開く戦端
ここだ…ここしかねぇ!俺の体は自然に動き、気が付いた時にはアリューシャを保護する結界の前に立っていた。
「何もんだ?」
ただ一人、この事態にまったく動じることのなかったウルマリスが誰何の声を上げた。もちろん、名乗ってやらない。
「揃いやがったな、悪党ども!どうやら年貢の納め時だぜ…」
一喝してやったことで、弾かれたようにヤツらが一斉に魔法剣を抜いた。やる気満々だな。なら仕方ない…やってやるさ!
「たかが魔法戦士が一匹、たたっ斬れ!」
ツザナの号令の下、ヤツらが一斉に襲い掛かってこようとした。だが、その足がピタッと止まってしまう。
いつの間にか俺の右隣にカレンが、左にはティアリスが立っていたからだ。頼りになるとはこのことだな。すでに俺達三人の手には、それぞれの得物が握られている。
「静かにしろぃ!埃が立つんだよぉ…」
天知る、地知る…俺が知るってヤツだぜ!
「山吹色に目が眩み、人を殺める毒グモども…悪事に走るテメェらの、行きつく先は…獄門台よ!」
痛いところをズバリと突かれ、一味が気圧されてしまった。
「…やれっ!」
だが、これで終わりになる訳がない。ウルマリスの一言で、金縛りが解けたようにヤツらが襲い掛かってきた。でも、その動きは奇妙に遅く見える。
「やっちまえーっ!」
誰かの叫び声が響くが、それも滑稽に聞こえる。それに戸惑いながらも、集中しろっ!と自分に言い聞かせる。余裕ぶっこいてたら、足をすくわれるぞ。俺は抜き放った魔剣で、真っ先に襲い掛かってきたヤツの斬撃を受け止めた。
その瞬間、分かったことがあった。少なくとも、俺とコイツの間には大きな力の差があるのだ。だからと言って、油断はしないけどな。
最初の一撃は普通に受け止めてやったが、次の一撃はそうもいかない。俺は受け止めると同時に流水の動方・急流を使ってグッと押し込み、相手の態勢を大きく崩してやった。
これでお仕舞いだ!心中で叫びながら、俺は崩れた相手を薙ぎ払うような斬撃を繰り出す。その時、あることに気が付いた。我ながら準備不足だな…苦笑しながら、急いで魔剣に新しい魔法を創ってもらう。
間に合うか?こんなタイミングで新しい魔法を創らされる魔剣も堪ったもんではないだろうが、それでも魔剣はきっちりと応えてくれた。
『新たな術式魔法の創造が完了しました』
というメッセージと共に脳内に視覚的に魔法の概要が見えてくるが、それはパスしてすぐさま発動!
バチッ!
俺の斬撃を受けた男の体から何かが弾けるような音が上がり、そのまま倒れこんだ。安心せい…峰打ちじゃ。
この峰打ちという技はそんなに安心安全な技という訳でもないのだが、コイツの着ているPMDはそこそこの性能があるようなので大丈夫だろう。むしろ戦列に復帰してくると厄介なんでね…スタンガンならぬスタン剣でしばらく痺れていてもらうぜ。
このスタン剣、正式には痺れる電撃の一撃という名前になっている…さすがに苦笑してしまうね。
そして、この最初の1人を倒して分かったことがある。コイツらはゴロツキと言ってもそれなりに腕が立つようだ。俺達が時々お世話になっているライラリッジ北部の裏通りにいるようなチンピラとは段違いだ。見習い魔法戦士といい勝負ができるだろう。
そうなってくると、ユリーシャがこの件に首を突っ込んだのは賢明な判断だったのかもしれない…こう言ってはなんだが、アインラスクの魔法戦士の実力は、ライラリッジのそれと比べると一枚落ちるからな。
もし、急襲したのが俺達ではなく、ゲオルクとその部下達だったらどうなっていただろう?厳しい結果になっていたかもしれない…。
おっと、集中だ…集中。俺とカレンがそれぞれ1人ずつ倒している間に、ティアリスは2人も倒していやがる。さすがはロリロリ先輩、一位武官は伊達じゃないね。
さらに俺達とは離れた所にいるヤツが知らない間にぶっ倒れている。傍らに矢が落ちているのを見るに、アマユキの仕業だろう。こちらの一位武官も伊達じゃないね。
別に数を競っている訳ではないが、あんまり少ないと後で文句を言われそうだ。相手の力量が分かったところで、ここからは攻めていくぜ。
次のゴロツキはさっきのヤツよりゴリマッチョ。コイツの攻撃は受け止めるのではなく、受け流して電撃の一撃で終わりだ。力だけで俺に勝とうなんぞ、浅はかにもほどがある。これで2人だ。
「だあああぁぁぁっ!」
鋭い気合いの声と共に斬りかかってきた野郎の攻撃を急流の一撃で弾き返し、踏み込んで電撃の一撃を放とうと…したところで、俺はそれをすぐさまキャンセルした。
バッ!
さらにその場から飛びしさる。その直後に、黒雷の表面を魔法剣の切っ先が滑る感覚が走った。ゾッとするな。踏み込んでいたら、ただでは済まなかっただろう。
俺が斬られたように見えたのか、ユリーシャが小さな悲鳴を上げたのが聞こえた。心配性だなぁ…もう少し信用してほしいものだ。とは言え、左手を軽く上げて大丈夫ということは伝えておこう。
俺の踏み込みに合わせて鋭い斬撃を放った男はウルマリス。腕が立つことは分かっていたが、対峙するとそのヤバさを一層感じる。コイツはさっきまでのヤツらのようにはいかないぞ…。




