表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

118/359

生中の生

昨日のうちにカレンが仲買人に話を付けていたようで、ワカメはすんなりと買うことができた。


「これは間違いなく上物ですよ!ザカリヤさんも太鼓判を押すはずです」

フェリシアさんは料理上手だから目利きも確かだと思うのだが、ザカリヤ云々の話が出てくるとどうも胡散臭くなってしまう。でも、仲買人のおっさんも最高級のワカメと認めているからな…それなら間違いないだろう。


2mをゆうに超える大きさに育っているにも関わらず、葉のほとんどが食害に遭っていない。なるほど…最高級のワカメは伊達じゃないな!こんなワカメを用意してもらえるとはね…カレンの交渉の仕方がよく分かるぜ。


それにしても…俺はしげしげと褐色のワカメを見てしまった。ワカメってこんな色をしているんだな。緑色のワカメしか知らない身としては驚きである。


「卵はあるから…あとはホンビノス貝だな」

何を作ろうとしているんだろう?気にはなるが、敢えて聞かないでおこう。ここはカレンに任せた。


みんなでぞろぞろとペスカード市場を移動して、次のお店でこれまた肉厚で立派なホンビノス貝をお買い上げである。貝だけにね。我ながら顔がにやけてしまう…平和ですな。


「何か…面白いことでもありましたか?」

「何でもないよ」

まさかユリーシャに見られているとは思わなかったぜ…ちょっと焦るね。


「どうせしょうもないことでも考えていたんでしょ?」

「そうに違いないでし!」

「うるさい…」

アマユキもティアリスも、図星を指すんじゃねえよ。


和やかムードの買い物を終えて民家に戻ると、いよいよ料理である。料理はあまり得意ではないので、俺はリビングから様子を窺うことにしよう。俺以外にはユリーシャとアマユキ、それからティアリスの3人が様子見組だ。


と言っても、この3人が料理下手という訳ではない。カレンとフェリシアさんが上手なので、必然的にそうなってしまうのだ。もちろん、ミリッサも上手い。こちらは仕事柄、当たり前なんだけど。


キッチン3人組はカレンの指示のもと、てきぱきと作業をしている。しばらくその作業を見守っていたユリーシャが、キッチンへ入っていき、生のワカメを一切れ貰ってきた。


「生ワカメの試食はどうですか?」

ユリーシャが小さなお皿に上品に載せられたワカメを差し出してきた。


「いいのか?」

どう見ても俺の分しかない。何だか悪いような気がするな…。


「もちろんです」

他ならぬユリーシャがいいと言っているのだ。アマユキもティアリスも口を挟まない。2人とも奇妙に無表情なように感じるが、気のせいだろう。


「じゃあ、ありがたくいただくよ」

顔がにやけそうになりながら、俺はワカメをいただくことにした。


正真正銘の生ワカメ初体験だ。シャキシャキとした食感は、このワカメが採れたて新鮮であることを物語っている。そして、その味は…あ、じは…!か、海藻ならではの風味が強いことは間違いないのだが…な、何だこれは!苦い!いや違う…エグい?とにかく、食えたもんじゃねえ!


「だ、大丈夫…ですか?」

ユリーシャは思いっきりいたずらっ子な笑顔だ。嵌めやがったな!


「ま、まさか…本当に食べるとは、思わなかったわ…ワ、ワカメは…茹でないと、美味しくないのよ」

「ショ、ショウちゃんは…面白すぎでし!」

アマユキとティアリスも、ケラケラと笑っていやがる。


今なら分かるぜ…コイツらが奇妙に無表情だったのは、笑いそうになるのを堪えていたからだ。まったく…なんちゅうヤツらだ。まあ、今回は生中の生の味を堪能できたと思うことにしよう。知らないってことは怖いことだね。


そんな教訓を得たところで、コン、コン…という真鍮のドアノッカーを控えめに鳴らす音が響いた。この音はゲオルクに似ているが、少し違う。来客の予定は1人しかないから、間違いなくアリューシャだ。


「いいわ、私が出るから」

いつもなら下っ端の俺が出るところだが、ここはアマユキが気を使ってくれた。思っていた通り、やって来たのはアリューシャだった。


「お邪魔します…」

ここへ来るのは久しぶりだからか、アリューシャは少し緊張しているようだ。今日はいつもよりおシャレをしてきている。なかなか可愛いね。


女子4人に配慮して、俺は既に少し離れた所にある椅子に移動済み。さっきまで俺が座っていた席にアリューシャが座ると、早速お喋りに花が咲いた。


顔ぶれが少し変わっただけなのに、話す内容はまったく変わってくる。やはり美容関係の話が多いようだ。間違ってもワカメを生で食べてみた話などしないのだ。これはこれで面白いのだが。


今日はソープの話をしているな。ソープと言ってもお風呂に入ってエロエロなアレではない。石鹸のことである。


アリューシャがウチの3人娘にオススメしているのは、オーガニックな石鹸だ。水を一滴も使わずに職人さんが練り上げたローズマリーの石鹸に、お米と米麹、それから清水だけで作られた甘酒を使った石鹸、等々。一口にオーガニックな石鹸と言っても色々あるようだ。


どれもこれもお肌に優しそうな石鹸だが、その中でも特にアリューシャが推しているのが、アロエの葉肉とはちみつ酒のエキスで作った石鹸である。


もちもちですべすべの独特な洗い心地とさわやかな香りが売りなんだそうな。ちょっとした贅沢で心も体も癒されて幸せを感じられる。女の子には堪らない石鹸だね。


オーガニックな石鹸は手間暇かけて作られているので、やはりそれなりのお値段はする。俺がいつも使っている安物とは大違いだ。でも、1ヶ月ぐらいは持つからな…そもそもコイツらは高給取りなんだから、高い石鹸をじゃんじゃん使うべきだ。カネは天下の回りものってね。


話の輪に入れないぼっちな俺だが、やることはある。それがカレン達のお手並み拝見だ。料理は不得手だからな…この機会に勉強させてもらうことにしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ