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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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リュスギナ大聖堂

もちろん、俺達の予定は魔法樹の健康診断だけではない。それだけなら1日で終わってしまうが、サクリファスには色々と見どころがあるものだ。その中でも誰もが訪れるのがリュスギナ大聖堂だろう。


リュスギナ大聖堂はサクリファスの中心部にある。ユリーシャが言っていた通り、外観はシンプルで地味な造りだ…立派な建物なんだけどね。


「ここが大聖堂と知らなければ普通に通り過ぎてしまうかもしれないな…」

思わずそんな感想が口をついて出てしまう。


「確かにそうかもしれませんね。でも、中に入ると凄いんですよ」

「そうか…」

としか言いようがない。百聞は一見に如かずってヤツなのかもしれないが…。


微妙なテンションで中に入った俺は、外とのあまりの違い…その落差に圧倒されてしまった!鮮やかな色を用いて濃密に彩られた天井は、ただただ凄いとしか言いようがない。それは古くから人々に語り継がれてきた物語のように見える。それを見ていると、誰もが湧き上がる感動に打ち震えることになるはずだ。


そして、凄いのは天井だけではない。床は四角い枠で区切られた無数の絵で埋め尽くされている。事前に聞いていた通り…いや、それ以上に絢爛豪華な造りだ。言葉にならない吐息が口から漏れてしまう。言葉を失ってしまうとはこのことだろう。いやはや、凄いね!


「天井に描かれている極彩色のフレスコ画は、海の女神リュスギナの伝説を描いたものだそうですよ」

おそらくユリーシャはリュスギナ大聖堂に来たことがあるのだろう…俺のように言葉にならない程に感動してはいない。


「そして、床全体を埋め尽くしているモザイク画は、かつてこの地で戦い命を落とした魔法戦士達の墓碑です」

「これは戦死した魔法戦士達の墓だったのか…」

その上に立っていることに、申し訳なく感じてしまう。


「そうです。色とりどりの大理石をはめ込んだ美しい細工を施し、その功績を称えているのです」

これほどまでに手厚く葬られるのであれば、命を懸けて戦った甲斐があったというものだろう。


「この地域には共通語の他に7つの地域言語があります。だから、ここには8つの礼拝堂があるのです」

もちろん、どの礼拝堂も豪華な造りだ。


「礼拝堂を彩る彫刻や絵画は、そのどれもが手掛けた芸術家たちの代表作になっているのですよ」

「美しいな…」

それ以外の感想は…出てこない。


この地域の人たちにとって、海は切っても切れない存在だ。多くの人が自然と海に関わる仕事をすることになる。だからこそ、海の女神リュスギナへの信仰も厚いのだろう。それは莫大な寄進という形になって現れ、それによりこれほどの大聖堂が造られたのだ。信仰の力って凄いね。


リュスギナ大聖堂をじっくりと見学すると、小一時間ほどが経っていた。もう昼過ぎだ。大聖堂の近くには数軒のレストランが軒を連ねているが、どこもいっぱいで俺達全員が入れそうな所はなさそうだ。さて、どうしたものか…。


「そんな所に突っ立っていても何も始まらないぞ?」

カレンが少し茶化すように言ってきた。


「いやいや…これからどうしようと思ってさ」

適当にテイクアウトでもするか?


「心配しなくてもいい。いったん『ティート』に戻るぞ」

「『ティート』に戻ればなんとかなるのか?」

ドルイド特権でもあるのかな?


「すでに席を予約してある。だから、大丈夫だ」

「そうなのか…」

ここは気配り名人の本領発揮ですな。


『ティート』はリュスギナ大聖堂からそんなに離れている所にある訳ではない。こうして見ると、いい所に建っているのがよく分かる。『ティート』に戻ると、まずは俺達の帰りを待ち兼ねていたモカップさんと雑談タイムだ。ひとしきりの雑談をした後に、ようやく昼食である。


今日の昼食はモカップさんに薦められたタンドリーチキンのセット。他ならぬ『ティート』の主のお薦めならば、食べねばなるまい。出てきたのはタンドリーチキンに枝豆のペペロンチーノ、それからふわとろのオムライスだ。


タンドリーチキンはスパイシーな香りとヨーグルトのまろやかな酸味が食欲をそそるね。お肉がフワフワですごく美味しかったよ。


続いて枝豆のペペロンチーノ、コイツは初めての味だ…ニンニクの香りとピリッと辛い鷹の爪の風味が堪らないぜ。酒のつまみにもいいかもね。


そして、ふわとろのオムライス!サッパリしてるのに癖になる旨さのライスはハーブの風味が絶妙だ。もちろん、卵はトロットロ。これまでに食べたことがないオムライスですな。


朝食時に、だらしない表情を晒していたあの魔法戦士はもういない。どうやら立ち直ったようだ。誰もが眉をひそめるようなにへら顔をずっとしている訳にもいかないもんな。詳しい事情は知らないが、あまり醜態を晒すんじゃないぞ。

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