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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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季節は春でごぜーます

街の外れにある駐屯地に着陸すると、俺達はひとまず下船した。市長や軍の団長をはじめとした、街の有力者と会食をするためだ。


ユリーシャ邸にいる時はずっと『ラナンエルシェル』で夕食を食べているので、もはやテーブルマナーに不安はない。それでも植え付けられた苦手意識というヤツは、そう簡単には拭えないものだ。平静を装いながらも変な汗をかいてしまったぜ。まあ、いつものことだから…仕方がない。


会食が終わると、再び飛空船で空の旅だ。騒ぎまくった午前中の後に一転してある種の緊張感のある会食をしたので、ちょっと眠いね。どうやらそれは俺だけではなかったようだ。


ティアリスはフェリシアさんの太ももを枕にして、ぐっすりと眠っている。幸せそうな寝顔ですねぇ…何やら寝言を言っているが、何を言っているのかは分からない。


膝枕を提供しているフェリシアさんは、今日もサボテンに何やら話しかけている。こちらは何を言っているのかは分かるが、別世界の住人なのでそっとしておかなければならない。


ユリーシャとカレン、それからアマユキは変わった作りの布団を使ってお昼寝だ。見ようによってはこれまでにない斬新なデザインの服のようにも見えるこの布団は、椅子やソファーに座ったまま、仰向けの姿勢でも首や腕を支えて快適に眠れる優れものだ。うつ伏せで寝た時のような息苦しさはないし、手や腕が痺れたりすることもない。ちょっと仮眠をするには最適だな。


これは軍で採用されているので、俺の分もある。だが、俺は敢えてそれを使わない。昼寝をしないから、使う必要はないのだ。それでは何をするのか?さっきは邪魔をされてできなかった外の景色を眺めるのだ。旅と言えばこれだろう!


3月も下旬を迎え、そこかしこで菜の花が見ごろを迎えている。飛空船から見下ろす一面に咲き乱れる菜の花は、まるで黄色い絨毯のようだ。抜けるような空の青と鮮やかな黄色のコントラストは、まさに絶景と言っていいだろう…これを見逃すなんて、ないよな!


今は昼下がりだが、西の空に夕日が沈む頃には、また違う顔を見せてくれるはずだ。茜色の空と一面の黄色い菜の花、沈む太陽と昇る月、穏やかに暮れゆく春の色と香り…言葉にならない美しさがそこにはあるのだろう。春っていいよな。


「どうぞ…」

外の景色を見て悦に浸っている俺と、サボテン大好きフェリシアさんのために、リシアが紅茶とブランデーケーキを持ってきてくれた。


「ありがとな」

「いえ…」

それが仕事とは言え、してくれて嬉しいことにはちゃんとお礼を言いたい。ありがたくいただくことにしよう。


ふんわりとしっとりのバランスが絶妙な食感のブランデーケーキは、香りだけでなく濃厚で程よい苦みが口の中に広がってくる…ブランデーの味をしっかり感じられる逸品だ。


大人のデザートを味わいながら紅茶をチビチビと飲む。まさに穏やかで幸せな時間の過ごし方である。こういうのがいいんだよな。


しかし、それをぶち壊しにしかねないことをフェリシアさんがやっている。フォークで刺したブランデーケーキを、ティアリスの鼻先に持っていくという悪戯をしているのだ。


膝枕を提供しているので、それぐらいは許されると思うが、ティアリスの鼻がひくひくしているぞ…もうじき起きそうだ。そう思った次の瞬間だった。


パクリ!


遂にティアリスがブランデーケーキに食いついた。魚かよ…何にせよ穏やかで幸せな時間はこれで終了のようだ。


「ティアリスもブランデーケーキを食べたいでし!」

さっきまでフェリシアさんの膝枕でぐっすりと眠っていたティアリスは、元気一杯だ。その一言でみんな起きちゃったから、リシアは全員の分を用意することになった。


「お待たせしました。紅茶とブランデーケーキでごぜーます!」

独特な言葉遣いのリシアが、次から次へと紅茶とブランデーケーキを運んでくる。


普段のリシアは気を付けて普通に喋っているが、素が出るとこうなる。ユリーシャからはいつものリシアでいいと言われているのだが、やはりそういう訳にはいかないと思っているようだ。その努力はそれなりに実っているが、本人の求めるレベルにはまだまだだ。


カードゲームで盛り上がったり、外の景色を楽しんだり。飛空船には、馬車とはまったく違う魅力があることがよく分かる。色々な事情があることは分かっているが、これがレガルディアだけでしか使われていない現状は、間違いなく宝の持ち腐れだと思う。何とかなるといいんだけどな。

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