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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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飛空船

新たな魔法具であるダンシングワンズを用いた戦い方の研究やバットの素振り、それから必殺の彗星の一撃の完全マスター等々。今の俺にはやることが盛りだくさんである。


必殺の彗星の一撃というのは、サリエラをぶっ飛ばしたあの技ね。命名者はティアリスだ。あまりセンスがいいとは言えないが、その名を叫ばなくてはならない訳でもないので、別にいいだろう。


もちろん、ユリーシャの美術館訪問にも同行する。それが俺の3月の過ごし方になっていた。


本来の仕事…と言っていいのかどうかは分からないが、次にユリーシャが地方の都市を訪問するのはいつなんだろう?と思っていたら、次が決まったとリアルナさんに言われてしまった。


次なる訪問都市はミランミル。どこかで聞いたことがある名だな…と思っていたら、そこはユリーシャの母親リセエンヌさんの生まれ故郷だ。


あの騒動で体調を崩してから、リセエンヌさんはずっとかの地で静養している。父親のベルツさんも付き添っているはずだから、ユリーシャにとっては久しぶりに両親と会えることになる訳だ。


どうりで最近のユリーシャが妙にウキウキしているはずだぜ。羨ましくも思うが、今はそのことをあまり考えないようにしよう。


余計な思いに囚われていたからか…どんな準備をすればいいのか?ということがすっかり頭から抜けていた。出発まではまだ日があるが、3階の一角で丁度良くリアルナさんを見つけたので、捕まえて聞いてみることにしよう。


「今回はどんな準備をすればいいんだ?」

「ぅん…私、強引な人って嫌いじゃないわ…」

ちょっと何を言ってるのかよく分からないです。


「ミランミルはライラリッジよりも寒いんだろ?セーターは必須として…他にはどんなものがあったらいい?」

こういう時は構うことなく、聞きたいことを聞くに限る。


「そうねぇ…ネックウォーマーとか手袋があればいいんじゃないかしら。向こうはまだ雪が残っているそうだから、とにかく暖かい格好をすることね」

俺が乗り気じゃないことに不満げではあるが、リアルナさんはきっちりと答えてくれた。


「後でユリーシャ様に相談するのよ?」

「分かってるよ…」

準備を万全にするにはそれが一番だからな。両親に会えることを楽しみにしているユリーシャを見ると複雑な気持ちになるのだが…そこはもう割りきろう。


今回のミランミル訪問では、馬車ではなく飛空船を使って行くそうだ。飛空船と言えばアマユキである。フォンラディアに行く時にはいつも利用しているそうだ。どんなものなのか…ちょっと聞いてみよう。こういう時に2階にいることが分かっているのはありがたいね。


「簡単に言うとね、空飛ぶ船なの」

いつも一緒にいるフェリシアさんは、軍の施設に出かけている。フェリシアさんが淹れてくれる美味しい紅茶が飲めないのは残念だ。今日は『たけのこ日和』の紅茶セットで我慢しよう。


「どうやって空を飛んでいるんだ?」

空飛ぶ船なんて、元の世界では架空の乗り物だ。その原理は知っておきたい。


「もちろん、飛空の魔法で飛んでいるのよ」

「なるほど…」

予想通りと言えば予想通りだ。原理としては、俺の不可視の錫杖と同じだな。


「飛空船のおかげで色々と便利になったんだよ。この前行ったアインラスクなんて、ライラリッジから目と鼻の先にあるから馬車でも十分だけど、ミランミルは遠いからね。飛空船でも1日半はかかるよ」

「馬車で行ったらどれくらいかかるんだ?」

それが分からんと比べようがない。


「最低でも4日はかかるんじゃないかな…」

「4日か…」

倍以上かかるとはね。さすがは飛空船だ。


「もちろん、ユリーシャ様のような王族の人間だともっとかかるのよ。アインラスクを訪問した時にはカルケーストも訪問したでしょ?ミランミルの場合も同じだからね」

道中の街で市長をはじめとした街の有力者と会食か…スローライフな旅になりそうだ。


「さすがにそれは時間がかかりすぎだろう…」

会食まで含めると、倍近くかかってもおかしくないような気がする。


「そう思う人が他にもいたから、飛空船が開発されたのよ。ただ、いつも飛空船を使うと会食を楽しみにしている街の方々に申し訳ないから…時と場合によりけりなんだけどね」

今回は訪問するのがユリーシャで、ミランミルには彼女の両親が住んでいるから、飛空船での訪問になったのだろう。会食に苦手意識がある俺にとっては、ありがたいことだ。


「これが飛空船のパンフレットだよ」

この飛空船というヤツは双胴船をもとにして造られている。着陸することを考えると、単胴船よりも双胴船の方がいいのだろう。パンフレットには、飛空船の全長は約30mで、幅は約6mと書かれていた。


「細長くてスマートだな」

「でも、70席もあるんだよ」

「そんなにあるのか…」

人は見かけによらないと言うのは、飛空船にも当てはまるようだ。


「私がフォンラディアに行く時に乗るのはこれだけど、今回は王室所有の飛空船だからね。定員は10人くらいじゃないかな…その代わり内装は凄いんだよ!」

「どれくらい違うんだ?」

一般人が乗る飛空船と王室所有の飛空船を比べるのも馬鹿げた話だが、それでもその違いは知っておきたいところだ。


「例えば…足を思いっきり伸ばせるの」

それはポイントが高いね。


「座席はソファーだからね…本当にゆったりと寛げるんだよ。おっきい人ってさ、他の乗客の間で縮こまるでしょ?そんな必要はないの」

これは快適な旅になりそうだ。


「ソファーの柔らかさはどうだ?」

柔らかすぎるのも良くないと思うぞ。


「全身をサポートしてくれるような柔らかさだよ。沈み込むような感じはないかな」

どうやら問題はなさそうだ。


「それから、ごはんが凄いんだよ。普通の飛空船ではありきたりのお弁当しか食べられないんだけど、あの飛空船には専属の料理人がいるからね。大抵のものは作ってもらえるよ」

「すげえな…」

当たり前の話だが、普通の飛空船とは大違いだ。快適さと豪華さ、それから利便性…そこにはまったく違う世界があるようだ。

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