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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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導き出された結論

「ティアリスもそう思うでし!」

だったらそう答えてくれよ…だが、同じ考えであれば話は早い。


「あの女はサリエラ達に繋がる情報をあちこちに残していた。まずはソルタスの殺害だ」

そもそもソルタスを殺す必要などなかった。にも拘らず、殺すように仕向けた。その意図は明らかだ。


「ただ殺すのではなく、わざわざ毒グモを使ったのがポイントでしね」

「そうだ。あえてそういう殺し方をすることで、アインラスクの魔法戦士に事件を印象付けたんだ」

実際にゲオルクはこの事件のことを覚えていた。


俺達はライラリッジ・コンサートホールの屋根の上で寛ぎながら話し合った。普段はこんな所でのんびりしないから、新鮮だね。


「そして、同じように毒グモを使ってファゼルを殺すことで、二つの事件を関連付けた」

「わざわざファゼルに警告して、私達を引くに引けないようにしたのも上手なやり方でしね」

敵ながらあっぱれですな。


「警告はシャーラレイにもしていた。そうじゃなければあの親子を見つけることは難しかっただろうな…」

浴場を専門に回る売り子のアリューシャと、あちこちを巡回していたゲオルク。出会う可能性はあっても接点はない。


「その後、追い詰められたサリエラはシャーラレイを殺したでし」

「そうだな…でも、そのおかげで俺達はお守りを見つけることができた。そして、最終的にヤツらのアジトになった森の中の邸宅を見つけ、急襲した」

それがこの事件の大まかな流れだ。


そこまで話したところで、俺は立ち上がった。せっかく白の部屋のライラリッジにいるのだ。少し散歩してみよう。もちろん、普段は行かないような所にね。まずはエルザスレーン城だ。


「こうしてみると、あの女の残したヒントが役に立ちまくりでしね」

俺達はあの女の手のひらで踊らされていたって訳だ。不愉快な話だな。


「逆にあの女が余計なことをしなければ、サリエラはエステルマギの埋蔵金にたどり着いていたと思う。ソルタスを殺すことなくお守りだけを奪えば、事件にはならなかったかもしれない。お守りはサリエラも持っているから、偽物を作ることもできただろうしな…」

サリエラ…いや、ツザナなら、そういう策を講じるはずだ。


「盗まれたことに気付かれたとしても、ソルタスしか開け方を知らない金庫からお守りを盗まれた事件なんて、迷宮入りで間違いないでし」

ティアリスはエルザスレーン城のバルコニーの手摺に腰を掛け、足をプラプラさせながら言った。そこは座る所じゃないですよ、ティアリスさん。


「そうなると自分で探すしかないが…サリエラのもとにたどり着くのは不可能に近い」

「手がかりがないでしからねぇ…」

誰がどう見たって打つ手なしだ。


「ソルタスが殺されなければ、ファゼルもシャーラレイもあの女から警告されることはなかった。そうなるとツザナがファゼルからお守りを盗むことも、難しくはなかったはずだ」

「スリの名人は伊達じゃないでし!」

まったくだ。


バルコニーを後にした俺達は、エルザスレーン城の中に入った。そこは写実画集でしか見たことはないが、ユリーシャはきっちりと再現してくれている。


「シャーラレイの持っていたお守りについては一筋縄ではいかないだろうが…病弱なシャーラレイはそれほど長くはなかったんじゃないかな。その後は俺達の代わりに、サリエラ達がアリューシャを手伝うことになったはずだ。俺達がお守りを見つけたのは偶然だが、アイツらの中には盗みのプロがいるからな…最終的には御神体に隠されたお守りを見つけ出しただろう」

これですべてのお守りが揃うことになる。


「御札に隠されていた魔法を発動させ、地図を手に入れること。それから洞窟の中の隠された入口を見つけ出すこと。どちらもアルクニクス商会の支援があれば何とかなりそうでしね…」

埋蔵金がサリエラ達のものになっていても、おかしくなかったのだ。


「もっともそこにエステルマギの埋蔵金なんてなかった訳だがな。そのことはあの女なら…キアラマリアなら分かっていたはずだ。だからこそ、この事件はあの女が俺達を試すために起こしたと考えることができる」

見事な彫刻が施された柱を眺めながら、俺達はそれぞれが思い至った結論が間違いないのではないか…と改めて思った。だが、それでも分からないことがある。


「何のためにそんなことをしたのでしょうねぇ…」

そこなんだよな。ティアリスも困惑しているが、それはあの女にとってどんな意味を持つのだろう?


「そこは分からんけどな。あの女がヤバいってことはよく分かったぜ…それがファゼルの殺害事件だ」

柱の中には柱像もある。その内の一つ、美しい女性の体のラインを指でなぞりながら、俺は話を続けた。


「そもそも今回のアインラスク視察は日帰りの予定だった。訳あって一泊することになったから、次の日の予定は当然白紙だ。俺達がペスカード市場に行くことは誰も知らなかったはず…だが、あの女はそれを知っていた。その上で事件を起こした。そうじゃなければ…結論が間違っていることになる」

サリエラはあの女に恐れを感じているようだった。今ならそれがよく分かる。


「偶然、事件に巻き込まれたと思いたかったでしねぇ…」

まったくだ。一体どうやって知ったんだ?


「自分達で決めたこと、人の意思に気付かれぬまま介在できるのだとしたら…これほど恐ろしいことはないぜ」

それでも俺達がやることは変わらない。


「得体の知れないヤツだということは間違いないが、それでも私達があの女を追わなくてはならないことに変わりはない」

ここで裏ティアリスさんの登場だ。


「分かってるさ…」

そんなこと、わざわざ裏ティアリスの方で不敵な笑みを浮かべながら言われなくてもな。赤い髪の女の探索はレガルディアの魔法戦士なら誰もが命じられる任務だ。だが、そんなことは関係ない。


あの女は3人の尊い命を奪ったのだ。しかも自らは手を下すことなく、サリエラを陥れるという形で。誰にとっても不幸な結末だった…アイツは許せない。義憤に駆られて行動を起こすなんて、柄じゃないとは思うんだけどな…それでも許せないものは許せないんだ。今、どこで何をしているのかは知らないけどな…お前の正体を暴き、ギャフンと言わせてやるぜ!

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