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【SIDE:リマ】ボーデン公爵家メイド・リマ

※今回はリマちゃん視点のお話です※


―――私の名前はリマ。


ボーデン公爵家に仕えるメイドのひとりである。年は17歳。

今回旦那さまが迎えられた奥方さまと同年代であるということで、先輩メイドのセレナと共に奥方さまの専属メイドとして旦那さまから指名されたのだ。指名されたからには頑張らなくっちゃね!


私は猫耳しっぽを持つ獣人族。チョコレートブラウンの髪をツインテールに結い、スカイブルーのぱっちりした瞳を持っている。


ヒト族の奥方さまとだけあって、獣人族の私をどう思うのだろう。とても不安だったのだが。


旦那さまからセレナと一緒に奥方さまに紹介された。

セレナは私よりも2~3歳年上のメイド。藍色の毛並みにセミロングヘアー。ウサ耳しっぽの獣人族。瞳は落ち着いたダークグリーン。落ち着いた風貌の美人でもある。同じ女性としてひそかに憧れていたりする。えへへっ。


―――そして私は奥方さまを見た瞬間、思わずキュンとしてしまった。


奥方さまはシナモンブラウンの髪にペリドット色の瞳を持つとてもかわいらしいヒト族のお嬢さん。私たちのことをどう思うか心配ではあったものの、奥方さまの腕の中には。


―――とってもかわいらしい黒い毛並みのわふたんぬいぐるみが抱かれていたのである。


黒い狼と言えば、ボーデン公爵家の象徴でもある黒狼シュヴァルツヴォルフである。奥方さまはその象徴たる黒狼シュヴァルツヴォルフを胸に抱いている。


何てキュートなのだろう。


ドキドキしながらセレナと共に奥方さまにお茶菓子をお出ししに行けば。


「ありがとう。リマ、セレナ」

獣人族の私たちを忌避するかな、と思ったのだが。奥方さまは私たちの名前を呼んでお礼を言ってくれたのだ。


このような主人も珍しい。そう感じつつ。


「あの、奥方さま」


「なぁに?」

嫌悪感を表情に浮かべるまでもなく、奥方さまは私を見る。


「その、かわいらしい子ですね」

私のその言葉に、奥方さまは腕の中に抱かれたわふたんぬいぐるみをみやり、なでなでと頭を撫でる。


「うん。わふ太って言うんだ」


「わふ太くん!とってもかわいいです!」


「でしょ?私のお守りなの」

そう言って微笑む奥さまはとてもかわいらしい。わふ太くんが一緒だからその2倍!ふふふっ、旦那さまったら、こんなかわいい奥方さまを迎えられるなんて。


ヒト族との縁談が持ち上がった時はどうなることかと思ったけれど。

私は奥方さまを迎えられ、そして専属メイドに任じられたことをとても嬉しく思った。


―――


晩餐に合わせて奥方さまを迎えに行くと、その腕の中には相変わらず大事そうにわふ太くんを抱いている。護衛に命じられたミシェルもそのわふ太くんに釘付け。今日はやけにメイド、執事、騎士たちも邸内に多いけど。やっぱりみんなそのわふ太くんにメロメロみたい。


ふふっ、わふ太くん。かわいいものね。みんな見に来たんだね~。


「奥方さま、こちらです」

さすがに騎士たちがこぞってダイニングルームに入るわけにはいかない。ミシェルから奥方さまとわふ太くんを任された。

ふふっ、ミシェルもすっかり奥方さまとわふ太くんにメロメロなんだ~。まっかせて!

私とセレナは他のメイドや給仕たちと旦那さまと奥方さまの晩餐の場に控える。


奥方さまはわふ太くんを隣の席に座らせ、そして奥方さまの正面に旦那さまが腰掛ける。

旦那さまもちらりとわふ太くんに目を向ける。うん、旦那さまもメロメロか~。

初日からわふ太くんはすっかり邸内のみんなのアイドルになったのだ。


『ロロナ嬢』


『ロロナでいいですよ。レオンさま』


『では、俺もレオンでいい。ロロナ』


『っ!そ、その、レオン?』

くぅっ!何この恥じらいの時間!まるで恋愛小説の一節みたい!


『その、それは?』

旦那さまはわふ太くんに目を向ける。うん、うん。気になりますよね~。

普段無口でクールな旦那さまもついつい気になっちゃうなんて、わふ太くんったら罪な子だねぇ~!


『あ、わふ太って言います』


『わふ太』


『はい。心細いのでこちらにも連れてきてしまいました』


『そうか』

旦那さまは無口だ。本来ならばここまでしゃべるのも珍しいほどに。わふ太くんのおかげで、旦那さまも奥方さまとのコミュニケーションをとることができて。


わふ太くんはやっぱり愛のキューピッドだねっ!


今夜は夫婦そろって寝られるというし。ちょっと楽しみっ!本来ならヒト族のお嬢さまだもの。嫌がると思いきや、普通に一緒に寝られるらしい。覗いたりしないけどね!中のことはわふ太くんに一任するのだ~!


私は上機嫌でセレナと一緒におふたりとわふ太くんの仲睦まじい夕食風景を楽しんだのであった。


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