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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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魔法樹の健康診断

翌朝、俺達は身だしなみを整えるとコテージを後にした。すぐ近くにある『ティート』という食堂で朝食をとるためだ。ここは昨晩に俺達がいただいた弁当を作ってくれた食堂でもある。『ティート』の主のモカップさんは、コテージの主でもあるので、ちゃんと挨拶はしておこう。


前夜に降った雨は、家々や草木を濡らすことでその痕跡を残しているが、それもいずれ消えてなくなるだろう。昨晩とは打って変わって快晴という訳ではないが、今日の予定に支障をきたすことはないはずだ。


『ティート』はフェリシアさんがサクリファスを訪れた際には、必ず利用している。もちろん、モカップさんとは顔見知りだ。


「いらっしゃい。昨晩は結構な雨だったけど、よく眠れたかい?」

「もちろんですよ~。朝定食を6つ、お願いします~」

フェリシアさんは有無を言わさず朝定食を注文してしまった。


「こちらの方は…随分と別嬪さんだねぇ」

モカップさんはユリーシャをしげしげと見つめながら言った。


「ユリーシャ・セレナソルノです。この度はフェリシアさんに同行させてもらうことになりました」

名を変えても育ちの良さは変えようがない。これ、バレるのは時間の問題じゃないの?


「アハハ、あたしはモカップだよ」

モカップさんが何か察したのかどうかは分からないが、特に何も聞いてこなかった。


「それにしても、両手に花だねぇ」

モカップさん、余計なことを言わないでください。


「これだけ可愛い娘ばかりだと、夜はさぞ楽しいんじゃないかい?」

「いえ、俺は一番下っ端なんで…」

そういう話をすると、再び冷ややかな視線を向けられることになる。やめてくださいよ、モカップさん。


「ふ~ん、そうなのかい。あんたも色々と大変なんだねぇ…」

何やら同情されてしまった。或いは俺の心の叫びが聞こえたのかもしれん。適当なところで雑談に区切りをつけ、モカップさんは給仕に戻っていった。


朝早くから開いている良心的な『ティート』には、様々な人が朝食をとりに来ている。学生と思しきお揃いの制服を着たグループ、職人風の男、100%のインテリおねーさん…。そんな中、嫌でも注意を引かれたのが魔法戦士風の男とその部下だ。


「旦那…しっかりしてくださいよ」

この部下はすでに40代の半ばといったところか…外見からは職業不詳の男だが、この旦那の従者という立場だろう。サリエラに付き従っていたツザナのようなもんだ。あそこまでアウトローではないと思うが。


そして、しっかりしてほしい旦那の方は…にへら~としております。だらしない表情とはこのことだろう。俺が同じ表情をしていたら、間違いなくゴミ扱いされるね。何があったのかは何となく察しがつくが、こういうのは時間が解決してくれるものだ。そっとしといてやれよ。


『ティート』での朝は、朝定食を頼むのが流儀のようだ。安くて早くて旨い。みんなが朝定食を頼むのも納得である。俺達のように朝食を楽しんでいるのは少数派で、多くはサッと食べてパッと出ていくようだ。


「みなさん、食べるのが早いですね…」

ここでも育ちの良さを隠せないユリーシャだが、あのだらしない表情の魔法戦士もだらしないままだから、気にしなくていいと思うぞ。


雑談をしながらのモカップさんだけでは給仕が上手く回らないので、頃合いを見て厨房から女の子が出てくる。この女の子は給仕をテキパキとこなすタイプのようだ。出てこれない時には、お客さんが適当に片付けを手伝ったりしている。いい雰囲気のお店だな。


のんびりとした朝食タイムを満喫したら、そろそろ魔法樹の健康診断に取りかかることにしよう。これはドルイドであるフェリシアさんの仕事だが、ユリーシャも興味津々のようだ。


「倒れた魔法樹を見てみると根が浅かったり内部が腐っていたり…それぞれの原因はすぐに分かりますよね。それを外見上で判断するのがドルイドの仕事になります」

ユリーシャにドルイドの仕事を教えるフェリシアさんは、何だか楽しそうだ。


「パッと見ただけで分かるのですか?」

「魔法樹に限らず植物は様々な声を発していますから…その声を聞けば分かります」

それはドルイドだからだ。俺達にその声は聞こえない。


「私には…よく分かりません」

ユリーシャはドルイドじゃないから仕方がないさ。


「ドルイドじゃなくても魔法樹の状態を見抜く方法はありますよ。まずは目で見ておかしな所がないか確認して…例えば葉っぱが付いてない枝なんかがあれば、それはおかしいですよね?」

確かに…この時季に葉がない枝というのは違和感を感じる。これにはユリーシャもこくこくと頷いた。


「それは魔法樹が状態の悪い枝を自ら枯らして、健康な枝に栄養を回しているからです。すると栄養が止まった枝だけ枯れた状態になるのです」

魔法樹だって植物だ。そして、これは植物の生存戦略の一つだろう。


「おかしな所があれば、それを確認するためにこれを使います」

フェリシアさんは木槌を取り出すと、それで枝を叩いた。


カン!カン!


朝の喧騒を切り裂くような音が辺りに響いた。思わずこちらを振り向いてしまう人もいる。もっとも俺達はドルイドの一行なので、何も言われないが。


「葉がある元気な枝は水分と繊維が詰まっているので甲高い音がするのです。ここにはないけど、枯れた枝を叩くと空洞があるからコンコン…という低くて鈍い音になるのです」

これは打診ってヤツだ。音の違いで状態を確認できるのは便利だね。


フェリシアさんとユリーシャが魔法樹の声を聴いたり目視で魔法樹の健康診断をし、俺達は2人と街道を行きかう人々がぶつかったりしないように気を付けてやる。必要があれば街道に規制をかけてもいいようだ。


「元気な魔法樹ばかりですね!」

木槌で魔法樹を叩きまくっているユリーシャは上機嫌だ。フェリシアさんはにこにこしているが、魔法樹は「そんなに叩くな!」と文句を言っているのかもしれない。


「ここはサクリファスの街中で手入れが行き届いていますから…でも、街の外に出るとそうでもないのですよ」

フェリシアさんが穏やかに魔法樹の実状を話してくれた。


予定では、今日と明日でサクリファスの魔法樹はすべて診られるはずだ。言うなればここは予行演習みたいなもので、本番は明後日以降だな。

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