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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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ミランミル

日が落ちる直前まで飛び続けた飛空船は、ムラザサという街に到着した。飛空船は補給と整備、俺達は会食だ。ここで一泊して、明日の昼にはミランミルに到着の予定である。


夜は各々が静かに時間を過ごし、明朝は飛空船に乗り込み出発。ここまでは昨日と変わらないが、すべてが同じという訳でもない。


それはユリーシャの様子である。今日はそわそわとしていて、落ち着きがない。何やらカレンに話しかけては、宥められたり励まされたりしている。


最後に会ったのは去年の4月初旬という話だったから、約1年ぶりの親子対面だ。折を見て伝声の魔法を使い、近況を尋ねているようだが、実際に会うのとは違うもんだ。そりゃ、緊張もするよな。でも、そんなに会える訳でもないんだから、後悔のないようにするべきだと思うぜ。


今日も飛空船は何の問題もなく飛び続け、予定通り昼前にはミランミルに到着した。


上空から見たミランミルは、メグレイ盆地のほぼ中央部に位置している。街のほぼ中心部でこの地域の主流河川であるルドラ川にドゥリス川とヤズート川が合流しているようだ。豊かな自然環境に恵まれた美しい景観が特徴の街だね。


俺達を乗せた飛空船は、メイエルソン砦に隣接する飛空船乗り場に着陸した。ルドラ川のほとりに築かれたメイエルソン砦は、素朴という言葉がピッタリな砦だ。


俺達の到着を待ちかねていたのか、飛空船が着陸するのとほぼ同時に砦の門が開いてしまった。普通は飛空船が到着しても、砦の門は開かない。よからぬことを企んでいるヤツが乗っていた場合に、マズいことになりかねないからだ。それでも開けてしまったのは、中にいる人物のささやかな我が儘だろう。


それが誰なのかはすぐに分かった。雨に濡れた葉のような鮮やかな緑色の髪が目を引く綺麗な女性、顔立ちはユリーシャにそっくりだ。この人がリセエンヌさんだろう。


「お久しぶりです、お母様。加減は随分と良くなっているようで…安心しました」

久し振りの対面に、ユリーシャの声は少し震えている。


「本当に久しぶりね。時々あなたの声を聞くことはあったけど、こうしてあなたの姿を見ると感慨もひとしお…大きくなったわね、ユリーシャ」

朝焼けの澄み渡った空のような透明感のある声で、リセエンヌさんはユリーシャを労った。


「はい…」

きっとユリーシャは涙ぐんでいるはずだ。こっちももらい泣きしそうだぜ。


熱い抱擁を交わすユリーシャとリセエンヌさんを見ているのが気恥ずかしくて、思わず目をそらすと、今度はベルツさんと目が合ってしまった。


目が合っていたのはほんの数瞬だろう。それでも、それは奇妙な目つきだった。好奇の眼差しに似ているが、何かが違うように感じる。俺のことを知っている人の目…と言えばいいのだろうか?そんな目つきだ。


もちろん、ユリーシャから俺のことは色々と聞いているはずだ。だから、ベルツさんが俺のことを知っていても何ら不思議ではない。だが、そんな浅いものではない感じがしたのだ。ただの気のせいかもしれないけどな。


久しぶりに対面した親と子の間には、積もる話が尽きることはないだろう。だが、こんな所で話に花を咲かせる訳にもいかない。俺達はベルツさんの案内で2人が暮らしている邸宅へと向かった。


上空から見て分かっていたが、ミランミルは環境のいいのどかな街だ。ここで静養すれば、大抵の病気は良くなりそうだ。リセエンヌさんも、そんなに具合が悪くなさそうに見えるし。でも、ライラリッジに戻るとなると、フラッシュバックとかがあったりするのかもしれない。


そうなると、ずっとミランミルで暮らすことになる。おそらくレガルディアはその可能性を考慮に入れているのだろう…ベルツさんをこの街の副市長に任命している。他ならぬユリーシャの両親を、苦労させる訳にはいかないからだ。


2人が暮らしている邸宅は、メイエルソン砦の割と近くにある。ベルツさんが副市長に就任した際に購入したものだ。3階建ての立派な邸宅だが、以前の所有者が何者なのかは不明という曰く付きの物件である。ベルツさんが副市長に就任した直後に売りに出され、それを購入したそうな。


間取りを見てピンときた。階数こそ違うものの、ここはアインラスクで俺達が拠点として使っていた民家にそっくりだ。


つまり以前の謎の所有者は軍の関係者だろう。名目上は売りに出されたが、購入する人はベルツさんに決まっていたのだ。予定ではここで1週間過ごすことになっている。それを考えると、悪くはない物件だ。

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