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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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見つけたぜ

「あの洋館だ…あそこに入っていった」

そこは童話にでてくるような洋館で、立派な庭があり大きな樹木も植えられている。敷地に入るようなことはしないが、通りからじっくりと眺めても気付かれないだろう。でも、何か奇妙な違和感を感じるな…。


「変ね…」

人間レーダーの持ち主、アマユキも異変を感じ取っているようだ。


「何がだ?」

もったいぶらずに教えてくれよ。


「気配がしないわ…あそこに誰かがいるとは思えない」

気配…そう、それだ!ここは静かすぎる…ヤツらの拠点とは思えない。だが、確かにヤツらはここに入っていった。そして、出て行ってもいない。ずっと不可視の錫杖で見ていたんだ。それは間違いない。


では、この状況をどう説明する?分からない…確かなことは、何かがおかしいってことだ。どうなっていやがる?その時、ユリーシャがとんでもないことを指摘した。


「アリューシャが移動しています!」

おそらくユリーシャはあの魔法具に何らかの仕掛けをしていたのだろう…だから、分かるんだ。だが、移動だと…どこに?ヤツらの姿はどこにもないぞ?


「ショウちゃんは間抜けでしねぇ…姿が見えないのなら地下を移動しているのでしよ」

な、なるほど…どうりで姿が見えないはずだぜ。こうなってくると不可視の錫杖で追うことはできない。


「ユリーシャ、案内できるか?」

ここからはお前だけが頼りだ。ユリーシャは手にしていた杖をそっと空へ放った。放たれた杖は不可視の錫杖のように飛び始める。


「杖が導いてくれます。ついて行きましょう」

行く先はユリーシャの杖にしか分からないが、すぐそばに不可視の錫杖を飛ばすことで、周囲の状況はこれまでと同様によく分かる。おそらく地下に通路があり、そこを通って俺達を出し抜いたつもりなんだろう。だが、その手は桑名の焼き蛤だぜ。


ユリーシャの杖と不可視の錫杖は、ここよりもさらに郊外へと飛んでいき、城壁の外にまで飛び出してしまった。本来はちゃんと城門を通って外に出るものだ。だが、今回はやむを得ない…飛び越えて行こう。


バレたら面倒なことになるかもしれないが、幸いなことに櫓から離れていたのでバレずに済みそうだ。それほど広くはない街道を通り、アインラスクから少し離れたところで、ユリーシャの杖と不可視の錫杖は静止した。


「動きが止まりました…」

今度こそ、そこがヤツらの本拠地だろう。今やそこは案内されなくても不可視の錫杖で分かる。


「ユリーシャ、杖を戻せ。もう大丈夫だ」

あの杖は目視できるものだ。ヤツらにバレたら目も当てられない。


「あの森の中に邸宅がある。そこにヤツらがいるぞ」

その邸宅は先ほど見た洋館よりは小さい。逆に庭は広い。その庭に明かりの魔法をつけ、そこに…18人の男がいるみたいだ。そのうち6人はあの偽魔法戦士。もちろん、アリューシャもいる。傍から見ても怯えているのが分かる。だから、やめとけと言ったのに。


もちろん、俺達はアリューシャを見捨てるつもりはない。だが、あんな若いうちから割り切ることもなくこんな事件に関わっちまうと、後の人生に影響があるかもしれないんだぞ…。


「それで、どうする?」

不可視の錫杖で見えたことはすべて伝えた。百聞は一見に如かずとは言うものの、ちゃんと伝わっているようだ。


「これを被れば近付く際に見つかる可能性も低くなるだろう」

そう言いながらカレンが取り出したのはフェイスマスク付防寒キャップ。そういえば試しに使ってみて評価するって話になってたな。この状況はおあつらえ向きだ。みんながキャップを被り、フェイスマスクをすると…俺達も間違いなく怪しげな魔法戦士である。


「少しだけ風を吹かせますね…」

ユリーシャが手元に戻した杖を振ると、風が吹き、森がざわざわと騒めき始めた。これで近付く際の音も上手く誤魔化せる…さあ、行こうぜ!意気込んで森に入ろうとするが、先頭を切るはずのアマユキは動こうとしない。どうした?


「森が騒めけば私達が近付く音は聞こえづらくなる…でも、逆に警戒されるものなのよ」

確かにそうだが…じゃあ、なんで風を吹かせたんだ?


「でも、何も起きなければ、騒めいていることなんか誰も気にしなくなるでし」

慣れるってことか…誰しもずっと気を張り続けることなどできないものだ。


「油断したところで…わ、私の…アリューシャちゃんを…」

うるせえよ、変態。


急襲のタイミングはアマユキに任せるとして…盗賊団の連中はこの状況をどう見ているのだろうか?再び不可視の錫杖で見える光景に注目すると、ざわざわする森に、ヤツらは不審げに辺りを見回していた。


やがてヤツらの視線が一人の男に集まる。よく鍛えられた体、隙のない立ち方…おそらくコイツがウルマリスだろう。確かに剣の腕も立ちそうだ。


「見てこい」

ウルマリスの一言でほとんどの部下が散会した。残っているのはウルマリスの隣にいる男だけだ。コイツは知ってるぜ…ファゼルが倒れた時に真っ先に駆け付けた老人、ツザナだ。それ以外のヤツらは散らばり、何人かはこっちにも来ている。


「ヤツらは油断してないぞ…こっちに来ている」

俺が警戒を促すよりも早く、アマユキが動いていた。さすがは人間レーダーの持ち主、頼りになるね。


「こっちよ」

アマユキは森の中へ入っていった。そこは道らしきものがあるものの、草木が生い茂っていて人が通った形跡は乏しい。こんな獣道、よく見つけたな。全員が獣道に入ったところでアマユキは身を低くした。


辺りを見回すと、まるで俺達を隠すように草木が密集していた。こんなにも都合よく草木が生える訳がない。フェリシアさんの仕業だろう…やはりただの変態ではないな!


俺達が潜む獣道は、もはや獣道とも言えないほどに草木がこんもり茂っている。そんな所に俺達が潜んでいるとは誰も思わなかった。だから、ここを調べるヤツもいなかった。


「異常はありやせんでした…」

散らばって邸宅の周りの森を調べていた連中が、少しずつ戻ってきた。みんな異常がなかったと報告している。やがて全員が戻ってきた。


「それじゃあ、行きましょうか」

アマユキに促され、俺達は獣道から出た。今度はこっちの番だ。首を洗って待ってろよ!

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