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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第3章 サクリファスの亡霊

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尽きない疑問

3月を迎えたライラリッジは、冬の寒さの中にも春の気配を感じることができるようになる。冬に比べると明らかに長くなった日の光が大地に降り注ぎ、草木からは新芽が芽生え始めた。冬の間は眠りについていた虫や動物達も、そろそろ目を覚ます頃だろう。春の気配っていいよな…などと現実逃避をしたくなるものだが、そうは問屋が卸さない。


エステルマギの埋蔵金事件と名づけられたあの事件から、数日が経った。その行方をずっと追っていながら手掛かりの一つも掴めなかった赤い髪の女を、アインラスクで見つけたことによって、軍は少しピリピリしている。


わざわざクランドールを軍の施設へ呼び、ここ半年程のアインラスクの状況の聞き取りをしたそうだ。あのおっさんは忙しいんだから話ぐらい聞きに行ってやれよ…事情を知る者としてはそう思ってしまうのだが、そこは色々とあるのだろう。


ユリーシャ邸にも変化が現れた。それがアマユキとフェリシアさんの常駐である。今のところ、2人は一見するとホテルに見える2階の一室で寝泊まりしている。


この部屋のいいところは、『たけのこ日和』が出前に来てくれることだ。誰にも気兼ねすることなく食事ができるというのは、俺のような人間にとってはありがたいことだね。


「でもさ…何でゲオルクだったんだろうね?」

昼食後のティータイム、何とも言えないのどかな空気が流れる中で、アマユキがそんなことを切り出した。


「何でって…」

突然、そんなことを言われてもね。同居人のフェリシアさんも、穏やかな表情を浮かべているだけである。


「あの女が私達を試したのならさ、ゲオルクみたいな優秀な魔法戦士じゃない方がよかったんじゃないの?」

「確かに…そうだな」

どもる話し方と、少し落ち着きに欠ける性格のせいで過小評価されがちだが、ゲオルクは優秀な魔法戦士だ。


「ファゼルさんの殺害事件からすぐにソルタスさんにたどり着けたのは、ゲオルクさんのおかげですからねぇ…」

フェリシアさんの言う通りである。


あの時、俺達は過去の事件の洗い直しをするつもりだった。だから、そのうちソルタスの事件にたどり着けていただろう。だが、時間を無駄にしないで済んだことは大きい。


「それから、アリューシャを見つけてくれたことも大きかったよね」

それはあの女が仕組んだことなのかもしれない。それでも見つけたのはゲオルクなのだ。


「そうだな…アイツは独特な視点の持ち主で、地道な作業を文句ひとつ言わずにこなしてくれた」

まさに縁の下の力持ちってヤツだ。


「ゲオルクさんのような方と一緒に仕事ができたことは、事件の解決にとって大きかったですよね」

フェリシアさんはうんうんと頷いている。なんか可愛いな。


「そう考えると、なぜ俺達とゲオルクを引き合わせたのか…そこは疑問が残るところだな」

しかし、そこに明確な答えはない。


「それで…ショウはどう思っているの?」

困った時の俺頼みである。


「そうだな…そこには敢えて手を付けなかったのかもしれないな。なぜかは分からんけどね。あるいはあの女の能力にも限界があるのかもしれない」

仮説ならいくらでも出せるけどね。正解かどうかは誰にも分からない。


「おかしなことと言えば内通者の件もそうだ」

疑問に思うことは、ゲオルクのことだけではない。


「サリエラは否定していたけど…あんなタイミングでシャーラレイが殺されると、やっぱりね…」

アマユキも納得できていないようだ。


だが、サリエラの証言に嘘はないように思う。考えられることとしては、ゲオルクの件で得した分をここで低減しようとした…ということだ。俺達を疑心暗鬼にすることで、バランスを取ろうとしたのだろうか?


「でも、言いにくいことなんだけど…シャーラレイさんが殺害されたことで事件が解決に向けて動き出したというか…」

フェリシアさんの言わんとしていることはよく分かる。確かにシャーラレイの死によってこの事件は大きく動いたのだ。そこまで含めて考えると、それはただの偶然のように思えてくる…。


考えれば考えるほど、この事件には謎が多いことを思い知らされてしまう。それはあの女が何を考えているのかが分からないことに起因している。次に会う時にはきっちりと聞き出してやるからな…首を洗って待ってろよ。

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