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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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次の訪問地とPMA

「次が決まったわ…サクリファスよ」

リアルナさんは渋い表情で告げた。それもそのはず、そこはレガルディアではない。


「アルカザーマじゃねえかよ…何でだ?」

まさかまさかだな。


「あの女がアインラスクで事件を起こしたのは、そこがレガルディアの玄関口だから。そこを通ってレガルディアから出てこい…というのがあの女のメッセージ。それが王室庁の見立てのようね」

実に王室庁らしい考え方だ。


「なるほどな…それならミランミルで平穏無事に過ごせたとしてもおかしくない訳だ」

それでも道理に合っているのは間違いない。


「本音は軍の支援をなるべく少なくして、あなた達を孤立させたいんでしょうね」

「どこまでも不愉快なヤツらだな…」

本当にあの女と繋がっていないのか?疑ってしまうぜ。


「それから…ユリーシャ様をユリーシャ・リム・レガルディアとしてサクリファスに行かせる訳にはいかないの」

これは軍が秘密裏に行う作戦だ。ならば仕方がないだろう。


「どんな名前になるんだ?」

「ユリーシャ・セレナソルノよ」

セレナソルノか…いい響きだね。


「姓を変えただけで大丈夫なのか?」

「ユリーシャという名前はそんなに珍しくもないから…大丈夫じゃないかしら」

レガルディアの名前事情には詳しくないが、リアルナさんが大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろう。


「サクリファスはアルカザーマ地方にあるから、軍の規定でPMAの着用は必須よ。後でユリーシャ様に相談してね」

いつものことだが、リアルナさんは妙に嬉しそうだ。


「ああ…分かってるよ」

まあ、特に気にしないけどね。


PMAと言えば、いつぞやのカレンそっくりなゴーレム兵が装着していたギンギラギンのド派手PMAを思い出してしまう。あんな代物を着るのはまっぴら御免だが、それ以外になければ諦めるしかない。ユリーシャがPMAに対して妙な拘りを持っていなければいいが…。


「それでは、これから見に行きましょう!」

不安を抱えつつ訪ねてみると、目をキラキラさせたユリーシャに誘われてしまった。PMAの着用は避けては通れないことだ。ここは素直に見に行くことにしよう。


4月も中旬を迎え、少し前まで満開だった桜は散り頃だ。すでに多くの花びらが散り、桜しべを残すのみとなっている。もうじき桜しべも落ち、それから葉桜の季節が始まるんだろう。


今年の花見はユリーシャと一緒に桜を眺めただけだった。もちろん、綺麗だったよ。世界が変わっても桜の美しさは変わらないのだ。こういう花見もいいね。


確かな春の深まりを感じつつ俺達が向かった先は、レガルディアのあれこれはここに来ればすべて分かると言われるエリオット博物館だった。


「何で博物館なんだ?」

こんな所に用はないはずだが…。


「私の作ったPMAは、エリオット博物館が所有する倉庫に保管されているのです」

「そうなのか…」

博物館の持つノウハウを活かした倉庫となると、どんなものであれ保管するには最適な場所だろう。管理人の女性が案内してくれた倉庫は、それなりに大きな建物だ。


ここは博物館ではないので、一般に公開されている訳ではない。だから倉庫の利用者か、利用者から紹介された人しか入れない。もちろん、俺も入るのは初めてだ。そもそもエリオット博物館がこんな倉庫を持っていたのも今日初めて知った。どんな倉庫なのか…興味深いね。


倉庫の中はユリーシャのような立場の人間が利用するだけあって、とても綺麗でシックだ。ここは俺が想像していた倉庫ではない。


確かな保管技術は多くの人が認めるところで、ここには絵画などの美術品やワインが預けられているそうだ。PMAを保管するには場違いな気もするが、あのド派手PMAは見ようによっては芸術品だから、あながち間違ってはいないのかもしれない。


管理人さんの案内で、俺達はユリーシャが借りているという部屋に入った。やはりと言うべきか…そこにはキラッキラのPMAがずらりと並んでいた。頭がクラックラするね。


「どれがいいですか?好きなPMAを選んでくれて構いませんよ」

ユリーシャは上機嫌で薦めてくれるが、どこのアホウがこんな代物を着るんだ?嫌な予感が的中したぜ。でも、チラッとしか見てないのに「新しいのを作ってくれ」と頼むのはさすがに気が引ける。ここは一通り見るべきだろう。


「こういうのってカッコいいよな…」

自分が着るのは嫌だが、飾る分にはアリだ。ガンプラやフィギュアを陳列しているようなもんだろう。


「ですよね!」

ユリーシャは激しく同意しているが、もう一人の同行者であるカレンは引きつった笑みを浮かべている。


安心しろ、カレン。俺はこんなのを選んだりはしない。こんな所にしまい込むよりかは、展示会とかで見せた方が世のため人のためになるだろう…そう思っただけだ。もったいないね。


やはり自分が着るPMAに求めるものは実用性だ。もっと言えば秘匿性を重視したい。王室庁の連中の見立てが正しければ、俺達がアルカザーマで事件に巻き込まれる可能性は高いだろう。不愉快な話ではあるがな。そういう状況に陥った時、ギンギラギンのド派手PMAを着ているとめちゃくちゃ目立ってしまう。何をするにしてもバレバレである。要するに、今回のような作戦には不向きなのだ。


できれば今着ているロングコートの下に着用したいんだよな…それが無理ならなるべく地味なヤツ。半数以上のPMAはそもそもド派手なので却下だ。それ以外は割りと地味なPMAなので、この中から選ぶことにしよう。


ユリーシャからPMAの仕様をなるべく簡潔に説明してもらいながら、一つずつ見ていく。そして、ついに見つけたぜ!理想的なPMAを。それは体のラインにそぐうように作られ、コートの下に着用することができるそうだ。文句なしだね。


「これがいいな…これにしてくれ」

「分かりました…」

ユリーシャは少し残念そうだ。そして、カレンはホッとしている。どうでもいいけど今日のお前、無口だよな。

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