の目付きも、鋭くなった。


「そう。この近くにバルトリの坂っていう坂があるんだけどね…近頃、誰言うとなくバルトリの幽霊坂って言うようになって。闇夜になると女の幽霊が出ると評判なのよ」

モカップさんにはあまり危機感がない…どうもガセネタだと思っているようだ。ここで人の好さそうな学者風のおじさんが、さらに詳しく説明してくれた。


「その女がですね…何でも幽霊にしておくのが勿体ないくらいのいい女らしいんですよ。実は10年程前に死罪になった女がいましてね、どうもその女があちらの世界に旅立てずに出てくるらしいんですよ。雨の日なんかその女の泣き声が聞こえてくるって言うじゃありませんか」

漫談のような軽妙な口調なので、面白いことは確かだが…。


「ホントかよ、おい…」

大袈裟な物言いをされると、こっちも半信半疑になっちまうぜ。


「ホント…ムググ!」

どうやら喉に何かを詰まらせたようだ。とりあえずお茶でもどうぞ。


「ダスラーの旦那、しっかりしてくださいよ!」

さすがに見かねたのか、若い衆が少し強めの口調で励ました。


「旦那っ!ほれっ元気を出して…一杯、飲んでください」

「ほっといてくれよ~」

従者のおじさんはダスラー君にビールの入ったグラスを差し出すが、ダスラー君は今にも泣き出してしまいそうだ。


「古今東西、お医者さんでも名湯の湯でも、どうにもならぬが恋病…と言いますからなぁ~」

学者風のおじさん、上手いこと言いますなぁ…みんなそう思ったのか、一同はどっと笑ってしまった。


「みんなで寄ってたかって俺を笑いものにしてぇ…」

ダスラー君、ついに泣き出してしまった。今度はそれを全員で慰める。見事な様式美ではあるね。まあ、時間が解決してくれるだろう。

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