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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第2章 エステルマギの埋蔵金

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我慢比べ

二人は共に王国郵便の配達員の格好をしている。もちろん、こんな所でサボっている訳ではない。変装をした魔法戦士である。おそらく、この二人がアリューシャのもとへ魔法具を届けてくれたのだろう。


「ミリッサちゃん、彼らで間違いないかい?」

ミリッサに話しかけたヤツは、桜色のサラサラヘアが印象的な優男だ。誰かさんに似ているね…。


「はい、間違いありません」

ミリッサは間違えてこの家にやって来たようなおのぼりさん軍団が、何者なのかをきっちりと把握している。


「間違いないのであれば任務は完了だ。ランドルフ…帰るぞ」

もう一人の、ややもすると冷たい印象を受ける男が、ランドルフに有無を言わさぬ口調で促した。


「分かってるよ…ミリッサちゃん、帰ったらデートしようね?」

このランドルフってヤツがリアルナさんの弟っぽいな…二人は似ているし、この男はいかにも女癖が悪そうだ。


「考えておきます」

ミリッサはまったく前向きではなさそうに返事をした。


「詳しいことは聞いていないが…健闘を祈る」

お目付け役の男は俺達を激励し、ランドルフを半ば引きずるようにして出ていった。


もちろん、二人とも出ていく際には俺達にきっちりと一礼をする。誰がユリーシャなのかは分かっていないだろうが、ここにユリーシャがいるのは間違いないからな。


「あの男は相変わらずだな」

カレンが呆れたようにランドルフを評した。たらしな先輩も負けてはいないと思うが…。


「ミリッサに手を出したら八つ裂きでし!」

ロリロリ先輩も鼻息が荒い。


「ダメージヘアにしてやらないとね!」

アマユキの嫌がらせは、地味だが効果がありそうだ。


「駄目ですよ、そんなことをしたら。ちゃんとハエトリソウの養分にして役に立ってもらいましょう~」

やべえヤツがやべえ主張をしているが、やべえと思っているのが少数派なのがやべえよな。


だが、アレを擁護するとこっちがとんでもない目に遭いそうだ。よって擁護はしてやれん。ランドルフ…夜道を歩く時には気をつけるんだぞ。


それはともかく、不可視の錫杖でアリューシャの家を確認しておく必要はあるだろう。ヤツらがすぐに動くとは思えないが、裏をかいてくる可能性だってあるからな。さて、どうなっているか…。


家にはすでに明かりがついている。魔剣もユリーシャが作った魔法具を、アリューシャが着ていることを確認した。ここまでは問題ないようだ。ホッと一安心だね…。


「今のところ、問題はないようですね…」

どうやらユリーシャも同じ光景を見ているようだ。


「ヤツらがアリューシャの家の守り方が変化したのを知ったのは今日だ。動いてくるとしたら明日以降だろうな…」

もちろん、裏をかいて今夜という可能性もなくはない。それならそれで問題はない。こちらの準備はできている。


あの家に、今回の事件の重要人物がたった一人で暮らしていて、そこには何の防御の手も施されていない。見ようによっては不安になるかもしれないが、これはヤツらをおびき出す手立てだ。


そう…アリューシャはヤツらの手で連れ去られなければならない。俺達はそれを追い、ヤツらの拠点を急襲する。


かつて盗賊団がアルカザーマで好き勝手やっていた時、当地の魔法戦士による急襲は失敗に終わった。だから、今回は俺達が討つ…必ずな。それだけがアリューシャの安全を保障するたった一つの方法なんだ。


ずっと監視していたものの、今夜の襲撃はなかった。おそらく変化があったことに気が付いて、対応を練っているところだろう。


この新しい拠点は平屋なので、前のように一人に一部屋の寝室がある訳ではない。もちろん、一番下っ端である俺の部屋は寝室ではなく、小さな窓が一つあるだけのスペアルームだ。当然、寝袋である。


ユリーシャは俺が体調を崩すのではないかと心配していたが、そんなことはない。むしろ、こういう部屋がいい。庶民の俺にはピッタリだぜ。寝袋の中からもぞもぞと這い出すと、新しい一日の始まりだ。


ここでの生活で大事なことは、コンディションの維持だ。自分自身を常に最良な状態に保っておかなければ、ヤツらが動いたときに対応できない。それはあってはならないことだ。


食事は規則正しく取らなければならない。メイドのミリッサが中心となり、カレンやフェリシアさんがサポートして作られる料理の数々は、そんじょそこらのレストランにも引けを取らない美味しさだ。リアルナさんがミリッサを寄越してくれたのは、間違いなく最適手だな。


それから、適度な運動も大事だ。これは前の拠点でもやっていたように、自重トレーニングで済ませる。あとは魔剣を手にして、できる範囲で素振りをしておく。びゅんびゅん振り回す必要はない。これは手に魔剣の重さを、目に魔剣の刃渡りを、忘れさせないようにするためだ。


少しは外出もするが、必要最低限で済ませなければならない。ミリッサと一緒に食材の買い出しに行くくらいだな…もちろん、変装は必須である。


そして、当たり前のことだが、夜更かしはしない。規則正しい生活を送りながら、俺達はその日が来るまでここで静かに暮らす…我慢比べなら負けはしない。


動きがあったのは、俺達がここで暮らすようになって1週間が過ぎた夜のことだった。

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