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【週刊】目が覚めるとそこは…異世界だった!【第6章、連載中。長編にも拘わらず読んでくれてありがとう】】  作者: 鷹茄子おうぎ
第1章 魔剣の使い手

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ラナンエルシェルでの会食

『ラナンエルシェル』は1階の奥まった場所にあった。あのメタルゴーレムが立っている手前なので、あまり良い立地とは言えないな。『たけのこ日和』が7時から23時まで営業して繁盛しているのに対して、『ラナンエルシェル』は18時から23時まで。もちろん、そんなに繁盛はしていない。


大丈夫なのか?と心配になるが、ここは完全予約制で完全個室制。その隠れ家的な雰囲気もあいまって、なかなか人気らしい。メニューはおまかせのコース料理のみ。


どう見たって高級レストランで、マナーに不安がある俺は及び腰になる。カレンに相談すると、ユリーシャはあまり気にしないので大丈夫だそうな。ただし食べる速さはユリーシャに合わせるように、とのことだった。


間接照明で照らされた店内はシックで落ち着いているが、今の俺にその雰囲気を楽しむ余裕はない。案内された個室にいたユリーシャの隣にカレンが座り、俺はユリーシャの前に座った。


ユリーシャは緊張している俺を見てクスクスと笑っている。相変わらず可愛いなぁ…もう。でも、俺の身にもなってくれ。しばらくして前菜のアルカ産生ハムと夏野菜を使った煮込み料理、半熟卵添えが運ばれてきた。


料理名が長いですね。お皿も料理も優雅です。ユリーシャもカレンも綺麗で品のある食べ方をしている。俺だけぎこちなくて、この場の雰囲気にそぐわない。美味しいのは確かなんだけど…しんどいな。続けて二品目。二品目は手打ちフェットチーネ、牛ほほ肉のラグーソースだ。


フェットチーネってのは平たくて薄いパスタのようだ。このラグーソースも具が大きめでパスタによく合っている。この麺を使ってラーメンを作るのも面白そうだな。そんなことを考えているうちに、三品目の仔牛フィレ肉とフレッシュフォアグラのソテー、トリュフソース添えが運ばれてきた。


仔牛フィレ肉は柔らかくてジューシーで…絶品だな。初体験のフォアグラは濃厚で口の中でとろけました。言葉になりませんね。このフィレ肉がメインだったようで、この後はデザートのチョコレートケーキとアイスクリームだ。


ほろ苦いチョコレートケーキと、冷たくて甘いアイスクリームの組合せは最高ですね。ユリーシャもカレンもあまり喋らないので、食事は淡々と進んでいく。最後に紅茶で長かった夕食もやっと終わりだ。ホッとするね…。穏やかな空気が流れる中、紅茶の味と香りを楽しみながらユリーシャがおもむろに口を開いた。


「もうお気付きかもしれませんが、魔剣には欠点がありまして…」

まだお気付きではないですが、気になる話ではありますね。


思わず身を乗り出して聞いてしまうが、ユリーシャの話はあまりにも専門的過ぎて、何を言っているのかさっぱり分からない。うすうす気付いていたんだが、この娘に魔法の話をさせるのは悪手だな…。


魔剣を持ってきておけばよかった…あれがあれば、分かりやすく解説してもらえたかもしれない。今となっては後の祭りだが。


「それを解決するためにショウのためのPMDを…」

どうやら解決する手立てはあるようだ。さすがですね。とても楽しそうに話しをするユリーシャを見ていると、今さら話の腰を折るなんて、できる訳がない。なので、俺はにっこにこで頷いている。


「…というふうにしようと考えているのですが…よろしいですか?」

むっ?何やら同意を求められているようだ。少し不安げに俺を見るユリーシャ。ここまで来て「ゴメン。聞いてなかった。ていうか、何言ってんのか分からんかった」なんて言える訳もない。


「ああ、ユリーシャの言う通りでいいよ。よろしく頼む」

これしかないだろう。


「分かりました!がんばりますっ」

何か変なスイッチが入った気がしなくもないが…まあ、大丈夫だろう。ふと隣のカレンを見ると小さく震えている。どうも笑いを堪えているようだ。お前は気楽でいいよな。


「俺の方からも頼みがあるんだが…」

ユリーシャの話が一段落したところで、俺からの要望も聞いてもらうことにした。それはこのレガルディアの概要について勉強したいということだ。政治や経済、歴史など…とにかくレガルディアについて色々と知っておきたい。もちろん、最初は取り掛かりやすい易しい内容で。


「分かりました。明日の朝までには用意しておきます。他には何かありますか?」

「今のところはそれだけでいいよ」

それまでとは打って変わって、俺とユリーシャの話は噛み合っている。それはそれで面白いのか、カレンは微笑みを浮かべているが。


「分かりました。そ、それでですね、あの…」

なぜかテンパり始めたユリーシャ、いったいどうしたんだ?


「明日からも一緒に夕食を…」

しどろもどろになりながら、ユリーシャは明日以降の約束を取り付けようとする。そのお誘いを断ることなんて…できる訳ないだろう。また一緒に夕食を食べる約束をし、今日のところはお開きになった。


夕食…か。正直なところ、あまり気が乗らないのだが、ここで上手く生活していくには仕方がない。前向きに考えることにしよう。


それはそうと、ユリーシャは気になることを言っていたな。魔剣には欠点があるとか…魔剣に聞いてみるか。


『魔剣は非常に高機能な魔法具です。しかし、魔剣自体に蓄えられる魔力量はそれほど多くありません』

なるほど…。


『ユリーシャ様は莫大な魔力をお持ちなので、魔剣の魔力量が問題になることはありませんでした。しかし、ショウ様はほとんど魔力をお持ちではありません』

そ、そうなのか…。


『それを解決する為に、おそらく個人専用の魔法服、PMDに大量の魔力を蓄えられる仕組みを作るのでしょう』

よく分からんが、魔力の問題はなんとかなりそうだ。


『最終的なPMDの仕様は未定ですが、ショウ様の懸案を解決することは難しくありません』

おお、そうなのか!ここはユリーシャと魔剣を信じて安心して待つことにしよう。ところで、PMDってなに?


『PMDとは個人専用の魔法服です。体型と用途は個々人によって違うので、それぞれに合った魔法服を用意する必要があります。PMDは武器系の魔法具と違い、認証は必ずしも義務付けられてはいません』

ってことは鎧とかも?


『鎧もそれぞれに合ったものを用意する必要があります。それはPMAと呼ばれています』

なるほどね…勉強になります。


俺はベッドに横になり大きく息を吐いた。ぼんやりと天井を眺めながら今日という日を反芻する。色々なことがあった一日だったな。明日からどうなるかは分からんけど…頑張って生きていくしかないよな。右も左も分からん異世界だけど、置かれている状況は恵まれているんだ。何とかなるさ…。


こうして俺の異世界生活初日は無事に幕を閉じたのであった。

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