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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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4人目の子孫

翌日、しばらくお世話になったこの民家に別れを告げ、俺達はチーフズクレア砦のすぐ近くにある民家に移った。4階建ての建物なので、ミリッサを入れて7人になっても十分な広さがある。個人的にはスペアルームで寝袋生活もそんなに悪くはないと思っているけど、こっちの方が何かと便利だからね。


ヤツらを全員捕らえることには成功したものの、この事件には多くの謎がある。それを明らかにするために、俺とアマユキはウルマリスの取調べだ。


ユリーシャとカレンには、エステルマギの4つのお守りを調べてもらう。


ティアリスとフェリシアさん、それからクランドールの指揮するアインラスクの魔法戦士は、昨日の邸宅とそこに繋がっていると思われる洋館の調査に出向いている。手分けして事に当たれば謎解きも捗るってヤツだ。


取調室に入ると、そこにはウルマリスと見張り役の魔法戦士が待っていた。昨晩、俺がちょっとした手違いでボッコボコにしてしまったウルマリスは、アインラスクの魔法戦士が治療したのだろう…怪我一つないようだ。


あとでカレンに指摘されたが、確かにやりすぎだったと思う。俺はそんなに正義感の強い人間だったのだろうか?そんなことはない。力を手に入れたから…強き者になったから、弱い人を助けなくてはならないと考えるようになったのだろうか?それも違う…人間そんなに簡単に考え方が変わるもんじゃない。


では、なぜウルマリスにあんなにも不快感を抱いたんだ?激しい怒りを覚えたんだ?…分からない。今は…考えなくてもいいだろう。事件の真相を明らかにすべきだ。


「お前には聞きたいことがたくさんある。できれば、素直に答えて欲しいところだな」

拷問とかはしたくないんでね。


「何が知りたい?俺の知っていることなら答えてやる」

ウルマリスは素直に応じた。これなら面倒なことにならなくて済みそうだ。


「お前の名前は?」

「ウルマリス」

単刀直入に聞いた俺に対して、ウルマリスは当たり前だと言わんばかりにそう答えた。


「本当の名前だよ」

「…よく、気が付いたな」

これにはウルマリスも、そしてアマユキも驚いている。俺に言わせると、そんなに驚くようなことではないんだけどね。


「ずっとお前と剣を交えていて気が付いた。似ていたからな…レガルディアの剣術と。お前、ザカリヤ・エステルマギの子孫だろ?」

「そうだ」

俺の見立ては間違っていなかったようで、小さく笑ってウルマリスは答えた。


「俺の本当の名前はサリエラ・エステルマギだ」

やはりコイツが4人目の子孫だったのか…それには何となく納得できるものがあった。


殺害されたルアンザラーン商連合の前当主ソルタスのことを悪く言うものはいなかった。大工の棟梁ファゼルは温厚な人柄で、近所付き合いも良かった。シャーラレイの前夜の祈りに参列していた多くの人、誰からも好かれていた売り子のアリューシャ。


エステルマギの子孫は人から好かれるタイプが多いのだ。そして、ウルマリス…サリエラ・エステルマギも部下からの忠誠心が厚いように見えた。それは当然のことだったのかもしれない。


「どうして盗賊団の首領なんかやってたの?」

聞きたいことがたくさんある中で、アマユキはまずそれを聞いた。


「昔はミスワキで魔法戦士をやっていた。その時に下手を打っちまってな…それで首になった」

この男が首になるようなミスをするとは俄には信じられないが…他ならぬ本人の弁だ。間違いないのだろう。


「どこか…別の地で魔法戦士になる道もあっただろう」

「俺もそう思っていたさ…だが、どこも雇ってくれなかった。誰かに手を回されていたのかもしれないな」

何者かがサリエラを嵌めた可能性もあるということか…。


「それで盗賊団の首領になった…その時にツザナと知り合ったの?」

「いや、ツザナとは幼い頃から縁がある。アイツは父に借りがあると言っていたな」

アマユキの見立てをサリエラは否定した。サリエラの父親は何者だったのか…そこも気になるところだ。


「アルカザーマでは俺は正しく評価されそうにない…それで俺は中央平原に行くことにした。その頃から俺は、サリエラではなくウルマリスと名乗るようになった。別についてきて欲しかった訳ではないが、ツザナは勝手についてきた。今になって考えると…ありがたかったけどな」

ツザナから見ると、サリエラは剣の腕は立つが世間知らずに見えたのかもしれない。


「中央平原では何をしていたんだ?」

そこで魔法戦士をやっていた訳じゃあないんだろ?


「最初は魔法戦士になるつもりだった。だが、汚職がひどくてな…誰を守るのか?それがカネで決まるような所だった」

これは…開いた口が塞がらないね。


「結局、俺はキャラバンの護衛をすることになった。護衛をして1年が経った頃に、このままじゃあ駄目だと思うようになった。俺達はいつも盗賊に襲われる側だったからな…逆にヤツらを襲う必要がある、そう考えたんだ」

盗賊退治を生業にする、か…悪くはないアイデアだ。


「そこで役に立ったのがツザナだった。ヤツは昔取った杵柄と言っていたが…盗賊のアジトを見つけるのが上手かった。俺は仲間と一緒にキャラバンの護衛と盗賊の掃討を仕事にしていたが、いつしか掃討が主になっていた」

実入りが相当違っていたのだろう。


「盗賊が奪っていたものはどうしたの?」

「みんなで山分けだ」

アマユキの疑問にサリエラは小さく笑いながら答えた。それには納得しかない。


「ここまでのお前の行動はまだ擁護できる…どこで道を踏み外した?」

サリエラは少し目を瞑り、それから天井を見上げた。


「俺達のもとへキアラマリアがやってきた…それが終わりの始まりだった」

ここからが本題だな。

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